オンライン指導を受けている男の子とイラスト

塾長です。

コロナの第2波が話題ですが、再びオンライン授業になってもよいように準備だけはしておきましょう。
さて、ICTに関連して、

「教育にコンピューターを活用するか否か」

について少し考えたいと思います。
その身近な例、というか、素朴な疑問として

「宿題をやるのに電卓を使うのはOK?」

というのがあると思います。

何のために教育でコンピューターを使うのか

今年度から始まっている教育改革の目玉の1つが、

  • 学校や家庭で、どんどんコンピューターを使おう!
  • 学校のwifiやICTをめっちゃ充実させるぞ!
  • プログラミング教育を必須化するぞ!

というものです。

  • コンピューターの活用
  • 問題を解決する体験

これを早くから経験させていくそうです。
今や

コンピューターが当たり前!

という世界ですから、これは賛成です。
ただし、子供たちに

問題解決!

と言われても、何が

「問題」

なのかピンとこないでしょう。
もしも子供たちがこれを、

「宿題の問題」

のことだと思ったのならば、どう行動するでしょう。
それを「解決」するために(答えを得るために)、パソコンや電卓を束でしょう。

確かに問題の解決です。
コンピューターを活用です。
まぁ、なんとなく良いことのように感じます。

一方で、何となく「それは違う」ような気もします。

どっちなんでしょう?

「問題解決力」の「問題」って何?

そもそも教育改革の中で言われている

「問題解決力」

とは、何なんでしょうか?

もっと言えば、問題解決では何を

問題?

としているのでしょうか。
これは、さんざん議論されてきて、もう分かっています。
一般に

「答えが1つに決まらないような問題」

のことです。

例えば、人に楽しい時間を過ごしてもらおうと思ったら、その方法は何通りもありますよね。
学習塾で勉強法を指導する、分からない問題を解説する、という時のやり方も色々あります。
このように、人に何かを提案するような活動は、答えが1つではありません。

他には、みんなの意見をまとめて何かの結論を出すような活動もそうですね。
普通は人によって意見がバラバラですから、それが1つにまとまる事はありません。
それぞれの立場でそれぞれが正解なのですから、スタートから答えが多くある状態です。
できるだけ多くの人が「納得できるもの」を探していく活動になります。

もちろん、新型コロナウィルスに対応する活動も、まさに答えが1つに決まりませんね。
地域や年齢、経済状態や人々の感情などといった、様々な条件によって状態がどんどん変化してしまう問題です。
でも、誰にとって、いつ、どこで、どれくらい怖くて大変なのかは、状況によって変わってきます。
それぞれの状況によって、対応する方法や程度の組み合わせが無数に出てきます。
だれも正解が分からないからこそ「決断」するしかありません。

芸術家の作品だってそうですよね。
同じテーマで作品の創作に取り組んだとしても、人によって作品の姿かたちや表現方法はさまざまです。

まだまだあります。

答えが1つに決まらないような問題。

皆さんは、どんな問題を思いつきますか?

ヒントを出しましょう。
簡単です。

世の中の仕事の多くは、答えが1つでない問題を含んでいる!

ということです。

コンピューターに任せて良いことは何?

上で見たような、

答えが1つに決まらないような問題

を解決しようとするとき、コンピューターを活用することが多いです。
より速く、より正確に、より便利に、より省エネに、より安く、より多くの解決パターンを生み出せるからです。

そう考えると、

あれ、人間のやることが、無くなってしまうのかな?

という錯覚を起こしますが、実はそうではありません。

そもそも答えが1つに決まらない問題なのです。
コンピューターを使ったとしても、相変わらず答えは何通りか出てきてしまいます。
ですから、最後に答えを絞るのは、行動を決断するは、やっぱり人間の仕事なのです。

ただ、コンピューターを活用すれば、その「何通りかの答えにたどり着くまでが高速」なのです。

コンピューターは計算機です。
答えが1つに決まる問題を、多量に瞬時に解ける機械です。

ですから、これからは

  • 答えが1つに決まる問題 → コンピューターにやらせる
  • 答えが1つに決まらない問題 → 人間が考える

となるわけです。
そして、

答えが1つに決まらない問題

を解決するためには、あらかじめ

答えが1つに決まる問題

を大量に処理しておく必要があるのが普通です。
要するに、難しい問題は、事前準備の処理が大変なんです。

だからコンピューターを活用すれば、大変な事前準備が加速されるので、その分だけ解決も速くなるというわけです。

逆に、答えが1つに決まる問題の処理に、人間が1つ1つ手作業で対応していたら効率が悪いです。

答えが1つということは、答えの出し方も1つにパターン化できるということです。
そのようなパターン処理は、どんどんコンピューターに任せればよいのです。

それなら宿題に電卓を使っても良い?

このように考えてくると、計算ドリルの問題を電卓に解かせるのは正しいことのように思います。
だって、計算ドリルの問題には全て「正解」が1つずつあります。
それならばコンピューターの仕事ということになりそうです。

え、本当でしょうか?

でも、やっぱり

「なんか違う!」

と思いますよね。
その違和感はどこから来るのでしょうか。

これは

「電卓を使う」

というところに落とし穴があるわけです。

訓練期間は電卓を使ってはいけない

電卓を「正しく使いこなす」には、数の性質や計算のルールを熟知している必要があります。
例えば、こんな問題ならどうでしょう。

311+207×503

これを左から順に電卓にそのまま打ち込んでい行くと、その答えが

260554

と表示されます。
これは間違った答えです。
なぜ間違えたのでしょう。

それは、電卓は打った順番に計算を実行してしまうからです。
つまり、電卓が次の手順で計算してくれたので、間違った答えになりました。

311+207=518
518×503=260554

結果的に「足し算より掛け算を先にやる」という計算のルールを間違えたことになります。
計算のルールを知っていたら、次のように電卓を使ったでしょう。

207×503=104121
311+104121=104432

これなら正しいです。

つまり、数の性質や計算のルールを知らなければ、電卓すら正しく使えません。

ですから、小学生は、数の性質や計算のルールを熟知するまでは、ちゃんと手を動かして計算して欲しいですね。

計算の過程で「数の繰上り」や「足し算と掛け算の関係」などについて多くを経験します。
電卓を使わないで、まずは手で計算して、そうした「数の動き」を経験しましょう。

その訓練が終わるまでは、電卓を使ってはダメですよ。

訓練が終わったら使ってもよい

これが中学生なら、どうでしょうか。

例えば「資料の整理」で平均値を出す計算です。

115、 309、 221、 405、 323、・・・199、の平均値を求めなさい。

みたいな問題だったら、これは電卓を使ってもOKだと思います。

ここでの訓練内容が、「平均値」の意味と使い方を熟知することだからです。
足し算や割り算のことを練習する場でも、その段階でもないからです。

しかし、エクセルや統計ソフトを使って、平均値や中央値、最頻値などを全自動で計算してしまうのは反則になります。
それでは訓練にならないからです。

もちろん、この問題を高校生や大学生が処理するのであれば、どうぞソフトでもアプリでも使ってください。

もちろん、中学生でも

「とっくにマスターしてますけど。こんな問題、簡単すぎて時間の無駄ですけど。でも提出課題だから仕方がないんですけど。」

という人ならば、どうぞソフトでもアプリでもお使いくださいませ。
何といってもコンピューターは作業時間の短縮が得意なのですから。

その宿題がお子さんの能力の成長にとって、ただの無駄な作業でしかないなら、電卓やアプリを使ってもOKです。
内申点を逃さないための「仕方のない作業」であれば、むしろそのアリバイ工作にパソコンや電卓が大活躍です。

本番のテストや入試で点が取れる実力があるはずですから、だれも文句は言いません。

検算に使うなら、むしろOK!

学校によっては、ドリルや問題集の答えを生徒に配らないところがあります。
その場合は、宿題はただの「作業」でしかなく、時間の無駄です。
勉強にはなりません。

なぜなら、学校に提出して、それが戻ってきて答えが分かる頃には、何をやったか忘れてしまうからです。
「忘れない内に解き直す」から勉強になります。
やったことを事細かくずーと返却されて来るまで覚えていられるレベルなら、そもそも解けています。
というか、そんなお子さんは、もうドリルをやっているレベルじゃないでしょう。

ですから不幸にも答えが無いような宿題をする時には、自分で出した答えが正しいか「確かめるため」に、電卓をどんどん使いましょう。

もしも電卓の計算結果と、自分のひっ算の結果が違う時、

なぜだろう?

と考えて、教科書を見直して、正しい答えが出るように調べ直したり、計算し直したりすることは、むしろ良い勉強になります。

「自分の力で解いたものを確かめるため」

これに電卓やコンピューターを後から活用するのはOKです。

「苦手なことから逃げても良い」という新しい常識

さて、そうは言っても、

できないモノはできない
ダメなものはダメ

ということがあります。

どうしても苦手!

そういうものが、人にはあるものです。

  • どんなに計算練習しても、必ずランダムなミスが発生してしまう。
  • どんなに勉強しても、どうしても漢字のミスが出てしまう。

もしも、このような悩みを子供が抱えているとしたら、どう考えますか?
苦手な所で立ち止まり続けて、その先の可能性まで犠牲にしてよいのでしょうか?

私は、それは違うと思います。

ですから、これからの時代は、

「苦手なことを自分の代わりにやってもらうため」

にコンピューターを活用してよいと思います。
それが、認められるようになるだろうと予想しています。
もっとリアルに、子供たちの立場で言い換えれば、きっとこうなると思うのです。

  1. 苦手なことを何とかするため!
  2. 社会の変化に対応する方を優先するため!

そのためにコンピューターを活用する!

誰もがそんなふうに公言できる日が来ることを、塾長は望んでいます。

まず、自分たちの問題を解決するためにコンピューターを使って欲しいと思います。
自分の抱えている問題は、きっとどこかの誰かも抱えているはずです。
コンピューターを使って、その問題が解決できるなら、むしろその方法をどんどんシェアすべきでしょう。

コンピューターの導入と言われると、何やら「新しい取り組み」というイメージが先行します。
どうしても子供たちに「新しいこと」や「たいそうなこと」を学ばせる印象があるかもしれません。

しかし、そんなに身構えて考える必要もないでしょう。
もっとシンプルに考えて良いと思います。

子供の周りにいる大人の価値観

皆さんは次のうち、どちらの方により多くの時間をかけるべきだと思いますか?

  1. 得意なことを伸ばす
  2. 苦手なことを克服する

平成初期までは2番が美徳とされていたように感じます。

しかし現在は1番の方が圧倒的に大切になってきています。
なぜなら「集合知」による問題の解決が主流になって来たからです。

「集合知」とは、みんなで「得意」なことを出し合って、お互いの「苦手」を補い合って、共通の問題を素早く解決してしまうことです。
インターネットを通じて人々が知恵を出し合い、すばやく問題を解決できる時代になったので、これからはそれが加速します。
苦手なことを克服する労力があったら、得意なことを伸ばす方が、早く社会のためにもなります。

このように

「ITSを使いこなす」

ということは

「集合知の一員になる」

ということにもなります。

まず、このような時代の流れを子供たちの周りの大人たちが、どれくらい意識しているでしょうか?

もしも上の2番を美徳としている大人が多すぎると、その子は不幸だと思います。
完全に周りが時代錯誤をしているからです。

周囲の大人の価値観が子供に与える影響は、とても大きいと思います。

苦手なことを上手に扱うスキル

もちろん苦手なことを放っておいてよい、とは言っていません。
そうではなくて、昔と違って今は「苦手」を扱う方法が色々あるということです。
克服したり、回避したり、コンピューターに代行させたり。

親からしてみれば、子供に不得意なことがあれば、それだけで本当に心配になります。
ただでさえ、日本人は文化的に、褒めるよりもダメ出しの方を多く口にしてしまいます。
我が子の将来を案じて心配するのは分かりますが、ダメ出しばかりでは子供は嫌になってしまいます。

ところが、よく考えてみると、苦手から逃げるのは当たり前のことです。

社会に出れば、自分が「できること」を考えるよりも先に「できないこと」を自覚して、先にリスク管理をする方が10倍くらい大切になります。

  • 「できること」で能力を発揮して
  • 「できないこと」は抱え込まない

これは仕事の鉄則です。
そのために組織があり、報連相を徹底しているのでしょう。
コンピューターが発達する前から常識だったはずです。

だったら、子供たちに対しても、考え方を少し変えていきましょう。
私たち大人ができること。
これまでの少し古かった考え方、

  • 得意なことは伸ばしてあげたい。
  • 苦手なことは、できるだけ克服して欲しい。

これを少し変えていきましょう。

  • 得意なことは、伸ばしてあげたい。
  • 苦手なことは、うまく対応できるようにして欲しい

こんな風に、より現実的というか、より賢いというか、そんな方向性も有りだと思います。

子供たちの未来にコンピューターの活用は必須です。

「コンピューターを活用するのが当たり前」

という状況をつくっていかなければいけないのです。

そして、当たり前にコンピューターを活用するようになるのであれば、今よりも広い価値観で使われることも、当然考えていく必要があるでしょう。

子供たちの未来のために、コンピューターを活用しましょう。

 


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