塾長です。

週末は趣味の天体観測に出かけました。

天体観測といえば、小学4年生は秋と冬に学び、小学6年生は夏に学びました。
中学3年生はこれから学びますね。

とはいえ、名古屋の空は夜でも明るくて星が見えません。
だから塾長が代わりに見てきて写真を撮ってきます!

冬の星座といえばオリオン座

冬の星座と言えばオリオン座ですね。理科の教科書にも載ってます。

塾長が最初に覚えた星座も、おそらくオリオン座だったと思います。

冬の夜空で南方面を仰げば、等間隔に3つ並んだ2等星が目立つでしょう。
文字通り「三ツ星」と呼ばれていて、その近くがオリオン座の星々です。

オリオン座の「オリオン」とはギリシャ神話に出てくる勇者の名前です。
オリオン座は彼の姿をしていて、三ツ星は胴体の真ん中くらい、腰またはベルトの部分に相当します。

三ツ星の左上に赤く光る1等星がベテルギウスです。オリオン自身の右肩にあたります。
三ツ星の右下に青白く光る1等星はリゲルです。オリオン自身の左足にあたります。

1つの星座の中に1等星が2つもあり、2等星が5つもある。
こんなに派手な星座は他にないでしょう。

そして実は、三ツ星の下にも、縦に小さく並んだ3つ星があります。
3等星なのですが、他の星に比べるとずっと暗く小さな星の並びに見えます。
これは「小三ツ星」と呼ばれていて、オリオンが腰に差している短剣と言われています。

この小三ツ星の真ん中の星が、実はオリオン大星雲です。
肉眼では星に見えますが、写真では赤く広がった星雲として写ります。

今回の観測ターゲットは、これらの三ツ星と小三ツ星です。
この両方が画面に入るように、撮影を計画しました。

釣り人たちの声が暖かい

オリオン座を撮影するなら、南の空が暗い場所に行く必要があります。

名古屋市内で天体の写真を撮影するのはとても難しいです。
街の明かりが空を照らすため、空そのものが明るく、暗い星の姿がかき消されてしまいます。
そして暗い星に合わせて撮影すると、空の方がすぐに露出オーバーして写真全体が真っ白になります。

だから空が暗い場所に行く必要があります。

10月に、紫金山・アトラス彗星を撮影するために南知多のとある港へ行ったのを思い出しました。
知多半島から南は海しかありません。だから南の空は暗く、星がよく見えます。
そこで、今回もそこへ行くことにしました。

21時に教室を閉めて帰宅し、急いで夕飯を食べ、荷物を車に詰め込みました。
現地に到着できたのは23時を過ぎたころです。

この港は夜釣りができるように夜間でも駐車場が空いています。
駐車場の海側のスペースは、すでに釣り人の車が何台も並んでいました。

彼らの邪魔にならないよう、私は駐車場の中央の空いているスペースを確保しました。

実は場所決めには時間を要しました。

海風が強い場所は、カメラがぶれてしまうのでよくありません。
釣り人の邪魔になってはいけません。
街灯の近くは空が明るいのでダメです。

本当に広い駐車場なので、何度も車を止めては確かめ、止めては確かめ、を繰り返し、ようやく場所を決めました。

天体観測は、暗い夜空を求めて山奥にも出かけます。
そういう時は、獣が怖いです。
動物の鳴き声をびくびく恐れながら天体観測をするので、とても心細いです。

それに比べると、今回のような場所は人がいて、遠くから話し声も少し聞こえてきます。
夜の海風は冷たいですが、風にのって聞こえてくる話し声には、むしろ人の温もりすら感じるものですよ。

自然には逆らえない

場所が決まったのは良いですが、空を見上げると、なんと雲だらけ。

狙いのオリオン座も雲の中でした。

そして反対の北側も雲だらけ。北極星が見えません。

星の写真を撮るためには、星の日周運動に合わせてカメラの向きも動かし続ける必要があります。
そういう機能を持った機械のことを「赤道儀」と呼びます。

星が北極星の方向を中心に東から西へ回転するように、赤道儀も北極星の方向を中心に東から西へカメラの向きを回転させます。
ですから、回転軸の先に北極星があるように、赤道儀の向きを調整しながら設置する必要があります。

北極星が見えなければ、それができないのです。

そんなわけで、撮影の準備すらできない状態です。
せっかく車を1時間も運転して来たのに、あまり良い状態とは言えません。

いくら雲を恨んでも、こればかりはどうにもなりません。

少しでも早く晴れて欲しいと、ただ祈るばかりです。

撮影チャンスを逃すな!

寒さから逃れるように、車の中に一時撤退。
30分ほど仮眠をとり、雲が流れ去るのを待つことにしました・・・

・・・スマホのアラームが鳴りました。

車の外に出て空の状態を確認しました。

まだ雲が多いものの、北極星は見えていました。これなら赤道儀の設定ができます。

実は、赤道儀は買ったばかり。実戦で使うのは初めてです。
スマホで操作するのですが、慣れていないため試行錯誤しましたが、何とか設定できました。

しかしオリオン座はまだ雲の中です。

それから雲が過ぎ去るまで、車の中で暖を取ったり、散歩したり、夜食のパンをかじったり・・・

とにかく待ちました。
そしてついに、オリオン座の方向に晴れ間が広がりました。
時刻はすでに02:40を過ぎていました。

望遠レンズをオリオン座に向けました。
雲が多いので露出は短めの50秒にセット。その代わり何十枚も撮影します。

途中で小さな雲が何度か通り過ぎてしまい台無しになりましたが、そんな写真の選別は後回しです。
細かいことは気にせず、とにかく晴れている間に、できるだけたくさん撮影しました。

そして03:30頃になると、ふたたび広い雲がオリオン座に迫って来ました。

03:35 の撮影を最後に、撮影を終えました。
もうこれ以上撮影しても雲しか映りません。

機材を慎重に片付けている間、平行して、やる事がありました。
レンズのふたを閉じた状態で、同じく露出50秒の写真を何枚も撮影することです。

フタをして撮影したら、真っ黒な画面しか映らず、意味がないと思われるかもしれません。
しかし、実は真っ黒な中にも少しだけカメラの持つノイズが写ります。
このノイズ情報が、あとで画像処理をするときに必要なんです。

人工衛星が多い!

途中で何度か、撮影した写真をチェックしましたが、どの写真にも必ず人工衛星が写っていました。

上の写真は画像処理前の写真の一部を明るく強調表示したものです。
マルで囲んだ中に細い筋が何本か見えます。
たった露出50秒の間に、少なくとも7個の人工衛星が写り込んでいます。

近年、スターリンク衛星をはじめ、通信や測量などに用いる人工衛星が毎年2000個以上も打ち上げられています。

特に「天の赤道」あたりは人工衛星が多く回っています。
天の赤道とは、地球の赤道面を宇宙まで延長した方向のことです。

オリオン座は天の赤道にあるため、とくにたくさんの人工衛星が写ってしまうというわけです。

技術の進歩を感じた画像処理

自宅へ帰ったのは朝5:00近くでした。
11:00まで寝てから、名古屋市長選挙の投票へ行きました。

そして帰宅してから、パソコンでひたすら画像処理しました。
撮影した写真のうち、半分は雲でボツです。46枚を選んで画像処理をしました。

天体写真が普通の写真と違う点はいくつかありますが、もっとも大きな違いは、画像処理が必要だということでしょう。

宇宙空間の黒、明るい星、かすかに写る星雲・・・明るさが全くバラバラな被写体がすべて1枚の中にあるのです。
なにも画像処理をしなければ、こんな画像になってしまいます。

普通は、暗いものに合わせると、明るいものが白く飛んでしまいます。
逆に明るいものに合わせると、暗いものが姿を消してしまいます。

そこで、全てが程よく絵に収まるように、明るさの差を圧縮する処理をします。
またカラーバランスを整えたり、何枚も重ねてノイズを取りのぞいたりもします。

画像処理をした後の写真がこれです。

宇宙の黒と星の明るさ、星雲のあわい光が全て共存できるようになったと思います。
いかにも宇宙らしい写真になったと思いませんか?

同じ写真を何枚も撮って重ねることで、ノイズに埋もれていたかすかな星雲の姿も浮かび上がりました。

上半分に斜めに並んだ3つの星が、オリオン座の三ツ星です。

その三ツ星の左の星には、上と右に星雲があります。
上の星雲は「燃える木星雲」と呼ばれています。文字通り木が燃えているような姿です。
右の星雲は「馬頭星雲」と呼ばれています。馬の頭の形をした暗黒星雲が特徴です。

写真の右下は「オリオン大星雲」です。
オリオン大星雲を「火の鳥」という人もいて、火の鳥が翼を広げて飛んでいるようにも見えます。

実はこれが小三ツ星なのです。
小三ツ星のうち、上2つが実は星雲で、3つ目だけが星なのです。
肉眼で見ると、3つの星に見えますが、高感度なカメラで撮影すると、淡い星雲の姿が浮かび上がります。

これらの星雲以外にも、薄暗い星雲が全体的に漂っていることも分かります。
この領域はガスや塵が多く、星雲の中では新しい星々が誕生しつつあります。
多くの天文学者が注目している領域です。

ところで、この写真はオリオン座のどこでしょう?

上に三ツ星がありますから、これがオリオンの腰です。
つまりオリオンの腰下の一部の領域になります。
こんな感じの領域です。

オリオン座を見るときは、そこに多くの星雲があることを想像してみてください。
肉眼では見えませんが、高感度なデジタルカメラや電波望遠鏡では存在を確かめられます。

なお、オリオン大星雲は望遠鏡でもその姿を観察できます。
ただし人間の視力では色までは分かりません。

さて、
画像処理には色々な手順があるため、人によって結果が異なります。
例えばアメリカやヨーロッパの天体写真を見ると、ハッキリした色合いが好まれるように感じます。
それなら、こんな風に処理する方法もアリでしょう。

同じ写真ですが、明るさの違いを圧縮するときに、だれに合わせて圧縮するかでさじ加減が変わります。

このような画像処理ができるソフトウェアは特殊であるため、
ひと昔前まではプログラミングで自作するか、高価なものを購入するかしか手段がありませんでした。

しかし近年はフリーソフトのものから3万円くらいで購入できるものまで、複数のものが出回っています。
何年も前に有料ソフトを購入していましたが、久しぶりに使ってみたら上手く動きません。

そこで今回は Siril というフリーソフトを使うことにしました。
特殊な画像処理ソフトの多くは Windows用であることが多いのですが、Siril は Linux や Mac OS にも対応しています。
しかも既存の有料ソフトよりも高速に画像処理ができる、という優れものです。

きっと天才プログラマーが作ったのでしょう。
世界は広いですね。

塾長が使えるパソコンで最速なのは Linux マシンです。
開発の仕事もしているのですが、その開発用のパソコンが Linux だからです。
Linux でサクサク動く Siril は正に神アプリです。

メイド・イン・ジャパンは過去の栄光なのか

一昔前まで、天体観測は何もかも日本製が最高でした。
望遠鏡も、赤道儀も、カメラも、アマチュア天文家の道具は日本製で全て揃いました。
画像処理においても、デジタル現像や比較明合成は日本人が考案したアルゴリズムです。

しかし今回使った機材で日本製だったのはカメラだけ。
赤道儀も画像処理ソフトもパソコンも外国製でした。

最近よく目にする天体写真の多くは、外国製のカメラで撮影されたものがメジャーになってきました。

とくに中国製の台頭が目覚ましいです。
性能も機能も精度も使い勝手も、全く申し分ありません。
中国は世界の工場と呼ばれて久しいですが、今や科学技術も品質も一流です。

今や望遠鏡にも高機能なコンピューターが搭載されています。
自動制御があたりまえになりました。

これらの背景にあるのは技術のオープンソース化とその進化です。

赤道儀を制御する仕組みでは ASCOM というオープンな標準仕様が登場し、多くのメーカーが採用しています。
自動導入や赤道儀を制御するソフトウェアでは、Onestep というオープンソースプログラムが公開されています。

これらを組み込んだ赤道儀や小型コンピューターが登場し、小さな望遠鏡でも天文台のような装置を装備できるようになりました。
また古い赤道儀を自動導入装置付きの最新式マシンへグレードアップできる道も開けました。

天体観測に使う処理は科学技術計算ですから、ほとんどは学術的。
つまり特許無しの世界で多くのノウハウが実現されています。
世界には多くの天才がいて、無償で多くの技術が公開されていますし、フリーソフトも提供されています。

機械の仕組みも進化しています。

動力伝達にタイミングベルトを採用してバックラッシュによるガイドエラーを最小限に抑制し、ベアリングで回転をスムースにしながら耐荷重量を増やす。
これは昔からありましたが値段が安くなっています。
動力源のモーターはDCモーターとコンピューター制御の組み合わせで安価かつ省電力になりました。
さらに遊星歯車や波動歯車を組みあわせた全く新しい設計の機構まで登場しています。

いろいろな知恵が盛りだくさんです。

そして軽く丈夫で、しかも重い機材をぶん回せて、それでいて高性能。
そんな機材が出てきています。

天体観測というニッチな世界にも、集合知による技術の加速が起こっています。
もはや1社だけで技術を磨き上げる時代ではないのでしょう。
世界の潮流はオープンソースや集合知であり、個人や1組織ではとうてい追いつけないほど技術革新がスピードアップしているのです。

もしかしたらメイド・イン・ジャパンにこだわる価値観自体が、もう古いのかもしれません。
メイド・イン・ザ・ワールド。
これが、今後のあるべき価値観なのでしょう。

あとがき

教育という立場から天体観測技術を考えてみます。

上で述べたように、天体観測という視点でみても、衰退している日本の課題が透けて見えてしまい、少しさびしさも感じます。

日本の課題は、集合知という世界の潮流の中で、いかに存在感を出せるか、だと思います。

そう考えるとき、「オール5を目指す」という日本の教育は不利だと言わざるを得ないでしょう。
知識が無ければ考えることもできませんから、義務教育が詰め込みになるのは仕方ないと思います。

そうだとしても、やはり好きでもない科目を網羅的に暗記させるのは歪んでいると思います。
内申点のために我慢して勉強するのは、いくらなんでも遠回りをし過ぎです。

かつて塾長も大学受験のために勉強に励んだ時期がありました。
そうした理由は「もっと宇宙を見たい。もっと知りたい。」という欲求からでした。
内申点や評定はほとんど気にしたことがないし、親や先生に言われたから勉強したのではありません。

それでも、塾長の時代はとくに受験戦争と呼ばれていました。
宇宙や科学や数学を学ぶために、嫌いな科目でも好きだと自己暗示を強くかけて勉強したものです。
今になってみれば、その受験勉強には多くの無理があったように感じます。

あれから何度か教育改革が行われましたが、残念ながら詰め込み教育は加速してしまいました。
一方で、少子化が加速して全入時代が到来し、受験回避の流れが加速しています。
もやは受験は勉強する理由にはなりません。

受験勉強の「空洞化」が起こり始めています。

本当に高3生や浪人生が学ばなければならないことは、受験勉強の中のおそらく5割程度でしょうか。
他のことは大学に入ってから必要を感じたら学べばよいでしょうし、長い人生の中で、もっと後でも良かったように思います。

大学側も単位取得を厳しくしたり、卒論を免除したりと、就職予備校へと劣化してきています。

オール5やGPA何点というのではなく、得意なところから延ばし、できることを持ち寄って協力し合う。
教科書や必須単位の順番ではなく、できる所から取り組み、必要になったらものから学びを深める。
全員に同じ修行を課すのではなく、集合知で問題の解決を最優先する。

そのような教育の方が、社会全体としても物事の改善が速く進むと塾長は思います。

何の理由にしても「受験のための勉強」「内申点を付けるための勉強」「GPAを稼ぐための勉強」という教育体制を見直さざるを得ない時期に来ていると思います。

天体写真の撮影データ

撮影地: 愛知県知多郡南知多町
撮影時刻:2024/11/25(日) 02:40 頃 ~ 03:36 頃
露出: 38分20秒(50秒×46枚 コンポジット)
カメラ本体: Canon EOS 60Da(天体写真用カメラ) ISO3600 + IDAS LPS-P2フィルタを内蔵装着
望遠レンズ: SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM(絞り開放)
赤道儀: Sky‐Watcher Star Adventurer GTi
画僧処理ソフト: Siril Ver. 1.2.4

撮影現場の風景はスマートフォンで撮影しました。

写真はどれも任意にトリミングしています。

 


進学実績

卒塾生(進路が確定するまで在籍していた生徒)が入学した学校の一覧です。
ちなみに合格実績だけであれば更に多岐・多数にわたります。生徒が入学しなかった学校名は公開しておりません。

国公立大学

名古屋大学、千葉大学、滋賀大学、愛知県立大学、鹿児島大学

私立大学

中央大学、南山大学、名城大学、中京大学、中部大学、愛知淑徳大学、椙山女学園大学、愛知大学、愛知学院大学、愛知東邦大学、愛知工業大学、同朋大学、帝京大学、藤田保健衛生大学、日本福祉大学

公立高校

菊里高校、名東高校、昭和高校、松陰高校、天白高校、愛知教育大学附属高校、名古屋西高校、熱田高校、緑高校、日進西高校、豊明高校、東郷高校、山田高校、鳴海高校、三好高校、惟信高校、日進高校、守山高校、愛知総合工科高校、愛知商業高校、名古屋商業高校、若宮商業高校、名古屋市工芸高校、桜台高校、名南工業高校、菰野高校(三重)

私立高校

愛知高校、中京大中京高校、愛工大名電高校、星城高校、東邦高校、桜花学園高校、東海学園高校、名経高蔵高校、栄徳高校、名古屋女子高校、中部第一高校、名古屋大谷高校、至学館高校、聖カピタニオ高校、享栄高校、菊華高校、黎明高校、愛知みずほ高校、豊田大谷高校、杜若高校、大同高校、愛産大工業高校、愛知工業高校、名古屋工業高校、黎明高校、岡崎城西高校、大垣日大高校

(番外編)学年1位または成績優秀者を輩出した高校

天白高校、日進西高校、愛工大名電高校、名古屋大谷高校

※ 成績優秀者・・・成績が学年トップクラスで、なおかつ卒業生代表などに選ばれた生徒

 


名古屋市天白区の植田で塾を探すなら個別指導のヒーローズ!!

★ 直接のお問い合わせ ★
――――――――――――――――――――――
個別指導ヒーローズ 植田一本松校
〒468-0009
名古屋市天白区元植田1-202 金光ビル2F
TEL:052-893-9759
教室の様子(360度カメラ) http://urx.blue/HCgL