1メートルの長さが分からいない

塾長です。

私が小中学生のころ、学習塾に通うのは、ほんとうに一部のご家庭だけでした。
しかし今では学習塾へ通う方が普通です。

それでは、質問です。
みなさんはどう思いますか?

みんなが塾に通うので、みんな勉強がよくできる。

ホントかウソか?

今回は完全に随筆スタイルで書きます。
つれづれなるままに書いて、特にまとめないことにします。

現状は一部でこうなってます、というお話です。

トロフィーばかりで実力がない子供たち

とある小学6年生が言いました。

「連立方程式が解けます。因数分解の計算もできます。くも〇で習いました。」

それスゴイと思いつつ、念のために小6算数の文章問題を解かせてみました。
意外なことに、まったく解くことができませんでした。

また別の小学6年生が言いました。

「英検2級を持ってます。英語が得意です。」

そこで英検3級レベルの英作文をさせてみました。
意外なことに、語順も文法もめちゃくちゃでした。

新学期になると、こういう生徒を毎年のように見かけます。

立派なトロフィーをお持ちです。
それで実力があるのかと思ったら、そうでもない。
そういう子供たちがいます。

これはいったい、どういうことでしょうか?

勉強と現実世界の対応がとれていない

上の事例で挙げたような子供たちは、例えば次のような問いに答えることができません。

  • 1mの長さはどれくらい?
  • 30度の角度はどれくらい?
  • 今いる場所から50m先の壁まで行って戻ってきました。何m走りましたか?
  • she と girl と woman の意味の違いは?
  • go to と visit の意味の違いは?
  • these books も many books も「たくさんの本」と訳してしまう

言葉と現実世界との対応が取れていません。

こうなる原因は2つ考えられます。

  • 言葉の意味の微妙な違いに無頓着(勉強の姿勢が育まれていない)
  • 言葉に対応する現実世界の経験が足りない

そして最近、というか、ここ10年ほどずっと心配しているのが、後者です。
子供たちの「経験」。

見たことが無いから分からない。
やったことが無いから分からない。

そのような子供たちが多い印象です。

暗記する前に経験しよう!

少なくとも初等教育(義務教育)までは、体を動かすことと頭を使うことに、それほど大きな差はありません。
勉強ばかりでは伸び悩みますし、遊んでばかりでも頭の中が整理されません。

例えば、1mの長さが分からなければ、実際に1mの大きさを見て経験しましょう。

ちなみにヒーローズの机は幅が80cmです。
肩幅より少し広めに両手を開いて、ジェスチャーで見せたりします。
自分の身長を言えるお子さんなら、そこから想像させても良いでしょう。

経験不足なら経験させる。
経験と言葉や記号の対応が取れていないなら、対応させてあげる。

このように、義務教育の間は、1つ勉強したら、それに応じた経験や疑似体験をする、というのが理想です。

学年が低いほどリアルな体験の比重が大きく、学年が進むほど疑似体験やたとえ話でも補足できるようになるでしょう。

数学の文字式は、かなり抽象的な数の性質です。
文字式の計算を覚える前に、具体的な数の性質をたくさん経験しておかなければなりません。
そうでなければ、文字式の計算はできても、文章題ができないでしょう。

そして数も抽象的な概念です。
抽象的な数の計算を覚える前に、数に対応する具体的なものの数量や個数の計測を、たくさん経験しておかなければなりません。
そうでなければ、計算問題はできても、やはり文章題ができないでしょう。

英単語を覚えるなら、その意味の物や現象について、実物や写真、動画などを見てみましょう。

少し前まではピクチャーディクショナリーが良いと言われていましたが、今はグーグルの写真検索がおすすめです。
形容詞のような形のないイメージの意味を覚えるのにも使えます。

綺麗なノートは経験不足の始まり

特に理系科目では、ノートに図や表をさっと描けないお子さんは、伸び悩むことが多いです。

いざ描かせてみると、ものすごく綺麗に描こうとして力んでしまい、消しゴムで消しては書き直してばかり。
いっこうに図ができません。
普段から図を描く習慣がないので「問題を解くのに必要最低限の図」を描くことができません。

暗算ばかりで途中式を全く書かない子も、中1から伸び悩みます。
暗算で答えが出せないと、それ以上に複雑なことをやろうとしなくなる、そういう状態のお子さんをよく見かけます。

あるいは、ひっ算をして計算結果が出たら消しゴムで消してしまいます。
ノートに答えをきれいに羅列することが目的になってしまい、勉強が目的になっていません。
おそらく、見直しらしい見直しをした経験に乏しく、考えの途中過程に価値を見出す習慣が身についていないのでしょう。

勉強は出版作業ではありませんから、ノートをきれいに書いても仕方がありません。

手を動かして、どんどん図や表を描かせるのが良いです。
教科書や参考書で説明用の図や表が出てきたら、自分でもそれを描いてみることです。

穴埋め問題を用意しなければ勉強できない

「主体的な学び」というものが教育改革の中でうたわれました。どうやら

「パソコンでグーグル検索しながらディスカッションして、みんなの意見をまとめてレポートを書くこと」

あるいは

「ディスカッションの記録やその文脈に合うように、関係する資料や文章を正しく選択させること」

などを訓練させる形式に落ち着いてきているようです。

もちろん、それが悪いと言っているのではありません。
授業の形式だけを真似しても主体的な学びにはならない、ということです。

形式は学びを助けますが、学びの本質になることはありません。
それを生徒に伝わるように教えることが先生の腕の見せ所なのでしょう。

先日、

関東地方の県名が覚えられません。覚えるための問題はありますか?

と聞いてきた生徒がいました。私は、

こんな風に、関東地方の形と県境を適当にさっと描いてごらん。
このくらい超テキトウな図でいいんだよ。これくらいの図なら、自分でノートに直ぐ描けるでしょう。
そこに思い出せる県名を記入していってごらん。
こんな下手な図だとしても、暗記するには十分だよね。
2~3回やれば、すぐに覚えれるよ。

と教えました。

いちいち細かい所まで用意されなければ次の作業ができない・・・

そんな状態をずっと続けているようでは、たとえ勉強しても賢い人間にはなれません。
勉強でも伸び悩んでしまうでしょう。

教授、宿題は無いですか?

などと残念な発言をしてしまうような、恥ずかしい大学生には成らないで欲しいものです。
もしも生徒が

プリントが無ければ勉強できない

という状態になっていたら、ある意味で塾の弊害なのかもしれません。

私は塾側の人間として、「勉強」=「プリントを解く」という形骸化が生徒の中で発生していないか、注意しています。

ただし保護者様から

宿題プリントをたくさん出してください

と言われてしまうと台無しです。
これは日本に蔓延する、く〇んスタイルの弊害なのかもしれませんが・・・

「プリントの枚数が指導ノルマ」になっているような教室があるようです。

私には、ちょっと理解に苦しみます。
わざわざ伸び悩む仕組みを一生懸命構築しようとしているのですから。
そういう悪い宗教があるのでしょうか?

そういう塾からうちへ転塾して来てしまい、説明してもご理解いただけない場合は、うちの塾とは価値観が合わないかもしれません。

「言われたことしかやらない作業人間」になり下がるような指導を、私は教育だとは思っていませんから。

オンライン授業と対面授業の使い分け

とはいえ、義務教育は「全てが基礎」です。
たとえ「すべて受け身の丸暗記」で学んだとしても、ちゃんと正確に暗記できたのであれば、それなりに勉強にはなっています。

主体的な学びは、学年が上がれば上がるほど重要になってきます。
義務教育よりは、むしろ高等教育でうるさく見ていく必要があるでしょう。

先日、とある大学の先生から、こんなお話を伺いました。

コロナ渦でオンライン授業が多くなりました。
とはいえ、実験や実習は大学まで来てリアル授業を受けれるようにしています。
もちろん色々な事情があるので、リアル授業を受けなくても単位は取れるようにしています。

すると、ほとんどの学生が実験や実習に参加しなくなってしまいました。
動画を見てレポートを書いて単位がもらえるのなら、わざわざ大学まで来たくはないと。

大学としては実体験からしか学べないことがあるので、社会に出る前に、できるだけ多くの経験ができる場を用意しているのですが・・・。

どうやったら実験や実習に来てもらえるのか、というのが悩みです。

今までのコロナ対応では、

「とにかくオンライン化」

を準備してきました。
しかし、それらがひと段落すると、結局のところ、教育の本質的な課題のところで、また悩むようになります。

今後はオンライン授業と対面授業のベストな組み合わせを模索していくことになるのでしょう。

それと並行して、授業の形式や学ぶ環境がどうであれ、

「リアルな経験」と「頭の中の知識」の対応が取れなければ、

応用も主体的な学びも何も、あったもんじゃありません。

 


進学実績

卒塾生(進路が確定するまで在籍していた生徒)が入学した学校の一覧です。
ちなみに合格実績だけであれば更に多岐・多数にわたります。生徒が入学しなかった学校名は公開しておりません。

国公立大学

名古屋大学、千葉大学、滋賀大学、愛知県立大学、鹿児島大学

私立大学

中央大学、南山大学、名城大学、中京大学、中部大学、愛知淑徳大学、椙山女学園大学、愛知大学、愛知学院大学、愛知東邦大学、同朋大学、帝京大学、藤田保健衛生大学、日本福祉大学

公立高校

菊里高校、名東高校、昭和高校、松陰高校、天白高校、名古屋西高校、熱田高校、緑高校、日進西高校、豊明高校、東郷高校、山田高校、鳴海高校、三好高校、惟信高校、日進高校、守山高校、愛知総合工科高校、愛知商業高校、名古屋商業高校、若宮商業高校、名古屋市工芸高校、桜台高校、名南工業高校

私立高校

中京大中京高校、愛工大名電高校、星城高校、東邦高校、桜花学園高校、東海学園高校、名経高蔵高校、栄徳高校、名古屋女子高校、中部第一高校、名古屋大谷高校、至学館高校、聖カピタニオ高校、享栄高校、菊華高校、黎明高校、愛知みずほ高校、豊田大谷高校、杜若高校、大同高校、愛産大工業高校、愛知工業高校、名古屋工業高校、黎明高校、岡崎城西高校、大垣日大高校

(番外編)学年1位または成績優秀者を輩出した高校

天白高校、日進西高校、愛工大名電高校、名古屋大谷高校

※ 成績優秀者・・・成績が学年トップクラスで、なおかつ卒業生代表などに選ばれた生徒

 


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教室の様子(360度カメラ) http://urx.blue/HCgL