時事用語を解説しているイメージ写真

塾長です。

中学3年生の学年末テストの対策も大詰めです。テスト週間になると「時事用語の解説」を配っています。定期テストで時事問題を出す学校があるからです。ただ今回は配るのがちょっと早かったので、ニュースに少しだけ差分が出てきました。そこで今回は2つほど差分の話題をピックアップしておきます。天文ネタと国際ネタです。

ちなみに学校の先生は、なぜか科学ニュースや国際ニュースについて時事問題をあまり出題しません。だから今回は印刷し直すほどではないと考え、このブログに載せるにとどめます。なお、天文ニュースは塾長の趣味で肉厚の解説です。

※新聞を読むうえで理解しておくべきキーワードを赤表示にしてあります

オリオン座のベテルギウスが暗い!もうすぐ爆発!?

やっぱり宇宙ネタから話すとテンション上がります。

いま、オリオン座にある1等星ベテルギウス」が変です。2019年10月頃から暗くなり始め、1月の時点で明るさが2.5分の1にまで減少してしまいました。つまり、明るさが1等級もダウンして、ほとんど2等星の明るさになっています。パッと見るとオリオン座の形が変わったのかと思うほど、変な違和感を感じます。

オリオン座とは?

冬の星座と言えばオリオン座ですよね。具体的には、いつ頃、どこに見えるのでしょうか。
小学4年生と中学3年生の理科で習います。国立天文台のホームページで1月の星空を見てみましょう。オリオン座を見つけてみてください。


出典: 2020年1月中旬 20時頃の東京 国立天文台(NAOJ)より

ベテルギウスとは

オリオン座には2つの1等星があります。赤いベテルギウスと、青白いリゲルです。オリオン座が南に見える時、三ツ星の左上にある方がベテルギウスです。赤いので色ですぐに解ります。

そしてオリオン座の左には「冬の大三角」が見えます。1等星でできた逆さの正三角形です。オリオン座のベテルギウス、小犬座のプロキオン、そしておおいぬ座のシリウスです。

このように、ベテルギウスは冬の星空を形どる重要な星なんです。

存在感の無さも100年に1度なら目立つ

その重要な星が暗くなったので、今見ると妙なアンバランスを感じます。ベテルギウスの存在感が無さすぎて、見慣れた形が崩れています。

まず、オリオンの右肩(左側)がスカスカです。勇ましく棍棒を振り上げているはずの肩が弱弱しいです。脱臼でもしたのでしょうか。ギリシャ神話では、オリオン座は夏のサソリ座から逃げ回っている設定ですが、そんなことでは、さそり座に追いつかれてしまいますよ。もっとも、地球温暖化で、冬は夏に追いつかれるのかもしれませんが。

そして、冬の大三角が見つかりません。「え、どこ?」という印象です。リゲルの方が目立つので、ベテルギウスをすっ飛ばしてリゲルへ視線が行ってしまい、キレイな三角形が結べません。

ベテルギウスが暗くなる周期は、なんでも5.9年と425日の2種類があって、両者のタイミングが一致すると、めちゃ暗くなるのだそうです。だいたい100年に1度くらいでそうなり、どうやら今回が観測史上もっとも暗いらしいです。

地味な現象ですが珍しいので、ぜひ見ておきましょう。

巨大で不安定。爆発が近い!?

実際のベテルギウスの大きさは、なんと太陽の1000倍!
もしもベテルギウスが太陽系の中心にあったら木星公転軌道の近くまで飲みこまれてしまいます。

それほど大きな星とは言え、大きな天体望遠鏡で見たとしても普通は点にしか見えません。ベテルギウスまでの距離は500光年。途方もなく遠いからです。

それでも世界最大で視力4000のアルマ望遠鏡なら、その姿をとらえることができます。


出典: 2018/1/23 アルマ望遠鏡がとらえたベテルギウス 国立天文台(NAOJ)より

ベテルギウスの姿は赤く、いびつです。もうすぐ大爆発すると言われています。そのため不安定で、星の明るさだけでなく、形さえも変わりやすいです。

もしもベテルギウスが爆発したら、遠い地球でさえ、オゾン層の一部が破壊されるそうです。そしてブラックホールができるだろうとも言われています。ちなみに、ブラックホールができるような星の大爆発のことを「超新星爆発(ちょうしんせいばくはつ)」と呼びます。太陽よりずっと巨大な星は、最後に超新星爆発を起こすそうです。

ベテルギウスが爆発したら満月の100倍も明るく輝くそうです。それだけ明るければ夜でも普通に歩けますね。そんな状態が3か月くらい続くそうですよ。しかし、その後は数年かけて暗くなっていき、遂には見えなくなってしまうそうです。

爆発するのは、1年後とも10万年後とも言われています。なにしろ宇宙規模の現象なので、アバウトさも宇宙規模です。

超新星爆発で地球上の生物が大量絶滅!?

ちなみに超新星爆発が起こると、その星の自転軸から強烈な放射線ビーム(ガンマ線バースト)が発射されることが多いです。もしもそのビームが地球に向いていれば、地球上の生命の多くが絶滅してしまいます。ベテルギウスは星の形や温度分布がでこぼこしているので、星が自転する様子が直接観測されています。その観測の結果、ベテルギウスの自転軸は、地球には向いていないことが分かりました。一安心です。

ちなみに超新星爆発の放射線で、地球上の生命が大量に絶滅したことが、これまでに何度かあったようです。生命誕生から40億年ともなれば、進化の歴史に宇宙が関係してくるのですね。

さて、次のニュースです。

イラン政府がウクライナ航空機を人的ミスで撃墜したことを認めた

とても悲しいニュースです。しかもニュースの内容が二転三転したために、混乱した人も多かったでしょう。実際に私も、生徒に時事用語の解説を配った後でも話が変わったので、ニュースを見るたびに混乱しました。

どんなミスだったの?

当時のイラン軍は臨戦態勢でした。いつでも攻撃できるような緊張した状況のとき、たまたま飛行していた民間の旅客機を、敵機と間違えて攻撃してしまったのだそうです。勘違いだったそうです。

犠牲者は民間人

ウクライナ政府の発表によると、乗客167人、乗員9人が搭乗していて、全員が亡くなってしまったそうです。82人がイラン人、63人がカナダ人、ウクライナ人11人、スウェーデン人10人、ドイツ人とイギリス人が各3人だったそうです。

犠牲者の中でカナダ人が多かったため、カナダ首相の声明もニュースで放送されたいたのです。

イランは誰に対して臨戦態勢だったの?

イランはアメリカからの攻撃を想定していました。両国は何十年も国交を断絶していて緊張状態です。イランの隣国のイラクには、アメリカ軍が駐留してイラン軍の攻撃に備えています。実際、今年に入ってからも攻撃しあっていました。ここ2週間だけで次のような緊張状態が連続しています。

  • 1/3 米軍はドローン兵器でイラン司令官のソレイマニ氏を含む計10人を殺害
  • 1/4 米ドナルド・トランプ大統領は、攻撃の正統性を発表、
    イラン国内のアメリカ人に退去命令
  • 1/7 イラクの米軍駐留基地に、イラン側から十数発の弾道ミサイルが着弾
    イランはソレイマニ殺害への報復攻撃だと発表
  • 1/8 ウクライナ国際航空の旅客機がイランの首都テヘランで墜落
  • 1/11 イラン政府はミスによる誤爆と発表

そもそも何で対立しているの?

イランはもともとアメリカと親しい国でした。しかしアメリカがイランの原油について利権を主張し過ぎたとしてイラン国民が反発、1979年に革命を起こし反米国家になってしまいました(イラン・イスラム革命)。それ以来、イランとアメリカは仲が悪いままです。一触即発の緊張状態が何十年も続いています。

穏健派だったオバマ政権の時代に関係が少しだけ改善しましたが、強硬派のトランプ政権になると一転して悪化する方向へ逆戻りしました。

日本との関係は?

日本とイランは良好な外交関係にあり、その関係は100年近く続いています。石油の約85%を中東から輸入する日本にとって、むしろイランとの外交は大切です。

ところがアメリカは、日本のようにイランと外交関係にある国々に対しても、「イランから石油を買うなら、アメリカが経済制裁するぞ!」と脅してきました。

そのたびに石油の値段が高騰したり、株価が下がるなど、日本にとって良いことはありません。

アメリカがイランと貿易する関係諸国に対してまで経済制裁の手を広げるのは、いくら何でもやり過ぎということで、アメリカは仕方なく「期限付きで制裁対象から除外」するという姿勢を維持しています。とても不安定な状態です。

昨年6/13に安倍首相はイランを訪問し、アメリカとイランの仲裁を試みました。しかし両者の仲はそうそう簡単には良くなりません。日本とイランの友好関係を確かめるに留まりました。

ボーイング737MAXとは関係なかった

撃墜されたウクライナ航空機の機体は「ボーイング737」という機体でした。そして、最初のニュースでは、軍やテロとは関係なく「技術的な問題で墜落した事故」だと報道されました。これがとても紛らわしかったのです。

というのは、昨年12月に米ボーイング社は「ボーイング737MAX」という機体の生産中止を報道したばかりだったからです。ボーイング737MAXは、墜落事故が多くて生産中止に追い込まれたのです。

多くの人が「またボーイング737MAXの墜落か」と勘違いしたことでしょう。私も勘違いしました。

機種名が紛らわしいのです。正確には、誤爆されたウクライナ航空の機種は「ボーイング737―800NG型機」でした。これは安定飛行をする名機です。生産中止になったのは「ボーイング737MAX型機」です。名前は似ていますが、まったく評判の違う機体でした。

結局、今回撃墜された飛行機は、ボーイング737MAXの欠陥の話しとは何も関係がありませんでした。

新聞やニュースを見ても意味が分からない

正直に言って、新聞やテレビのニュースは、読んでも聞いても、サッパリ意味が分からないですよね。訳も分からないまま「ふーん」と聞き流している場合が多いです。

情報が断片的だからです。

ニュースで報道される情報は、昨日までのニュースとの「差分」だけです。情報が必要最低限に切り取られ過ぎていて、前後が見えません。いきなり差分だけ言われても意味が分からないんです。例えば

カルロス・ゴーン被告はブラジルの有力紙の取材で 「日本人はのろまで、準備と計画、理解にたくさんの時間をかける必要がある」と語った

などというニュースを見たところで、

「はぁ?何のこと??」

ってなります。なぜゴーン氏なのか、なぜ「のろま」と言っただけでニュースになるのか。その日のニュースを見ただけでは、理由も意味がサッパリです。上で解説したニュースもそうでしょう。

イラン政府は1/11、ウクライナ航空機を人的ミスで誤って撃墜したことを認めました。

これも難しすぎてわかりません。なぜイラン政府なのか。「認めた」とは、どういうことか。ニュースではカナダ大統領のコメントが出て来て、さらに混乱したでしょう。このニュースの背景にある、イラン、イラク、アメリカの関係の説明があった上で、さらに誤爆により一方的に巻き込まれた人たちとの関係が説明されないと、ニュースの意味がサッパリ分からないと思います。

まだ知識の乏しい中学生や高校生がニュースを理解するのは、もっとハードルが上がるでしょう。

ですから教室では、ニュースのに出て来るキーワードに対して、事の発端や背景、言葉本来の意味などを解説しているわけです。新聞が読めないのは漢字や用語が多いからではありません。背景の説明が省略されているために、そもそも文脈が分からないから読めないのです。

それに、新聞やテレビのニュースを見ても無関心な状態は、人としてどうかと思います。意味が分かれば関心の持ちようが出てきます。

予想問題は学校から嫌われる

ちなみに、時事問題の「予想」は学校の先生に、めちゃくちゃ嫌われます。

これは以前の記事「時事問題の対策は、問題を予想するのではなく用語を学習する」(2019/5/29)でも書きました。

そりゃそうですよね。学校の先生は生徒に新聞を読んで欲しいから時事問題を出すのです。予想問題に飛びついて、中身のない暗記だけをされては先生の教育方針が台無しです。ちなみに学校の先生でなくても「本当の教育」を語る人たちから嫌われます。教育って熱いですから。

何より、塾が嫌われるならまだしも、生徒が先生から嫌われたらかわいそうでしょう。万が一にも塾の配っている「ズバリ予想」みたいなプリントが、学校の先生に見つかってしまったら目も当てれません。

塾から時事対策のプリントを配る時には、生徒が安心して学校に持っていけるような物にしておくべきだと思います。

 


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