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国際バカロレア 数学ハイレベル

国際科の留学生のイメージ写真

今回は海外の大学進学を考えている人向けです。バカロレアの数学の問題について塾長が詳しく解説します。
理系ならご自身またはお子様が解けるかどうかチャレンジしてみてください。
バカロレアといえば、政府が2013年に「2018年には国際バカロレアDP認定校を200校まで増やす」目標を掲げて5年目です。海外の大学へ入学する人が今後は増えてきそうです。
果たして、普通の日本の高校生はバカロレア試験の問題が解けるのでしょうか。

バカロレアってどんなもの!?

端的に言いますと、バカロレア試験を突破してDP認定を取得できれば、海外の大学への入学資格や受験資格になります。私も実際に数学の指導をさせていただいております。もっともヒーローズ植田一本松校やヒーローズ赤池校に通学している生徒ではなく、オンライン生です。政府がこれから全国200校を目指すくらいしか認定校がないのですから、そもそも指導できる先生は限られていて、困っている生徒が全国にいるという事になります。

過去問のレベルは!?

バカロレア試験の過去問はなかなか手に入らず、ネットでもほとんど出回っていないようです。

そこで国際バカロレアの数学ハイレベルの問題を少しお見せしましょう。
数学を多用する理工系や経済学部を志望するなら、次のような出題で高得点を取る必要があります。

見ての通り、数学Ⅲの知識まで多用します。
しかし、よく見ると高校の範囲を超えているものもありそうです。

問1
Find $$\lim_{x \to \frac{1}{2}}\left ( \frac{\frac{1}{4}-x^{2}}{\cot \pi\theta} \right )$$ .

問2
(a) Show that $$ n!\geq2^{n-1}$$,for $n\geq1 $ .

(b) Hence, use the comparison test to determine whether the series $$\sum_{\infty}^{n=1}(-1)^{n}\frac{x^n}{n\times 2^n}$$ converges or diverges.

問1と問2は数Ⅲ、つまり高校3年生の2学期くらいになれば解けそうです。
お次はどうでしょうか?

問5
(a) Given that $$ y=ln\left ( \frac{1+e^{-x}}{2} \right ) $$ , show that $$ \frac{dy}{dx}=\frac{e^{-y}}{2}-1 $$ .

(b) Hence, by repeated differentiation of the above differential equation, find the Maclaurin series for y as far as the term in $ x^3 $, showing that two of the terms are zero.

問6
The real and imaginaru parts of a complex number $x+iy$ are related by the differential equation $$ (x+y)\frac{dy}{dx}+(x-y)=0 $$. By solving the differential equation, given that $ y= \sqrt{3}$ when $ x=1 $, show that the relationship between the modulus $ r $ and the argument $\theta $ of the complex number is $$ r=2e^{\frac{\pi}{3}-\theta} $$.

問5の前半(a)なら、微分方程式の計算に慣れていれば高3で解くことができそうです。しかし後半の(b)は高校の範囲を超えています。「マクローリン展開をしなさい」の意味が分からないでしょう。

問6も高校数学の範囲を超えています。微分方程式は数Ⅲの発展で扱いますし、問題集には変数分離法の発想も載っています。しかしこの問題はそれだけでは解けず、変数を分離する前に $v=\frac{y}{x}$ と置換するテクニックが必要です。これをヒントなしで解けと言われたら酷でしょう。このテクニックはバカロレアの他の過去問でも見たことがあるので、バカロレアの世界では必ず習う算術なのかもしれません。

数学の好きな高校生や大学1年生、ちょっと挑戦してみてはいかがでしょうか?

さて、解答例を載せておきます。

まずは問1

問1 解答例
そのまま極限値を取ると$\frac{0}{0}$の不定形になってしまいます。そこでロピタルの定理を使います。
$$f(x)=\frac{1}{4}-x^2$$
$$g(x)=\cot \pi\theta =(\tan \pi x)^{-1}$$
とすると
$$f'(x)=-2x$$
$$g'(x)=-(\tan \pi x)^{-2}\cdot (\frac{1}{\cos^2 \pi x}\cdot\pi)=-\frac{\pi}{sin^2 \pi x}$$
だから、与式にロピタルの定理を利用して、
$$\lim_{x \to \frac{1}{2}}\left ( \frac{\frac{1}{4}-x^{2}}{\cot \pi\theta} \right )=\lim_{x \to \frac{1}{2}}\frac{-2x}{-\frac{\pi}{\sin^2 \pi x}}=\lim_{x \to \frac{1}{2}}\frac{2}{\pi}\cdot x\cdot sin^2 \pi
x=\frac{2}{\pi}\cdot\frac{1}{2}\cdot 1^2=\frac{1}{\pi}$$

ロピタルの定理はよく出題されるようです。

続いて問2

問2 解答例
(a) 前半は数学的帰納法で示します。
(i) $n=1$のとき、$左辺=1!=1$、$右辺=2^{1-1}=2^0=1$で成立
(ii) $n=k$のとき
$$k!\geq 2^{k-1}(①式)$$
が成立すると仮定すると、$n=k+1$のとき、
$$左辺=(k+1)!=(k+1)\cdot k!\geq (k+1)\cdot 2^{k-1}=\frac{k+1}{2}\cdot 2^k \geq 2^k$$
(①式、および$\frac{k+1}{2}\geq1$より)となり、これも成立
以上(i)(ii)より与式は成立。

(b) 後半はいわゆる「はさみ打ちの定理」で解きます。
上記(a)の式は両辺とも正であるから、両辺の逆数を取って、
$$0\leq \frac{1}{n!}\leq\frac{1}{2^{n-1}}$$
となるから、
$$\sum_{n=1}^{\infty}0 \leq \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n!}\leq\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{2^{n-1}}$$
である。左辺は明らかに0であるから、右辺が有限値となれば、少なくとも中辺が収束すると言える。
$$右辺=\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{2^{k-1}}=\lim_{n\to\infty}\frac{1-(\frac{1}{2})^n}{1-\frac{1}{2}}=\frac{1}{\frac{1}{2}}=2$$
よって
$$0\leq \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n!}\leq2$$
であるから収束する。
(※)ちなみに収束した値は$e-1=1.718\dots$であることが知られています。

大学受験では、よくある例題です。(a)がヒントになって(b)を導く形式です。国内外を問わず、こうした問題の意図をくみ取れることが試験では重要ですよね。

ここからが難しくなります

問5 解答例
(a) 式変形の問題ですから、とにかく手を動かしましょう。
$$f(x)=y=ln\left (\frac{1+e^{-x}}{2}\right ) \tag{1}$$
$y=ln(e^y)$であることを考えれば、
$$e^y=\frac{1+e^{-x}}{2} \tag{2}$$
$$2e^y=1+e^{-x}$$
$$e^{-x}=2e^y-1 \tag{3}$$
式(1)の両辺を微分して
$$\frac{dy}{dx}=\left ( \frac{1+e^{-x}}{2} \right ) ^{-1}\frac{d}{dx} \left ( \frac{1+e^{-x}}{2} \right ) $$
$$=\left ( \frac{1+e^{-x}}{2}\right )\left ( -\frac{1}{2} e^{-x}\right )$$

ここで式(2)と式(3)を代入して

$$=(e^y)^{-1}\left ( -\frac{1}{2}(2e^y-1) \right )$$

$$=e^{-y}\left ( \frac{1}{2}-e^y \right )=\frac{e^{-y}}{2}-1$$

以上から

$$\frac{dy}{dx}=\frac{e^{-y}}{2}-1=\frac{1}{2}e^{-y}-1 \tag{4}$$

(b) $x=0$でマクローリン展開する。すなわち、

$$f(x)=ln\left ( \frac{1+e^{-x}}{2} \right ) =a_{0}+\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}x^{n}$$

と置くと、

$$a_0=f(0)$$

$$a_1=\frac{1}{1!}{f}'(0)$$

$$a_2=\frac{1}{2!}f^{(2)}(0)$$

$$a_3=\frac{1}{3!}f^{(3)}(0)$$

である。よって$f^{(2)}(x)$と$f^{(3)}(x)$を求めておく。

式(4)を使って

$$f^{(2)}(x)=\frac{d}{dx}\left( \frac{1}{2}e^{-y}-1 \right ) = \frac{1}{2}e^{-y}\cdot(-1)\cdot\frac{dy}{dx} = -\frac{1}{2}e^{-y}\left ( \frac{1}{2}e^{-y} -1 \right ) $$

$$= -\frac{1}{4}e^{-2y}+\frac{1}{2}e^{-y}$$

$$f^{(3)}(x)=\frac{d}{dx}\left( f^{(2)} \right ) = -\frac{1}{4}\cdot(-2)\cdot e^{-2y}\cdot \frac{dy}{dx}+\frac{1}{2}\cdot(-1)\cdot e^{-y}\cdot \frac{dy}{dx} $$

$$=\frac{1}{2}e^{-2y} \left( \frac{e^{-y}}{2}-1 \right ) -\frac{e^{-y}}{2}\left( \frac{e^{-y}}{2}-1 \right ) $$

$$=\frac{1}{4}e^{-3y}-\frac{3}{4}e^{-2y}+\frac{1}{2}e^{-y}$$

あとは$x=0$を代入して

$$f(0)=ln\left( \frac{1+e^{-0}}{2}\right ) =ln(1) =0$$

よって$x=0$のとき$y=0$だから、

$$a_0=f(0)= 0$$

$$a_1=\frac{1}{1!}{f}'(0)=\frac{e^0}{2}-1=-\frac{1}{2}-1=-\frac{1}{2}$$

$$a_2=\frac{1}{2!}f^{(2)}(0)=\frac{1}{2!}\left( -\frac{1}{4}+\frac{1}{2} \right ) =\frac{1}{4}$$

$$a_3=\frac{1}{3!}f^{(3)}(0)=\frac{1}{3!}\left ( \frac{1}{4}\cdot 8-\frac{3}{4}\cdot 4+\frac{1}{2}\cdot 2 \right ) =0$$

以上から

$$f(x)=0-\frac{1}{2}x+\frac{1}{4}x^2+0x^3+\sum_{n=4}^{\infty}a_nx^n$$

よって$x=0$の周りで$x^3$項までの近似式

$$ln\left (\frac{1+e^{-x}}{2}\right )= -\frac{1}{2}x+\frac{1}{4}x^2$$

を得る。

逆関数を使った計算力が必要な問題でした。

日本ではマクローリン展開を大学1年生で知るのが普通でしょう。ただし$x^n$の多項式に展開できることや、微分して値を代入することで次々に係数を求められる、というヒントさえあれば、高校生でも十分にチャレンジできる問題です。この問題を3分割くらいすれば日本でも出題が可能でしょう。ただし時間がかかるので、制限時間をどう考えるか、にもよりますね。

なお実用的には、マクローリン展開によって得られる近似式が、果たしてどれくらいの精度を持つのか、という誤差判定が必要です。それはやっぱり大学生になってから、という事になるでしょう。

 

さて、最後の問題です。これも計算力がかなり必要です。ただ、微分方程式が解けるか否かは、パターンをどれだけ多く知っているか、に左右されます。ほとんど知識問題と言えるでしょう。微分方程式を少ししか習わない日本の高校生にとっては、少し不利と言えます。

 

問6 解答例

微分方程式は変数分離できる形に工夫して変形する。

$$(x+y)\frac{dy}{dx}+(x-y)=0$$

$$\frac{dy}{dx}=\frac{y-x}{y+x}$$

$$\frac{dy}{dx}=\frac{\frac{y}{x}-1}{\frac{y}{x}+1} \tag{1}$$

ここで

$$\frac{y}{x}=v \tag{2}$$

と置けば、

$$y=xv$$

$$\frac{dy}{dx}=v+x\frac{dv}{dx}$$

だから式(1)は

$$v+x\frac{dv}{dx}=\frac{v-1}{v+1}$$

$$x\frac{dv}{dx}=\frac{v-1}{v+1}-v$$

$$x\frac{dv}{dx}=\frac{v-1-v(v+1)}{v+1}$$

$$x\frac{dv}{dx}=\frac{-(v^2+1)}{v+1}$$

よって両辺を逆数にして

$$\frac{1}{x}\frac{dx}{dv}=-\frac{v+1}{(v^2+1)}$$

$$\frac{1}{x}\frac{dx}{dv}=-\frac{v}{(v^2+1)}-\frac{1}{(v^2+1)}$$

$$\frac{1}{x}\cdot dx=-\frac{v}{(v^2+1)}\cdot dv-\frac{1}{(v^2+1)}\cdot dv$$

$$\int\frac{1}{x}\cdot dx=-\int\frac{v}{(v^2+1)}\cdot dv-\int\frac{1}{(v^2+1)}\cdot dv \tag{3}$$

ここで式(3)の左辺は

$$\int\frac{1}{x}\cdot dx=ln|x|+C’ \tag{4}$$

また式(3)の右辺の第1項について式(2)も考慮して

$$-\int\frac{v}{(v^2+1)}\cdot dv=-\frac{1}{2}ln(v^2+1)=-\frac{1}{2}ln\left(\left( \frac{x}{y} \right)^2+1\right ) \tag{5}$$

次に右辺の第2項について変形する。(これは少し長いです。)

まず、

$$v=\tan \theta=\frac{\cos\theta}{\tan\theta} \tag{6}$$

と置けば、

$$\theta=\arctan v \tag{7}$$

$$\frac{dv}{d\theta}=\frac{1}{\cos^2 \theta}$$

$$\frac{dv}{d\theta}=\frac{1}{\cos^2 \theta}$$

$$dv=\frac{d\theta}{\cos^2 \theta} \tag{8}$$

であるから、右辺の第2項は、式(6)(8)より、

$$-\int\frac{1}{(v^2+1)}\cdot dv=-\int\frac{1}{\tan^2\theta +1}\cdot \frac{d\theta}{\cos^2 \theta}$$

$$=-\int\frac{1}{\frac{\sin^2\theta}{\cos^2\theta} +1}\cdot \frac{d\theta}{\cos^2 \theta}$$

$$=-\int\frac{1}{\sin^2\theta+\cos^2\theta}d\theta=-\int d\theta=-\theta$$

式(7)と式(2)より、式(3)の右辺の第2項は

$$-\int\frac{1}{(v^2+1)}\cdot dv=-\theta=-\arctan v =-\arctan \left( \frac{y}{x} \right)\tag{9}$$

である。なお、積分定数は左辺にC’があるので、右辺では省略しておく。
以上から式(3)は式(4)(5)(9)をまとめて、

$$ln|x|+C’=-\frac{1}{2}ln\left(\left( \frac{y}{x} \right)^2+1\right ) -\arctan \left( \frac{y}{x} \right)$$

となる。さらに両辺を2倍してから移項して変形を続けていく。

$$ln(x^2)+ln\left(\left( \frac{y}{x} \right)^2+1\right ) +2\arctan \left( \frac{y}{x} \right)=-2C’$$

$$ln\left(x^2\cdot\frac{y^2}{x^2}+x^2\cdot1\right ) +2\arctan \left( \frac{y}{x} \right)=-2C’ $$

$$ln(y^2+x^2)+2\arctan \left( \frac{x}{y} \right)=C \tag{10}$$

なお$-2C’=C$とあらためた。

ここで問題文から$(x,y)=(1,\sqrt{3})$が与えられているから、

$$r^2=|x+iy|^2=x^2+y^2=1+3=4$$

$$\theta=arctan \left( \frac{y}{x} \right)=arctan \left( \frac{1}{\sqrt{3}} \right)=\frac{\pi}{3}$$

である。これらを式(10)に代入すると積分定数は

$$C=ln4+2\frac{\pi}{3}=2\cdot\left( ln2+\frac{\pi}{3} \right)$$

と求まる。これを再び式(10)に代入して微分方程式の解を次のように得る。

$$ln(y^2+x^2)+2\arctan \left( \frac{x}{y} \right)=2\left( ln2+\frac{\pi}{3} \right) \tag{11}$$

$r^2=x^2+y^2$および$\theta=arctan \left( \frac{y}{x} \right)$であったので、式(11)は更に

$$2ln(r)+2\theta=2\left( ln2+\frac{\pi}{3} \right) $$

と変形できる。両辺を2で割って、さらに変形を続ける。

$$ln(r)+\theta=ln2+\frac{\pi}{3}$$

$$ln(r)-ln2=\frac{\pi}{3}-\theta$$

$$ln(r\cdot2^{-1})=\frac{\pi}{3}-\theta$$

よって

$$2^{-1}\cdot r=e^{\frac{\pi}{3}-\theta}$$

両辺を2倍して

$$r=2e^{\frac{\pi}{3}-\theta}$$

を得る。

解説は以上です。

実は日本の教育は遅れている!?

高校生の皆さん、いかがでしたか?

一昔前までは、日本の大学生は留学先で数学や物理が優秀だと評されていました。

しかしバカロレアの問題を見ると日本の大学1年生の領域まで含んでいます。計算力もかなり求められています。

ちなみに数学ハイレベルの単元には「行列」や「群論」も一部含まれます。これも日本では大学で習う領域ですね。「群論」に関しては数学科の学生でもない限り、日本では習うことすらないでしょう。

日本の教育が進んでいる、というのはすでに過去の話です。世界の標準レベルはどんどん向上しています。

気を引き締めた方が良さそうですね。

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