塾長です。
国公立大学を目指している受験生に質問です。記述試験とマーク試験、どちらの方が点を取りやすいですか?
嫌煙されがちな「記述試験」ですが、理系科目に関しては、実は「記述の方が実力を発揮しやすい」です。今回はその理由と記述の対策について書きます。国公立大学の理系を志望する受験生の話しです。
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9月のこの時期にどうなっているべきか?
大学受験生は、夏休みの始めと終わりに、それぞれマーク模試と記述模試がありました。できはどうでしたか?
ところで、国公立を志望している受験生なら、1学期からセンター試験の過去問にチャレンジしていると思います。全ての教科とまではいかないまでも、英数国の1~2年分くらいは解いた経験があるでしょう(そういうレベルでないと国公立は難しいです)。つまりマーク試験の解き方や時間配分については、何となく知っています。
そう考えると、記述試験よりもマーク試験の方が結果が良くなりやすいように思います。ところが、話はそれほど単純ではありません。
本当は記述試験の方が偏差値を取りやすい!?
受験生本人に本当のところを聞いてみましょう。さて、国公立を狙っている理系の高校3年生はどう答えるでしょう。すると意外にも
「記述の方が自信ある!」
という答えが返ってきました。ちなみに講師たちの経験談を聞いてみても同様でした。うちの講師陣は名古屋大学をはじめとした国公立大学の学生が多いです。彼らも同様に
「センター試験は苦手。二次試験の方がじっくり取り組めて良かった。」
と答えます。さらに若かりし頃の塾長も同じ状況でした(「若かりし頃」とか言っちゃうのが恥ずかしいですが)。とりあえず経験則とか周囲の事例からまとめると、
理系の国公立志望なら、記述試験の方が良い結果であるべき!
という結論になりそうです。それでは、そもそも何故そうなのでしょうか?
その理由を考える出発点として、マーク試験と記述試験の違いを比較してみましょう。
マーク試験と記述試験の違い
わかり易いように数学で比較してみます。
マーク式の試験(数学)
- 問題の数が多めで、1問あたりの制限時間が厳しい
- 合格者の平均点が高め(基礎~中級の問題が多め)
- 問題文が長い(文脈にそって解かせる、解き方は1つ)
- 題意の解釈を解答欄に書く必要がない(解答の記述が少ない)
- 完答重視で部分点が与えられない
- ちょっとしたミスでも大きく失点する
記述式の試験(数学)
- 問題の数が少なめで、1問あたりの制限時間がゆるい
- 合格者の平均点が低め(中級~上級の問題が多め)
- 問題文が短い(含蓄が深い、解き方は自由)
- 題意の解釈から解答が始まる(解答の記述量が多い)
- 過程も重視し、部分点が与えられる
- ちょっとしたミスならば減点で済む
なるほど、なるほど。まとめると、
- マーク試験は、与えられた文脈にそって、速く正確に解く試験
- 記述試験は、解くまでの道のりを説明しながら論理的に記述する試験
ということになります。文脈を「与えられる」のか「自分で作る」のか、というのが最大の違いでしょう。そこで更にまとめます。
- マーク試験は、型と速さを重視。事務処理能力の高さを評価。
- 記述試験は、着想と論理性を重視。問題解決力の高さを評価。
まとめ過ぎて文句を言われそうですが、わかり易さのために、あえて細かいことはお許しください。とにかく、こうに考えると、対策の方針も立ちやすいです。
対策の方針の違い
- マーク試験は、解き方のパターンを多く暗記して、何度も繰り返して速さと正確さを高める練習をしろ
- 記述試験は、骨のある問題の1問1問にじっくり取り組め、読み手に伝わりやすく論理的に記述する練習をしろ
どちらかと言えば暗記が苦手。どちらかと言えば考える方が得意。そんな理系人間にとっては、記述試験がマーク試験よりも取り組みやすいのは、自然かもしれません。
記述試験は「着想」と「論理性」で部分点を稼ぐ
マーク試験は「型」と「速さ」を重視します。数学で言えば「型」は、教科書の例題や黄色チャートの例題のことです。それらを何度も繰り返して練習し、類題に速く正確に対応できるように訓練します。このような勉強方法は、比較的どの先生でも、どの学校でも指導してくれます。高校受験とほとんど同じスタイルですからノウハウを持っている人口が多いです。勉強の基礎と言えるでしょう。慣れるまで繰り返す勉強も必要ですから、ある意味では根性論も詰め込み教育も、どちらも有効です。やるだけです。やりましょう。
一方、記述試験の方はというと、根性論が効きません。詰め込み教育も効きません。言われた通りにプリントや参考書を繰り返すだけでは効果が期待できません。むしろ頭の中が自由である方が実力UPに効いてきます。重要なポイントを「解ってるぜ」とアピールできる強かさが点数に反映されます。
どういうことか、もう少し説明します。
過程を重視するから過程にも点数が与えられる
記述試験では「着想」や「論理性」が重視されるのですから、逆に言えば「着想だけ」でも「論理性だけ」でも点数が取れる!ということになります。ここがポイントです。
例えば、2次試験で残り5分しかない時、あなたなら次の問題をどう解答しますか?
a を実数とする。方程式
cos²x- 2a sinx-a+3 = 0
の解で 0≦x< 2π の範囲にあるものの個数を求めよ。(参考: 学習院大学)
あと5分です。解けそうだと思っても、もう解答を書く時間がありません。
仮に、この問題の配点が200点満点中の40点だとしたら、ヤバいです。
どうしますか?
私なら、こう書きます。
次の方針で解く
・ sinx=t(-1≦t≦1)と置換して、与式をtの2次式 f(t) にする
・ f(t) =0 の解 t に対して x の個数がいくつ対応するかを a で場合分けして調べる
マーク試験なら0点ですが、記述試験ならこれで7~8点くらいはもらえます。記述試験は着想や過程を重視します。上の書き方は着想を書いているので点数をもらえるわけです。
さらに上の方針を1分で書ききって、まだ4分あったとしたら、もう少し書き足します。
f(t) =t²+2at+a-4 =0 を満たす t が
- t=-1またはt=1 のとき、対応する x は1個
- -1<t<1 にあるとき、対応する x は2個
- それ以外のとき、対応する x は 0個
である。
着想につづいて論理展開を書いておきます。題意の「解の個数を求めよ」に応える方針が書けました。これは重要な論理展開ですから、さらに加算されます。これで10点は超えるでしょう。
合格はもぎ取って来るもの
上の例では、解答欄に計算過程もグラフも示せませんでした。場合分けの中身もまだ解答できていません。ですから40点中の30点は落としています。しかし、それでも残りの5分で10点をもぎ取ってくることには成功しました。10点もあれば逆転合格のチャンスが十分に生まれます。合格はそうやって自分の方へ引き寄せるのです。
添削指導をしてもらおう
上の例を見て、すぐに実行できるような学生は最初から苦労していません。一般には、記述試験の答案用紙の書き方を独学するのは、とても大変です。もしも学校の先生や塾の先生に指導してもらえるなら、ぜひ添削指導をお願いしましょう。独学はポイントを勘違いするリスクが高く、また上達のスピードが遅いです。
普通は「考えの過程を解りやすく書こう」という発想すらないと思います。「そんなに書かなければいけないの、めんどくさい。」みたいに思うかもしれません。その考えが逆で、過程を書いた方が部分点になる、ということを身をもって教わってください。
おそらく口で言われて、頭で理解しただけでは、正しい記述の仕方をできるようにはなりません。「理解すること」と「できること」は別です。自分の答案用紙を真っ赤に添削してもらいながら、「え、これも書いた方がいいの!?」「へぇ、こう書いた方が点数になるんだ!」という経験をしながら、少しずつ要領を得ていくものだと思います。
私は浪人してから、こうした力を養いました。自分で苦労しながら記述の仕方を鍛えました。今思えば、効率が悪くて時間もかかりました。浪人生だったからできたのだと思います。現役生なら先生の力を借りた方が良いです。
ちなみに、私が記述の過程をちゃんと書こうと思ったきっかけは、友人から「自分の頭で考えて解け」と指摘されたことでした。
それまで私は、2次試験の問題に対してもマーク試験の対策と同じような方針で勉強をしていました。定評のある問題集を繰り返せば、いつか高得点を取れるだろうと思い、赤チャートを「頭に入れる」ような練習ばかりやっていました。しかし友人からそうダメ出しされた後は、自分の頭で何をどういう順番で考えたかも書くようにしました。実際、偏差値が上がり始めたのはそれからでした。
ちなみに、私にアドバイスをくれたその友人は東北大学に合格しました。
なぜ二次試験は答案の「過程」を重視するのか?
二次試験は大学の個別試験です。センター試験が「高校の基礎学力が身に着いていること」を確認する試験であるなら、個別試験は「大学が欲しい人材かどうか」を確認する試験と言えます。
二次試験で試されるのは「学府に相応しい人間」かどうか
特に国公立大学は学府としての自覚が強いです。日本の学問を守り、発展させていく、という意気込みを持っています。私立大学や一般企業がやらないような研究や、地味でお金になりにくいような研究だとしても、国や人類にとって必要な研究であれば取り組みます。3年や5年では成果は出ないかもしれないが、10年、100年で見れば、確かに国や人類に貢献するだろう、というような研究も行います。カッコイイ言い方をすれば、学問を守る最後の砦としての自覚やプライドが大学にはあるのです。
ですから、そういう学府に相応しい一流の研究者になってくれそうな学生を募集しているのです。
- テーマに沿った研究ができること。
- 論文がちゃんと書けること。
- そのために、物事を論理的に考えて、それを説明できること。
そういう素質を見みたくて、二次試験の問題が作られています。
「作業が進むか」よりも「研究が進むか」を重視
もちろん、研究には速さも正確さも必要です。しかし、これは一次試験(センター試験)で試されています。わざわざ二次試験でも試す必要はありません。
それ以前に、速さや正確さの問題は、作業の問題とも言えます。研究を進める上で、作業の量や効率の問題は、だいたいなんとかなるものです。研究室として、チームや組織として解決ができます。みんなで苦手な所を補い合って、それぞれができることを協力し合えば解決できます。
ところが、着想や論理的な思考力は、ひたすら個人の資質の問題です。資質が無ければ研究が進みません。研究のテーマも決まりません。いくらチームでも、他人の頭の中身を手伝うことはできません。
そういうわけで、二次試験は、研究が進むことに関係しそうな個人の能力が試されるべきです。
そのような発想で問題が作られています。
入試問題は大学からのメッセージ
このようなことを考えれば、二次試験の問題を通じて、大学側が欲しい人材像をうっすらと読み取る事ができます。
「実直にひたすら実験に打ち込める人材」が欲しければ、場合分けや計算が泥臭くて時間がかかるような問題が出題されるでしょう。
「知識量よりも発想力や論理的思考力を重視する」のであれば、考えさせる問題やセンスの要求される難問を出題して来るでしょう。
例えば、名古屋大学の数学は、問題冊子に公式集が載っていることで有名です。名古屋大学にとって、公式を正確に暗記していることは重要ではありません。それよりも論理展開の中で公式を正しく使いこなすことや、数学的なセンスがあることの方が重要というわけです。センスのある学生、またはセンスが磨かれるレベルまでに数学力を鍛えぬいた学生に来て欲しい、という大学からのメッセージです。つまり、それ相応の難問が出題されるということです。ノーベル賞を連発している大学らしい出題と言えます。
それでは逆に、センター試験と同じような問題を二次試験でも出してくるような大学は、どういう学生を集めているのでしょうか。少なくとも研究者としての資質はあまり問われていません。おそらく、資格を取れそうな人材、良い企業に就職できそうな人材を集めている、ということになります。就職を有利にするため、あるいは職業訓練のために大学に行くのであれば、そういう出題をする大学を志望した方が良いと思います。
あとがき
司法試験では六法全書(法律が載っている分厚い本)の持ち込みを許しています。法曹の人間になるためには、法律を正確に暗記していることよりも、法律を正しく解釈して論ずるセンス(リーガルマインド)の方が重要だからです。
コンピュータが人間の記憶力を助けてくれるようになりました。計算や情報処理もコンピューターが速く大量にやってくれます。ますます人間は知識を使いこなす能力、論理的に考えを積み重ねる能力、つまりセンスを磨くことが重要になってきました。
すでに名古屋大学の数学の試験では公式集が配られています。今後は、例えば、英語や国語の試験では辞書の持込が可能になる、なんてことが増えて来るでしょう。もっともっと時代が進めば、入試にパソコンの持ち込みすら許可される日が来るかもしれません。
パソコンと言えば、先週も小学生の男の子がプログラミング教室に入会しました。さっそく今週から教室にやってきました。入会を機にパパから新しいパソコンを買ってもらったそうです。そのセットアップを手伝いました。
新しいパソコンなんて、羨ましい限りです。私もそろそろ新しいパソコンが欲しいです。ブログを書いたり、プログラミング環境の開発をしたりするのに、もっと画面が広いくてキレイなノートパソコンが欲しいです。だれか買ってくれないかなぁ。
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