大学入試センター試験が終わって1週間が経ちました。
リスニングの「謎キャラ」が話題になった一方で、受験生は志望校の決断に忙しかったです。
さて、そのセンター試験は今の高校2年生で最後となります。
つまりセンター試験は、あと1回しか行われません。
2020年度(2021年1月)からは「大学入学共通テスト」に代わるからです。
現段階での「大学入試改革」をまとめておきましょう。
Contents
変化点は大きく3つ、特に英語!
センター試験からの変化について、ポイントは大きく3つです。
- 英語は、英検やGTEC等といった民間検定試験も活用(※)
- 国語と数1で記述問題を導入
- 全教科で思考力を問う問題を増やす(マーク式のまま)
何といっても最大の変化は、英語の「民間検定試験の活用」でしょう。
しかも受験料がこの分だけ値上がりします。
(※)この記事からTOEICを削除。2019年7月2日に TOEICは撤退を発表。
英語4技能のうち、これまでは「読む」「聴く」しか試されませんでした。
そこで民間検定を活用して「話す」「書く」も試す、という流れです。
英語を「話す」力を大学がどこまで要求するか?
英語の民間試験が大学の合否にどれくら影響するのか?
大学の一般入試で出願する資格がなくなってしまうのか?
受験生にとっての感心は、これです。
これによって今後の入試対策が変わってくるからです。
ただ、ちょっと気になることがあります。
本当に英語を「話す」能力が入学前に必須なの?
という疑惑です。
これまで、ほとんどの大学で英語を「話す」試験が課されて来ませんでした。
もしも本当に重要ならば、今までも大学の独自試験で出題できたはずです。
しかし、やらなかった。
英語が喋れなくてもノーベル賞を取れる
例えば2008年にノーベル物理学賞を受賞された益川名誉教授は
「私は英語が話せません。」
のセリフで有名です。
ノーベル賞でもそうなのですから、少なくとも卒論を書いて卒業するのに、英語がペラペラである必要はなさそうに思うのですが・・・
実際はどうなんでしょう?
アドミッションポリシーを見よう!
これは大学、いえ学部や学科によるでしょう。
大学は学部や学科ごとに「アドミッションポリシー」を公開しています。
「アドミッションポリシー」とは「どんな人に入学して欲しいか」という方針です。
もしも「英語がペラペラ話せる人に来て欲しい」というポリシーの大学ならば、入試でも「話す」能力の配点が高く評価される可能性があります。
国際学科系では、大学1年生から英語でディベートするセミナーが開かれます。
そういう大学なら、実用的な英語力を入学試験で問われても納得できます。
さて、「大学入試改革」のスピード感はどうでしょうか。
改革全体の傾向は、名のある大学の動向が他の大学に影響すると言われています。
英語は東大はじめ旧帝大の方針に注目
国はできるだけ英語の民間試験を入試に活用するよう促しています。
特に国公立大学には早くから打診しているようです。
改革を進めているのが国ですから当然です。
とは言え、大学には教育の自治権がありますから、詳細は大学の裁量に任されます。
こういう時は、東大をはじめとした旧帝大が先に方針を発表し、続いて他の国公立大学が発表していく、という順番になるのが普通です。
静観姿勢の国公立大学、82校中36校が対応未定
東京大学は「CEFR対照表のA2レベル以上」の英語力を二次試験の出願資格にしました。
さらに、民間の検定試験や内申書の英語の成績は、合否判定には使用しないとしました。
(2018年9月)
CEFRのA2レベルは、高卒の標準的な英語力で、英検ならば準2級~2級程度です。
もちろん、高校での成績評価で同等の英語力があると見なされれば、民間の検定試験の成績がなくても出願資格が認められます。
東大がこのように発表した後、他の国公立大学も方針を発表しました。
民間の英語検定試験を必須としない大学(発表順)
- 東京大学(2018年9月)
- 名古屋大学(2018年11月)
- 東北大学(2018年12月5日)
- 京都大学(2018年12月14日)
民間の英語検定試験を必須とする大学(発表順)
- 大阪大学(2018年10月)
- 九州大学(2018年12月)
対応方針が未定
- 北海道大学
民間の英語検定を必須とするメリットは、入試改革に素早く対応できる点です。
デメリットは、入試の公平性に課題が残っている点でしょう。
例えば試験によって対策のし易さが違うとか、受験料の値上げが格差につながる、などです。
こうしたメリットデメリットや、大学のアドミッションポリシーを総合的に勘案した結果でしょう。
対応はまだまだ流動的
7つの旧帝大だけ見てもバラバラの対応になっているのが現状です。
大学全体なら、なおさらです。
対応未定の大学がまだまだ多いので、今後の発表に目が離せません。
もちろん私立大学は、一足早く対応を進めています。
早稲田大学の「一般入試(英語4技能テスト利用型)」のように既に導入している所もあります。
色々と言っても、大きく分ければ3通りの対応しかありません。
英語民間検定の活用は3パターン
- 出願資格に含めず、合否判定にも使わない
- 出願資格には含めるが、合否判定には使わない
- 合否判定に利用(配点を与える)
自分の志望校が上の3パターンのどれなのか、ちょくちょく調べる必要があります。
民間の英語検定を利用するには、まだ受験制度上の課題が残っています。
それがクリアされるにつれて、活用が広がっていくでしょう。
従って、すでに方針を発表している大学でも、何年か後には方針が変わる可能性もあります。
とりあえず高校が薦める英検やGTECを頑張ろう
上で見てきたように、民間の英語検定を積極的に利用する大学は全体の半分です。
ただし試験制度が安定してくれば、今後は増加していくでしょう。
英文科や国際と名の付く学科が志望なら、できるだけ民間の検定を受験しておくべきです。
もっとも、そういう生徒は英語のモチベーションが高いので、注意しなくてもそうしています。
他の学部志望なら、しばらくは民間の英語検定を利用しなくても受験できそうです。
特に理系であれば、今のところ特別有利にはなりません。
もちろん検定試験を受けておいた方が学部や学科をまたいで選択肢は広がるでしょう。
ところで、英検またはGTECは、ほとんどの高校で受験が推奨されています。
英検対策そのものが学校からの宿題になっている高校生が多いです。
まずは高校が薦める検定を積極的に受験していくのが無難です。
国語と数学1・Aの記述問題
英語の話しばかりになりましたが、その他の大きな変化点も見ておきましょう。
出題の傾向を探るには、次の2つがソースになります。
- 大学入試センターから発表された「『共通テスト』問題作成の方向性等」
- 高校で実施された試行調査(1回目 2017年11月、2回目 2018年11月)
複数の資料から情報を整理し、思考力や判断力を問う問題を多くします。
中でも「国語」と「数学1・A」「数学1」については、マーク式に加えて記述式も追加され、試験時間も延長されます。
国語の制限時間は100分、記述は3問で段階評価
国語は現代文・古典を問わず、記述問題が計3問出される予定です。
それぞれ20~30字程度、40~50字程度、80~120字程度の記述量になります。
記述問題はマーク式問題とは別に評価され、4~5段階の段階評価になります。
数学は制限時間70分、記述は数1から3問で点数評価
数学は「数学1」「数学1・A」のどちらを受験しても、「数学1」分野から計3問出される予定です。
マーク式問題と合わせて合計100点の中で配点が行われます。
過去2回の試行調査から、問題文の文章量や、回答に必要な条件の複雑さが調整されています。
しかし出題形式は2回とも大きく変わっていないため、概ね、出題形式は固まりつつあると言えます。
過去問がないため、模擬試験をできるだけたくさん受験して、予想問題に多く触れておくのが得策でしょう。
プログラミングは「これからの”読み・書き・そろばん”」
一連の入試改革は「高大接続」改革の一環です。
2020年度は、そのスタート地点にすぎません。
今後、小学校、中学校の教育改革が全て連動しています。
新しい指導要領で学んだ子供たちが、新しい受験制度で受験するよう設計されています。
安倍首相が「プログラミングはこれからの”読み書きそろばん”」とおっしゃったように(2018年5月)、中でもプログラミング教育の必須化は、もろにこの流れになります。
- 2020年度 小学校でプログラミング的思考の必須化
- 2021年度 中学校でプログラミング教育の必須化
- 2022年度 高校の「情報1」でプログラミングが必修の1部
- 2024年度 プログラミングを含む「情報1」が受験科目になる
センター試験が廃止され、大学入学共通テストに代わり、それが慣れてきたころに「情報1」が受験科目に追加される、という流れです。
学校も予備校も学習塾も、今から情報処理を教えられる人材を用意していかなければなりません。
ITやICTのリテラシーと言えば、私が若いころは
「え、マウスも知らないの?」
「え、まだ手でやってるの?」
というのが世代ギャップでした。
今は違いますよね。
「え、まだエクセルでやってるの?」
「メールなんて面倒じゃん。」
という感じです。
コンピューターで何ができるかを知っておかないと、生産性が全く違いますからね。
それはそうと、私たち大人も他人事ではありません。
無知な大人が若い人の邪魔をしてしまってはシャレになりません。
プログラミング学習は大人にも必須です。
特にICT分野では、生産性が高まるほど、仕事と遊びの区別がつかなくなるそうですよ。
教育改革のその先に、子供たち生き生きと活躍できる社会があってこそですね。
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