とうとう夏休み!ですが、酷暑が厳しいです。
気象庁は「危険な暑さ」で日中の外出や運動を控えるよう呼び掛けています。
それなら夏の夜空を楽しむのはいかがでしょうか。
火星大接近、土星や夏の大三角、北斗七星にカシオペア。
ところで火星大接近で望遠鏡を購入する人が増えています。
今なら夕方に木星、夜は土星も見られます。
これらを望遠鏡で眺めたとき、どれくらい細かく大きく見えるのでしょうか?
Contents
望遠鏡の性能は口径で決まる
大きい望遠鏡ほど良く見える印象ですが、その通りです。
レンズの直径(反射式望遠鏡なら鏡の直径)が大きいほど良く見えます。
望遠鏡のカタログでは、この直径のことを「口径(こうけい)」と呼びます。
観測の難易度の順にならべると、だいたい次のようになります。
見えるもの | 口径 | 倍率の目安 | セット価格 |
木星のガリレオ衛星 | 3cm ~ | 10倍 ~ | 1万円 ~ |
土星の輪 | 5cm ~ | 80倍 ~ | 2万円 ~ |
木星本体の縞模様 | 6cm ~ | 100倍 ~ | 3万円 ~ |
火星の模様(*) | 8cm ~ | 150倍 ~ | 4万5千円 ~ |
(*) 大接近時です。火星が遠くにある時はより大きな望遠鏡が必要です。
安物は口径どおりの性能が出ない
レンズや鏡の性能が悪いと、それだけ像がボケて見えなくなります。
研磨処理やコーティング処理がきちんとされたものでないと、期待通りの像になりません。
安物は、こうした技術が施されてないので、お勧めしません。
屈折望遠鏡と反射望遠鏡
レンズを使った屈折式望遠鏡と、鏡を使った反射望遠鏡の2種類があります。
屈折望遠鏡の方が像がシャープですが、大きいものが作れません。
口径が大きいものは反射望遠鏡になるのが普通です。
口径が8~10cmの反射望遠鏡は、屈折望遠鏡よりも安価ですが、像のシャープさは屈折望遠鏡には及びません。
屈折望遠鏡ならアクロマートが最低条件
レンズが1枚だけだと、色が付いた嘘の像になってしまいます。
赤い光は屈折しにくく、青い光はしやすいため、色によって焦点がズレるからです。
その対策として、異なるレンズを2枚重ねて色のズレをキャンセルするのが普通です。
このようにレンズを2枚重ねたものを「アクロマート」と呼びます。
別名「色消しレンズ」ともいいます。
天体望遠鏡はアクロマートが最低条件です。
なお、レンズを3枚重ねた、より高価な「アポクロマート」というのもあります。
これは写真撮影用の高級品です。
カタログに掲載された写真のようには見えない!?
望遠鏡のカタログには土星や木星の写真が載っていて、あたかもそのように見えると錯覚しがちですが、それは期待しすぎです。
同じ望遠鏡でも、目で見た時よりも、写真で撮影してから見た時の方が、ずっときれいです。
写真は色々な技術や画像処理でシャープに仕上げられています。
何枚も重ねて、淡い光や模様がハッキリ見えるよう強化しています。
例えば惑星を望遠鏡でのぞいた時、期待するほどシャープには見えません。
小さな円盤の中に、少しぼやけて、かすかな模様があると分かるくらいです。
大気の流れの影響を受けて、ゆらゆらして見えます。
星雲や星団は、さらに難易度が高いです。
うっすらと白いモヤが見える程度です。
根気よく観望を続ければ、目が慣れてきて、より細かいものが見えてきます。
それでもカラーで見えることはありません。
望遠鏡の知識なしの通販サイトに要注意
通販サイトやオークションの中には、天体望遠鏡のことを知らないで販売している業者があります。
そういうサイトで購入してしまうと、
- 初期不良なのに不良だと分かってもらえない
- 届いたのに部品が不足
- 写真と違う商品が届いた
- 部品がつかない(互換性のない部品とのセットだった)
などのトラブルが発生します。
次のようなサイトには気を付けましょう。
- 「こんなに見える」のイメージ写真が大げさすぎる
- 望遠鏡の倍率ばかりアピール
- 望遠鏡の組み立て方が間違っている写真を掲載
- どこのメーカーか分からない
などです。
望遠鏡を持っている人が周りにいれば、ぜひ話を聞いてみましょう。
また専門ショップに行って、店員さんのお話を直接聞ければ、もっとも安心です。
価格の半分は架台で決まる
望遠鏡の架台も性能や値段に大きくかかわります。
理科で習ったように、日周運動で、星は1時間に15度ずつ東へ動きます。
望遠鏡で150倍に拡大すれば、もちろん星の動きも150倍にスピードアップして見えます。
つまり望遠鏡で火星が見えたとしても、どんどん視野からいなくなって、すぐに見えなくなってしまいます。
この星の動きにどれだけ追従できるかが、架台の性能です。
安価な経緯台
安い望遠鏡の架台は、多くが「経緯台(けいいだい)」と呼ばれるものです。
経緯台は、縦と横の2方向に望遠鏡を動かせます。
2つのハンドルを動かして星の動きを追いかける必要があり、面倒です。
最近ではコンピューターでモーターを制御して、自動的に星を導入したり追いかけるものも出てきました。
高価な赤道儀
一方、「赤道儀(せきどうぎ)」と呼ばれる架台があります。
日周運動に沿って望遠鏡を動かせるように作られています。
最近ではモーターで自動的に星を追いかけてくれものが主流です。
もちろん、経緯台よりも高価になります。
モーター付きを推奨、写真を撮るなら赤道儀
経緯台も赤道儀も、最新鋭の製品は、自動で星の動きを追尾します。
またどちらも指定した天体を自動的に見つけてくれるものまであります。
ただし経緯台は星を追いかけるにつれて視野が回転してしまうので、写真撮影には向きません。
写真撮影まで考えるなら、高性能な赤道儀となります。
同じくらいの大きさで高価な順に並べると、だいたい、以下のようになります。
おおくは三脚とセットで販売されています。
- 全自動の赤道儀(20万円~)
- 自動追尾の赤道儀、全自動の経緯台(10万円~)
- 経緯台(1万円~)
ちゃんとしたメーカーで選ぼう
新聞広告や雑誌の裏に掲載されているものは、一般にはお勧めしません。
また高倍率のみをアピールしているものも怪しいです。
望遠鏡は、望遠鏡メーカーのものを買うのが一番です。
入門機のおすすめレベル
とにかく見たいだけ、自由研究に使いたいだけなら、
屈折望遠鏡の口径7~8cm + 経緯台 = 4~5万円
くらいがおすすめです。
惑星や月くらいなら、スマートフォンをくっつけて写真撮影もできます。
これより安価だと、惑星の模様が見えません。
また望遠鏡メーカーでない可能性が多くなるので、カタログ通りの性能が出ません。
架台は妥協しても、望遠鏡の本体は妥協しない方が良いでしょう。
ちなみに本格的な写真撮影に挑戦するなら、20万円~ + カメラ代 です。
贅沢な大人の趣味ですね。
夏の天体観測を、ぜひ楽しんでください。