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理想の教材を出版社と話し合いました

教材のイメージ画像

「2020年の教科書改訂に向けて、松下先生のご意見を聞きたいです。」

先週、そういうお電話をいただきました。
某出版社さんからです。
2020年は10年ぶりに学習指導要領が改定されます。
それに伴い、教科書はもちろん、問題集も参考書もすべて改定されます。

本日、その打ち合わせをしました。
営業の方と、理系科目の編集担当さんの、2人で来られました。

松下先生なら、どんな教材を生徒にやらせたいか、聞かせてください。

そこでダメな教材の例を出しました。

悪い問題の例 中1数学

問.下の( )にあてはまる用語を答えよ
a+b=b+a が成り立つことを加法の(  )という。

答え. 交換法則

何が悪いのか、プロならすぐに分かります。
ところが、このレベルの教材が多いのです・・・

相手はプロの編集担当さんです。
教育改革の影響や出題傾向の話しなど、釈迦に説法です。

それなのに、わざわざ話しを聞きに来られました。

こりゃ、かなり突っ込んだ話をする必要があるのかな・・・

そうに思ったので、上のような細かい職人レベルの話から始めることにしたのです。

良い問題と悪い問題

「普通はこうに出題しますよね。」

良い問題の例 中1数学

問. 下の( )にあてはまる法則名を答えよ
a+b=b+a が成り立つことを(  )という。

答え.加法の交換法則

加法の結合法則と合わせて中1の5月くらいで習います。

『加法の』をつけ忘れて失点する生徒が多いからですか?

確かに、それも事実です。
しかし本質は、なぜそう出題されたのか、なんです。

この例では「加法の」がそもそも重要だからです。
加法、減法、乗法、除法の全てについて考えれば明白です。

ある 加法の交換法則
ない 減法の交換法則
ある 乗法の交換法則
ない 除法の交換法則

もしも上の4通りが全て「ある」だったら、法則名は単に「交換法則」でOKだったことでしょう。
しかし違います。

文字式では、加法の+記号と乗法の×記号を省略して記述できます。
省略できるのは、加法と乗法で両法則が成り立つからです。
書き順を変えても計算間違いが起こらないからです。

ところが減法の-記号や、除法の÷記号を省略する記述はありません。
減法と除法では両法則が成り立たないので省略できません。
書き順を変えただけで計算が間違うため省略なんてもってのほかです。

そのため文字式では可能な限り、減法を除法を排除します。
減法はマイナスの加法に、除法は逆数の乗法にしなければなりません。

数学の概念を文字式まで拡張するためには、ここがキモになります。

悪い問題が混乱を招く

ここを理解できていない生徒は、さっそく次の単元から困ります。

問. x = -2, y = 5 のとき、次の式の値を求めなさい
y – 3x

誤: 5-3-2 = 0
正: 5-3×(-2)=5+6=11

マイナスの数を代入して計算することが、できないのです・・・

文字式を理解できていない子の見分け方

次の式を読んでもらえば、症状がすぐ分かります。

5a + 4 – b

正答 5a プラス4 マイナスb
誤り 5a 足す 4 引く b

交換法則と結合法則が保証された加法と乗法は「足す」の記号 ”+” と「掛ける」の記号 ”×” が省略されていて、書いてありません。
書いてないのですから、読むはずがありません。

ちなみに、省略せずに書くとこうなります。

5×a + (+4) + (-b)
5かけるa 足す プラス4 足す マイナスb

テキトーな問題集を手にしてしまうと、先の「悪い問題の例」のような事故が起こります。
そのような問題集は、いくらやっても時間の無駄です。
数学が得意になることは、まずありません。

良問とは

重箱の隅をつついたり、厳格な記憶力を問う。
そのような質の低い問題は、どんどん出題されなくなってきました。

逆に、

数学なら数学の、理科なら理科の

「基本概念」について、理解を確認したり、気づかせたりするような問題

が、良い問題です。

そのような良問を作る学校の先生は、塾でも名が通っています。
そういう問題で点が取れるようにしてあげることは価値があります。

「そういう良問を、もっともっと増やして欲しいです。」

質の悪い問題で、全体の平均点が単にダウンしただけなら、それほど気にはしません。
もちろん、そんな先生に当たってしまった生徒は不幸ですが、塾で救います。

プロの目は輝き、手は真っ黒に

その編集担当さんは目を輝かせて、次の質問をぶつけてきました。

中2の証明問題についてです。
入試や定期テストでは穴埋め問題が主流です。
しかし、全部記述させる問題を増やして欲しいというご要望も出ています。
松下先生のところも、全部記述させる問題がもっと欲しいですか?

穴埋めが初級の問題で、全部記述させるのが発展や仕上げの問題、という意味でしたら、それは違うと思います。

入試問題や学校のテストをお見せして、穴埋め問題でも良問がたくさんある事例を説明しました。
出題形式も大切ですが、もっと大切なのは、出題の意図だと思います。

たとえば、多くの問題集では、1行目は穴埋めにしませんよね。
これっておかしいですよ。
1行目の「どの三角形とどの三角形に目を付けたか」が最も重要なのですから、そこを問題にしないと。
もちろん、1行目から穴抜きでは、意味不明な文章になるのは分かります。
でも、もうひと工夫して、その1行目から穴埋めにして欲しいです。

そんなこと、できるんですか?

たとえば、2人の生徒が図を見ながら証明の戦略を話し合っている形式にしたらどうでしょう。
それなら前振りの文脈が用意できます。

確かに、他県の入試では、そのような出題を見たことがあります。

そういう出題は、もっと増えてくると思います。

ことの本質は、穴埋めか、全部記述か、ではなくて、問題の意図が何なのかが生徒に伝わるか否か、です。

何か問題を出すときは、必ず出題の意図が何かを明確にして欲しいです。
もちろん解き方のパターンや手順の解説も大切ですが、もう一歩深く、
「出題の意図を見抜くためのヒント」をページのそこかしこに散りばめて欲しいです。
そういう教材があったら最高ですね。

と私の意見を述べました。

文字列にすると長いですが、ここまでの会話で5分くらいです。
相手はプロの編集者さんですから。
こうして他にも色々な実例をたくさん並べて、90分間みっちり話し合いました。

こんな私の意見をどこまで聞いていただけるのかは分かりません。
ただ、担当者のメモ用紙は、書き込みで真っ黒になっていました。

子供たちが手にする教材がもっと良くなることを願っております。

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