塾長です。
世間にはびこる「間違った常識」たち。論理的な思考でそれらをバッサリと切ってやりたいと、たまに思います。ですから今回は「やる気が出れば勉強ができる。」というウソをぶった切ります。流行りのスタイルで言うなら「やる気をぶっ壊す!」という感じでしょうか。
塾長です。
世間にはびこる「間違った常識」たち。論理的な思考でそれらをバッサリと切ってやりたいと、たまに思います。ですから今回は「やる気が出れば勉強ができる。」というウソをぶった切ります。流行りのスタイルで言うなら「やる気をぶっ壊す!」という感じでしょうか。
塾長です。
今回の定期テストの個表が返って来ています。
中2から通っている高校2年生が、ついに学年1位を達成しました。おめでとうございます!
ある中3男子が総合点で自己最高点をマークした一方、前回自己最高点だった中3女子は、前回ほどではないものの目標点+7点をマークしました。
また、詳細は伏せますが、数学が12点から67点にハイジャンプした生徒もいました。
これからスパイラル学習法で学んでいく新入生たちは、先輩たちの姿を見て、しっかり着いて来てください。
さて、生徒を指導していると「教育の間違った常識」というものに遭遇することがあります。例えば前回のブログ「できる子は、教科書に線を引かない、ノートをまとめない」もそうでした。教科書に線を引いたりノートをキレイにまとめた方が成績が上がりそうな気がします。しかし現実は反対で、テスト期間にそういう作業をしている生徒ほど点数が伸び悩むものです。
今回は「暗算」についてぶった切ります!
例えば、数学で次のような悩みがある場合。きっと、あることが原因です。いったい何だと思いますか?
算数や数学がいつから苦手になるのかは人によります。小学校5年生くらいから、あるいは中学1年生になってから。人それぞれですが、苦手になりやすい人の共通点は、およそ決まっています。それは、
という習慣です。こんな状態も同じです。
こうした習慣があると「算数」から「数学」へ発展しません。中学生になっても算数しかやっていないので、数学が苦手になってしまうのです。逆に言えば、その習慣を改善すれば数学を克服する道が開けます。
『いつまでも「算数」しかやっていない』と書きました。そもそも算数と数学は何が違うのでしょうか。
小学校までの算数は、主に、整数、小数、分数を使った「算術」について学びます。要は、目に見える物を数で表し、計算を通じて色々な視点で物の個数や量を測れるようにする訓練です。
基本的に、数には「個」「匹」「リットル」「円」などの単位が必ず付きます。具体的な「経験」を通じて「数」の基本概念を抽象化していく「過程」にいるからです。したがって教科書の構成は、
となっています。
例えば小学1年生の初期では、まだ「ペン1本」の1本と「パイナップル1個」の1個は、別のものだと認識しています。それを「合わせていくつ買いましたか?」という計算を経験させると、単位を外して抽象的に考えるようになります。つまり「ペン1本だろうがパイナップル1個だろうが、数が1であることに変わりはない!」と考えて「合わせて2つ」と答えられるわけです。
このように、
具体的な経験 → 整数、小数、分数への抽象化
を繰り返しながら学びます。とても大変な経験時間を要するので、小学校の算数では、これ以上の数の拡張をしません。ちなみに余談ですが、この抽象化に失敗すると、例えば「ウン、と合わせて、ペン・パイナップルが1つ」と答えてしまうわけです。
したがって、算数の世界では「数」と言えば、整数、小数、分数でしかなく、その範囲に限って加減乗除を学ぶだけです。そのため数の「性質」や「法則」の種類が少なく、計算が単純なだけに、暗算がし易いです。
中学生以降の数学は、数の概念に「負の数」「文字式」「多項式」「無理数」が仲間入りします。単位のないものばかりです。そして数と数を足したり掛けたりしたように、例えば、式と式を足したり掛けたりします。
このように、数と同じように計算できるものが学年と共に増えていきます。整数、小数、分数に限られていた算数の世界とは違い、数の概念がどんどん広がります。正に「数」の広がりを「学ぶ」ので「数学」と呼ぶわけです。それゆえ、何のどこが「数としての性質」なのかという「法則」や「定理」が重要になってきます。
したがって教科書の構成は、
となっています。例えば中1なら最初に「方程式」という単元で、定理を使って「移項する」「分母を払う」などの抽象的な計算練習をします。その後「方程式に利用」という単元で、買い物や速さを扱う具体的な問題を解きます。
定理を使った抽象的な訓練 → 具体的な問題にあてはめる
これは算数とは真逆の構成です。
したがって、式の変形(計算)には必ず定理(理由)が当てはまります。そして1行の式変形に複数の定理が複雑に当てはまることさえあります。逆に定理に当てはまらないた式変形は、たまたま数字があっていたとしても間違いです。これを放っておくと計算ミスが多発するようになります。
つまり、算数の計算に比べたら「なぜそうできるのか」の理由付けが複雑なんです。それゆえ計算が速いことよりも、論理的に正しいかどうかを確認する方が、よっぽど重要になってきます。むしろ暗算はミスを生むリスクでしかありません。
このように算数と数学は、まったく視点の異なる学問です。中学から学ぶ数学は「数の性質」に注目し、その性質をあてはめる対象を「負の数」や「式」にまで拡張していくわけです。
1つ1つの計算(式変形)には、それぞれ理由があります。その理由は教科書に「定理」や「法則」としてすべて書いてあります。数はそれほど多くありませんが、組み合わせて使ったり、直ぐに思いつけるようにする訓練が必要です。
そして、もしも計算が間違っていたら、その理由を必ず言えるようになっています。ですから数学では丁寧に「なぜ、どうして」と確認していくことが大切です。
そうやって注意深く計算していれば、自然と「途中の式を書いて確かる」という手順の繰り返しになるはずです。
逆に「なぜ、どうして」を確認せず、とにかく速く答えを出すことにこだわり過ぎると、計算の「理由」を無視することが多くなり、分からないことがどんどん増えてしまいます。そうすると、暗算でできるような単純な計算だけを好むようになり、新しい定理を取り入れた数の拡張ができません。
これが数学が苦手になる理由です。つまり、
暗算にこだわる → 理由を無視する/暗算ができる簡単な問題だけ好む → 数の拡張ができない → 数学が苦手になる
というメカニズムです。
数学の計算には全て理由がありますが、実際には、いちいち理由を確かめるのもしんどいです。そこで色々な計算パターンを網羅した問題集を何周かした方が、手っ取り早く計算力が身に着きます。これはアウトプット型の勉強なので、私も大部分は賛成です。ただし注意点があります。それは必ず次のことを守る、ということです。
この注意点を守らないと、ある日、全て忘れてしまいます。理由のないものは頭に残らないんです。
とにかく問題集を何百ページ、プリントを何十枚もこなし、数多くの暗算パターンを覚えてスピーディに計算をしていく生徒。一見、数学が得意のように見えますが、そうとも限りません。中には少しでも応用問題になると、ポキッと折れたようにできなくなってしまう生徒が出てきます。
もちろん本当に計算もできないほど苦手な生徒からしたら、こうした生徒は「数学できるじゃん」と思うかもしれません。しかし数学は「数」の概念を広げていく学問です。基本定理を自覚せず、パターン認識だけで計算ができるようになったとしても、それはいつか破綻してしまいます。
高校で「数学が苦手」というレベルはまちまちですが、それでも赤点や赤点ギリギリならば、かなり苦手と言えるでしょう。
「数学を何とかしたい!」
そう言って高校コースから入塾して来る生徒たちの多くは、実は数学が苦手なわけではありません。ちゃんと教えると、意外とすんなり理解してくれます。点数からは想像できないくらい早く解けるようになってしまいます。ほんと、そんな子が多いんです。ただ、
自分でどう勉強したらよいか分からない!
そう悩んで入塾して来るのです。
そういう生徒たちは、とにかく大量の問題集や大量のプリントで中学の数学を乗り切ってきたタイプの生徒たちばかりです。公式の暗記やパターンの認識はとても速いです。しかし教科書の読み方を知りません。
高校の数学では定理の数が増えます。しかし何十枚もプリントを出してくれるわけではありません。学校で配られる問題集の解説は簡素なものが多いです。それで、自分で何をしたら良いのか分からなくなってしまい、数学ができなくなってしまうのです。
例題のパターンごとに解き方を教えれば、直ぐ解けるようになってくれますが、それだけでは根本解決にはなりません。定期テストはしのげても、模試や入試では歯が立ちません。それじゃ不十分だという事を私は高校生の時に思い知らされています。浪人してから気が付かされました。
だから、そういう生徒たちに指導することだって同じです。
高校生になっても数学が得意な生徒は、むしろ、ゆっくり取り組みます。取り組む問題集も限られています。その代わり、1つ1つ、自分の頭で考え、手を動かし、納得するまでじっくり取り組むのです。
中学生でも、数学で80点以上をコンスタントに取ってくる生徒は、やっていることが意外に多くありません。忙しい部活と勉強を両立してしまう生徒は、取り組む内容を絞ることができています。その代わり、細かいところの隅々まで納得いくまで、じっくり取り組んでいます。
ノートを見ると、途中の計算式や、考えに必要な数直線や表などが、ちゃんと書かれています。
それでは計算が遅いかというと、そんなことはありません。定理が良く身に着いているので、無駄な計算が少なく、ミスも少なく、消しゴムをほとんど使わないので、結果的に暗算が得意な生徒よりも早く終わります。これは学年が上がるほど、そうなります。
ですから数学を始める中1の段階で、できるだけ暗算を捨てる方が良いのです。
何度も書きますが、数学は数の性質が大切です。計算の根拠となる「数の性質」を正しく使わないと答えも間違えます。つまり論理が正しくないと答えが間違うようになっています。論理を確かめるには途中の式を書くしかありません。暗算はミスを生むリスクでしかありません。
「最終的な答えさえ合っていればいいや」
という短絡的な考え方では、あっという間に限界がきてしまいます。
さて、ここであらためて問いたいのです。
人より速く計算できることが、そんなに大切な事ですか?
江戸時代は速く計算できる人が希少だったでしょう。昭和時代もそうだったかもしれません。でも今はどうでしょうか。電卓が100円ショップで買えたり、スマフォの電卓アプリが使えたりする時代です。人の手で計算するスピードに、それほど大きな価値はないと思います。
そしてコンピューターが安くなり、これから人工知能が身近になっていくことを考えれば、複雑な計算もコンピューターに任せればよくなるでしょう。
ですから、私たち人間のやることは、数の性質を良く知り、その性質を応用した命令をコンピューターに与えることです。電卓と競争するのではなく、コンピューターと会話できるような数学的な素養を養ってほしいと思います。
もちろん、数の性質や多様性を多く知っていて、その結果として計算が速くなるのは、積極的に良いことだと思います。教育的な意味として良いと思います。そしてコンピューターを使いこなせる、という意味でも良いことです。
数の概念を狭い範囲に限定して「計算の速さを競う」ような価値観は、間違っていると思います。「暗算が速い方が優れている」と子供たちに思わせることは、むしろその後の数の広がりを邪魔してしまう危険性があるので要注意です。
子供たちを電卓と競争させてはいけません。算数から数学へステップアップできるように、
「途中の式をちゃんと書きましょう。」
「計算に使った数の性質を確認しましょう」
と、正しく子供たちに教えるべきだと思います。
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