塾長です。
中学1年生の英語が、とうとう大混乱の「現在進行形」に突入してきました。
「英語が苦手です」
この時期、そんなふうに学習相談に来られる新規の中学2年生。あるいは、学年が上がるにつれて定期テストの点数が下がって来たというご相談。実際に解答用紙を分析すると、だいたい中1のこの時期に原因があることが多いです。
「現在進行形」で英語の混乱がはじまる!?
中学1年生の英語の教科書。だいたい、どのような教科書でも、次のような流れで英語を習います。
最初にbe動詞の文を習います。
Saki: Ms. Baker, this is your pen.
Ms. Baker: Oh, yes. That’s my pen.
などという、現実ではあまり聞かない会話文で習います。
次に、一般動詞の文を習います。
I like math. I study it every day. I like music, too. I play the guitar in a band.
などという、輝かしい生徒の自己紹介文で習います。
それぞれの否定文や疑問文を覚え、How many ~? や Who~? などの疑問詞の使い方も覚え、やがて生徒たちは悟りを開きます。
先生、だんだん英語がわかって来ました。英語のルールを簡単にまとめると、
「be動詞の文」と「一般動詞の文」は混ぜるな、危険!
ってことでしょ。
この2つは否定文と疑問文をつくるルールが全く別だから、分けて考えればいい。
それさえ分かっちゃえば、疑問詞だって意味の違いだけで難しくはないですよ。
英語なんて、あとはもう暗記だけですよ。
やっとのことで英語のヒミツが見えてきました。苦手な英語が乗り越えられそうだと思えてきました。
正にその矢先です。見上げるほど高い壁のように「現在進行形」が目の前に立ちはだかります。
現在進行形は、
be動詞 + 一般動詞のing形 ~
です!
なんということでしょう。「混ぜるな危険」だったはずの「be動詞」と「一般動詞」が、ここで混ざってしまいます!
ちゃんと英語を勉強して来た生徒の方が、むしろ混乱します。
そして、中学1年生の不幸はまだまだ続きます。
現在進行形のあと、さらにさらに、過去形、助動詞の can と続くのです。英語の高いハードルが次々に現れます。
英語が得意科目に変わるかもしれない。そんな希望が持てた時期が、僕にもありました(過去形)。
塾長は中学生のとき、むりゃくちゃ英語が苦手だったらか、よ~く分かりますよ。
でもこの苦労、きっと最初から英語が得意だった人には、分からないだろうなぁ・・・
「進行形」=「している」はウソ!?
現在進行形で発症した混乱を完全に治すためには、やはり文法をちゃんと理解するのが近道です。まず、
一般動詞に “ing” をつけたら動詞(動作)ではなくなる!
ということを頭に叩き込みましょう。このように説明すると、
え!?「~している」という意味だから「動作」じゃないの?
と思われるでしょう。実はそれが混乱の原因です。そもそも「している」という和訳が不十分です。それは次の例文を見れば明らかでしょう。
私は犬を飼っている。
◎ I have a dog.
× I am having a dog.
英語の参考書には「have, live などは進行形に使えない動詞である!」などと、いかにも重要ポイントっぽく書かれているものがあります。ますます混乱しますね。こんなのポイントでも何でもありません。次のように考えれば一発で理解できます。
進行形は「瞬間の様子」を表わす
◎ 進行形=瞬間の様子
× 進行形=動作
進行形は、動いているものの時間を止めて、写真のようにある瞬間だけをとらえた表現です。ぱっと見たその瞬間は何かしていた。でも次の瞬間は分からない。そんな臨場感のあるニュアンスです。
動画と違って写真は動きませんから、動作ではありません。「瞬間」は「様子」です。「やさしい」とか「しあわせ」とか「黄色い」とかと同じで、姿や形や状態を表現する言葉と同じです。
人や物の様子を表現するのは「be動詞の文」でした。
主語 + be動詞 + 様子
I am happy.
The box is yellow.
これと同じように
主語 + be動詞 + 動詞のing形(様子)
My dog is running over there.
とすれば良いわけです。
現在進行形の文の正体は、何のことはない、ただの「be動詞の文」でした。「動詞のing形は、動作ではなく様子」という事実さえ受け入れれば、be動詞の文だと思ってしまえば恐れる必要はありませんでした。
やっぱり「混ぜるな危険」は正しかった!
現在進行形の正体が「be動詞の文」だと分ってしまえば、否定文や疑問文の作り方も、もう知っていることになります。
be動詞の文では、
- be動詞を主語の前に出せば疑問文
- be動詞に後に not を置けば否定文
と文法が決まっていましたから、その通りでOKです。もちろん疑問文に対する答え方や、疑問詞を使った疑問文の作り方、答え方も同じです。
- 肯定文: My dog is running over there.
- 否定文: My dog is not running over there.
- 疑問文: Is my dog running over there?
Yes, it is. / No, it isn’t.
たとえ現在進行形が登場しようとも、
「be動詞の文」と「一般動詞の文」は混ぜるな、危険!
は成り立っていました。これで一安心です。
進行形に使えない動詞なんて無いぞ
ところで「have, live などは進行形に使えない動詞である!」という説明。さて、本当でしょうか?
そこでクイズです。have や live の進行形をあえて訳してみましょう。
次の例文を無理やり訳したら、いったいどうなるでしょうか?
I am having a dog now.
このような英文は作れなくもないです。ただ、何かとてつもなく特別な事情がありそうな文になります。
今この瞬間は犬を飼っているが、次の瞬間は飼っていないかもしれないぜ。
というような意味になるでしょう。間違いなく、動物愛護団体から非難されるでしょう。
次はどうでしょうか。
I am living in Nagoya now.
俺は今、名古屋で生きてるぜ!
例えば新幹線で名古屋を通過中に、たまたま名古屋っぽい経験ができたとしたら、このような表現も一興ですね。
英文法を教えることは必要か不要か?
ところで、英文法を細かく説明すると「受験英語」とレッテルを張ってバカにする人たちがいます。「一部の」英語が超得意な人たちから、希に非難を受けることがあります。
「そんなの生きた英語じゃない!」
「ネイティブの赤ん坊は英文法を教わらなくても、英語が自然に話せるようになるのだから、英文法なんていらない。」
なんてね。全くその通りです。ごもっともでございます。
英語が大好きな人は
「英語はやっぱり、めっちゃ聞いて、めっちゃ話せば、できるようになる!!」
という言います。きっと、そうなんでしょう。
英語を「経験する量」を圧倒的に増やせば、英語の「肌感覚」や「センス」が自然に身に着き、英語をマスターできる。そういう道をこそが英語をマスターする最善の方法だという主張です。もちろん、それができれば良いと塾長も思います。実際、現地に住んでしまえば、誰だって英語を話せるようになるのですから。
ただし、それが「できれば」の話しです。
考えてみてください。部活と両立し、5教科以上も勉強する必要があるのです。そんな中で、英語だけを勉強するわけにはいきません。英語の勉強に割けるのは、せいぜい1日平均45分くらいでしょう。
しかも日本語と英語は、あまりにも違います。
限られた時間の中で、日本語とあまりにも違う英語を、ちゃんと理解して、しかもテストで点数を取らなければならない現実があります。
そのためには、ある程度の公式が必要だと塾長は思うわけです。
それが英文法です。文法を馬鹿にしちゃいけません。
中学1年生の文法を、しっかり奥底まで理解する事が、その後の英語人生を豊かにすると言っても過言ではありません。
あとがき
塾長は中学生の時、英語がめっちゃ苦手でした。中1からダメでした。中1で習うはずの「be動詞の文と一般動詞の文はルールが別!」ということすら、中3の夏休みになって、ようやく知ったのです。
このことを生徒や保護者の皆さんにお話しすると、誰も信じてくれません。私は私で、それがお世辞だと勝手に信じることにしていますが。
しかし本当です。図書館の自習室で
「へぇ、be動詞と一般動詞って、分けないといけないんだぁ!」
と声も出さずに感動し、同時に焦ったのを覚えています。
「こんな簡単な法則、な、なんで中学の先生は誰も教えてくれないんだよ!」
なんて思っていましたっけ。高校受験の時は、独学の限界を知りましたよ。
塾長が中学生の時は、学校の先生が文法を体系的に説明してくれることなんて、まず無かったです。意味も分からず音読し、カセットテープをキュルキュルと巻き戻しては、同じ例文を何度も聞かされました。次に、先生が生徒を順番に当てて、定型文の単語を適当に入れ替えた文を言わされました。ただ、それだけでした。日本中の英語の先生たちが、英語の指導法を分からなかったのだと思います。
ただ、塾に行っている人たちだけが、英文法という秘密を知っていました。
今は教科書が良くなって、文法の説明も少しは書いてあります。そして学校の先生が普通に文法を説明してくれるそうです。みんな幸せですね。
それでも困ったら、塾長のところに来てください。
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