Title_bizhub283

塾長です。

今回は教室の一場面です。
コロナ対策で学習塾も例外なく経営の一層の努力と工夫が求められています。

そして経費削減策の1つが、古い機械を長く使い続けること。

Windows10やLinux、ZOOMといったソフトウェアは、半自動でどんどん新しくなっていきます。
一方、機械は買った時のまま、更新ができずに取り残されていきます。

すると、ある日、

何かのソフトが新しくなると古い機械が動かなくなる。

そんな現象が、突然やってくるようになります。

古い機械を使い続けるのって意外と大変なんです。

そんなお話です。

コピー機の反乱

それは昨晩の事件でした。

教室には7年くらい運用しているコピー機があります。

コニカミノルタの bizhub 283 というマシンです。

KonicaMinolra_bizhub283

印刷の画質が良くて、コピー、プリンター、スキャナーとして重宝しています。
6年リース(という名のローン)を終えて、やっと少ない経費で運用できるようになりました。

ところが突然、これが全く言うことを聞かなくなりました。

――― あれ、スキャンができない!

いつも普通にできることができません。
これは大変です。

今日の仕事が終わりません。

というのは、生徒から授業の終わり際に、逆に宿題?をもらっていたからです。

「この数学の問題が難しすぎて解けません。先生、次の授業までに解いておいて。」

いつものノリで、軽い気持ちで請け負っていたのです。

――― やべー、宿題が終わらないかも・・・

遡ること約1時間前。

全ての授業が終わったので教室の電気を落とし、ちょっとコンビニまで散歩してビールを買ってから、ふたたび誰もいない教室に戻りました。

――― さてさて、今回はどんな問題かな。

という感じで、ビールを片手に鼻歌を歌いながら、その宿題に取り組みました。

「よし、できた。」

と、白いA4用紙に手書きで清書した模範解答を眺めました。

あとは、これをスキャンしてパソコンに取り込めば終わりです。
次のオンライン指導で生徒に見せられる状態にしておくためです。

他の教科ならパソコンで模範解答を直ぐ作れるのですが、数学はそうはいきません。
数式にグラフに図解などがあるからです。

数学だけはパソコンよりも手書きの方が早いです。

Jupyter Notebook や Nebo といったアプリがありますが、いまひとつです。
数式だろうが図表だろうが、手書き感覚で、いや手書き以上にスラスラ書けるエディタが欲しいと、いつも思います。
※ 実は開発中です(ないものは作る主義)

というわけで、コピー機に力作の?模範解答を載せました。
パソコンを指定してスキャンっと。

席に戻ってパソコンを確認します。何もありません・・・すると

「ピー」

コピー機からけたたましい警告音が。
見に行くと

「エラー57 データを送れません。」

という表示がありました。
念のため、もう一度やってみましたがダメでした。

何度やってもダメでした。

――― え、なんで? ルーターを変えたからかな。でも何も設定は変えてないぞ。

それらしい原因が思いつきません。

Windows10 アップデートでSMB1がバンされた時に苦労した思い出

いろいろ悩んでいると数年前の記憶が、ふと思い出されました。

Windows7 から Windows10 にアップグレードしたり、Windows10の大きなアップデートしたときに、確か、同じようなことがありました。

あの頃は、ネットワークディスク(NAS)が「急に使えなくなった」という症状が全国的に騒がれていました。
その原因は、Windowsとそれ以外のコンピューターがファイルを共有するためのルールが変わったからでした。

そのルール(プロトコルと言います)にはバージョンがあって、SMB1.0 が一番古く、SMB2.0、SMB3.0 とアップグレードしてきたようです。
そして古いネットワークディスクには SMB1.0 が使われていました。

数年前から Windows10 はバージョンアップで SMB1.0 を無効化するようになりました。
そのため windows10を再起動しただけで突然つながらなくなる、ということが頻発しました。

最も古い SMB1.0 はセキュリティ上の理由から、だんだん使われなくなってきたのでした。

そして教室のコピー機 コニカミノルタの bizhub 283 君も巻き込まれたのでした。
このコピー機も古い SMB1.0 を使っています。

残念ながら新しい SMB2.0 や SMB3.0 には対応していません。

コニカミノルタの複合機を使っている教室さんは要チェックです。

クライアントPCでのSMBv1無効化による弊社複合機への影響に関するご案内

というわけで、コピー機とWindowsパソコンの連携はあきらめました。

代わりに、開発用に置いてある Linuxパソコンと連携するようにしました。
Linux は優秀で、SMB1.0、SMB2.0、SMB3.0 のすべてに対応しています。
しかも自由に設定を選べます。

このLinuxパソコンを介してWindowsパソコンにスキャンしたデータを渡すようにしました。

こうして数年前の危機は回避された、という経験がありました。

ついにLinuxの世界でもSMB1がバンされる

そんな記憶を思い出しているうちに、もしかして、と思いついたことがありました。

教室のLinuxパソコンは、Ubuntu という種類の Linux を使っています。
最近、それをアップデードしたのです。
Ubuntu 19.04 から Ubuntu 20.04 にアップデートしました。

そこで Ubuntu 20.04 について samba(Windowsパソコンとファイルを共有するためのソフト)について調べました。

ありました。

確かに samba のバージョンが 4.11.6 に上がっていました。
そこで samba 4.11.6 のリリースメモで SMB1.0 を検索しました。

ありました。

バージョン 4.11.0 以降で SMB1.0 が削除されていました・・・Linuxも、もうダメみたいです。

windows10にしろLinuxにしろ、SMB1.0を無理やり設定することはできるでしょう。
しかしセキュリティ上の理由から使わないことが推奨されています。
無理に使うのは良くないです。

SMB1 is officially deprecated and might be removed step by step in the following years.

と明記されてますから・・・

そろそろあきらめ時です。

FTPサーバーで解決

そんなこんなをしていたら、すっかり真夜中になっていました。

――― 早くお家に帰りたい・・・

と思う一方で、ふと、コピー機のメニューで「FTP転送」というのがあったのを思い出しました。
確認すると、スキャンしたデータをパソコンに直接送る以外の方法がありました。

  1. メールで送る
  2. FTPで転送する

コニカミノルタのホームページにも、SMB1.0の代わりにこれらの手段で回避するように書いてありました。

というわけで、Ubuntu 20.04 にFTPサーバーを立てることに決めました。

それから更になんやかんやありまして、とにかく夜も更けてきたころ、すべての問題が解決したのでした。

手製の模範解答のスキャンが無事にできました。
生徒からの宿題がめでたく終わりました。

任務完了です!

解決の具体的な手順については、このブログの最後に備忘録としてメモしておきます。

まとめ

#先にまとめます。

学習塾に設置してある大きなコピー機。
学校やコンビニや会社にも置いてありますね。

あれ1台100万円近くするんですよ。

中古でメンテナンスのないリサイクル品なら10万円くらいです。
まぁ中古はすぐに壊れますけど。

だから、

ちょっとバージョンが古くなったくらいで、
ちょっと対応が不便になったくらいで、

気軽に捨てたり買い替えたりできるわけじゃないんです。

6年のリースが終わって、やっと印刷代だけで運用できるようになりました。
これから元を取るような感じです。

少しでも長く使いたいじゃないですか!

だから、手間と知恵をかければ、まだまだ延命できるということですね。
新調することに比べたら、かなりの経費削減です。

でも人から頼まれたら、やっぱりやりたくないなぁ。
1万円や2万円ではやってられないです。
時間がもったいない。

あと、疲れます。

コニカミノルタの複合機でスキャンしたデータをLinuxのFTPサーバーへ転送できるようにする方法

ここから先は、Linuxをコマンドで使える人だけお読みください。
あるいは、コンピューターに詳しくなりたい人は、読んでみて下さい。

なかなか同じ悩みを持つ人はいないかもしれませんが、もしもいたら参考にしてくださいませ。

構成

  • コニカミノルタの複合機 bizhub 283 1台
  • Ubuntu マシン(debian 系 Linux) 1台
  • windows10 パソコン 複数台

Ubuntu 20.04 の設定

今回は、FTPサーバーにアクセスするための専用ユーザーをUbuntu側に作ります。
bizhub 283 から同じユーザー名でUbuntu の FTPサーバーにログインして、ファイルを転送するようにします。

UbuntuパソコンのIPアドレスを固定化

あらかじめUbuntu パソコンのIPアドレスを固定IPアドレスにしておく必要があります。
事前に職場のルーターにログインして、Ubuntuパソコンの MACアドレスと使いたいIPアドレスを登録しておきましょう。
その方法はお使いのルーターのマニュアルをご覧ください。

ここではそのIPアドレスを [UbuntuパソコンのIPアドレス] と表記します。

※ bizhub 283 をネットワークプリンターとして使う設定で、bizhub 283 自身も固定IPアドレスに設定したと思います。
サーバーには固定IPアドレスを与えた方が楽です。

ftp-server vsftpd のインストール

sudo apt install vsftpd
sudo vi /etc/vsftpd.conf ← VI エディタの使い方は別途お調べください。GUIのテキストエディタでもOKです。

vsftpd.conf  ファイルで設定した項目

————————————
listen=YES
listen_ipv6=NO
anonymous_enable=NO
local_enable=YES
write_enable=YES
local_umask=022
anon_upload_enable=NO
anon_upload_enable=NO
dirmessage_enable=NO
use_localtime=YES
xferlog_enable=YES
connect_from_port_20=YES
xferlog_std_format=YES
chroot_local_user=YES
#chroot_list_enable=YES
#chroot_list_file=/etc/vsftpd.chroot_list
allow_writeable_chroot=YES
secure_chroot_dir=/var/run/vsftpd/empty
pam_service_name=vsftpd
rsa_cert_file=/etc/ssl/certs/ssl-cert-snakeoil.pem
rsa_private_key_file=/etc/ssl/private/ssl-cert-snakeoil.key
ssl_enable=NO
————————————

ftpサーバを再起動して設定を有効化し、なおかつデーモンとして登録しておきます(OS起動時に起動させる)。

sudo systemctl restart vsftpd
sudo systemctl enable vsftpd

FTP用のポート開放と確認です。

sudo ufw allow ftp-data
sudo ufw allow ftp
sudo ufw status

ftp 用のユーザー作成とフォルダの共有化

今回はFTP用のユーザー「bizhub283」をつくりました。ユーザー名とパスワードは好きなものを指定してください。

sudo adduser bizhub283
パスワード: *********

スキャンしたデータを受信するための共有フォルダを作成する。
また、あとでGUIで共有フォルダの設定ができるように、フォルダの所有者を自分に変えておく。

cd /home/bizhub283
sudo mkdir scan
sudo chown [自分のユーザー名]

続いて、作った scan フォルダを共有フォルダにする(Windowsパソコンから見れるようにする)。

  1. GUIのフォルダツールで、/home/bizhub283 内の scan フォルダを右クリックする
    →「ネットワーク共有」を選択
  2. 「このフォルダーを共有する」「このフォルダー内でのファイルの作成・削除を・・・」「ゲストによるアクセス・・・」にチェックを入れる
  3. 「共有を作成」ボタンを押す
    →「自動的にアクセス権を付加」を押す

これで Windows10 からもアクセスできるフォルダになりました。

複合機 bizhub 283 側の設定

スキャンしたデータをFTPで転送するように設定します。

bizhub 283 のFTP転送設定

  1. 「設定メニュー/カウンター」ボタンを押す
  2. 「管理者設定」を押す
    → パスワード: ******** ←コピー屋さんに確認してください(デフォルトは 12345678)
  3. 「宛先/ボックス登録」を押す
  4. 「1 FAX/スキャン宛先登録」を押す
  5. 「1 短縮宛先(共有)」を押す
  6. 「ファイル送信(FTP)」を押す
  7. 「新規登録」を押して、下のようにFTPサーバーのログイン条件を指定する
    ・No: 0001 (空番号なら何番でもOK)
    ・IP: [UbuntuパソコンのIPアドレス]
    ・パス: scan ← /home/bizhub283/scan の scan フォルダ(共有して Windows10 からも見える)
    ・ユーザー名: bizhub283
    ・パスワード: *********
    ・検索文字: 「常用」 ← これを「常用」にしておくとスキャンするときに設定を直ぐに指定できるようになる(画面トップに現れる)
  8. 「設定」や「もどる」ボタンなどを押して元の画面に戻る。

Windows10 側の操作

ファイルを閲覧する「エクスプローラ」を起動します。

アドレスバーに以下のように指定すれば、スキャンされたファイルが得られます。

\\[UbuntuパソコンのIPアドレス]\scan

※ Windowsパソコンでは \ は半角の¥マークとして表示されます。アドレスバーに

¥¥[UbuntuパソコンのIPアドレス]¥scan

のように表示されていればOKです(本当は半角文字です)。

 


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教室の様子(360度カメラ) http://urx.blue/HCgL