塾長です。
公立高校入試について、今年の出願傾向を考察します。
ちょど愛知県の公立高校入試で出願の修正までが終わりました。これで最終的な倍率が確定したからです。
倍率は愛知県のホームページ「令和2年度入学者選抜の志願状況等」で確認できます(2020/2/25発表)。
このデータや生徒たちの動きから、出願の動向を見ていきましょう。
公立高校の倍率
愛知県の場合、公立高校入試の出願は次の手順で行われます(日付は令和2年の例)。
- 2月19~20日 願書の提出
- 2月20日21時 倍率の速報
- 2月21~25日 志望校の変更
- 2月25日21時 最終的な倍率の公表
2月20日の夜に倍率を確認して、不安なら翌日21日に志望校を変更します。例年なら、そこでまた生徒が動いて2~3割の高校は倍率が 0.01~0.02 ほど変動します。
ところが、今年はほとんど変動しませんでした。
つまり「出願後に志望校を変更した生徒がほとんどいなかった」というわけです。
ヒーローズ植田一本松校の生徒が良く出願する高校について、具体的に見てみましょう。
令和2年度の主な公立高校の倍率状況
※ 順番は愛知県の発表順です
高校名 | 倍率 | ||
出願時 | 最終 | (昨年) | |
愛知商業 | 1.41 | 1.41 | (1.35) |
松陰 | 2.12 | 2.12 | (2.74) |
昭和 | 1.62 | 1.62 | (2.10) |
熱田 | 2.63 | 2.63 | (2.73) |
名南工業 | 1.89 | 1.89 | (2.22) |
日進西 | 1.86 | 1.86 | (2.01) |
長久手 | 1.70 | 1.70 | (1.67) |
緑 | 1.76 | 1.76 | (2.22) |
山田 | 2.59 | 2.59 | (2.45) |
名東 | 2.11 | 2.11 | (2.43) |
若宮商業 | 1.61 | 1.61 | (2.04) |
愛知総合工科 | 1.93 | 1.93 | (1.53) |
名古屋西 | 2.55 | 2.55 | (2.86) |
天白 | 2.71 | 2.71 | (2.79) |
日進 | 1.01 | 1.01 | (1.13) |
東郷 | 1.79 | 1.79 | (1.97) |
菊里 | 2.42 | 2.42 | (2.63) |
名古屋商業 | 2.17 | 2.18 | (1.93) |
安全志向からチャレンジ志向へ
上の表の「出願時」と「最終」の列を見比べてみてください。今年の2月20日と2月25日の比較です。
今年は出願の修正がほとんどありませんでした。
もう少し詳しく見ていきましょう。
出願の変更がほとんど無かった
昨年アップしていた松陰、名南工業、日進西、愛知総合工科も、今年は変化がありませんでした。
名古屋商業(CA)高校だけが唯一、倍率の0.01ポイント増加させましたが、それ以外は数字が動きませんでした。
私立高校の授業料が無償化されますが、これが大きな要因かもしれません。
多くのご家庭にとって、私立も公立も授業料は無料です。
これが安心材料となり、公立高校をのびのびとチャレンジする、志望の意志を固くする、という生徒が増えたのかもしれません。
※高校無償化については、こちらの記事に詳しく書きました。
普通科は倍率ダウン、実学科は倍率アップ
つぎに昨年から変化した部分に注目します。昨年と今年の比較です。
全体的に、普通科の倍率が下がり、専門科の倍率が上がった傾向です。
つまり公立高校は「実学志向」が強まった感じがします。
普通科
昨年度に比べて、普通科の高校はほとんど倍率が下がっています。その原因として考えられるのは
- 生徒数が減少
- 私立高校の推薦の割合が増加
ということでしょう。
私立高校は4月から無償化されます(年収制限あり)。そのため私立高校に志願者が流れています。
※高校無償化については、こちらの記事に詳しく書きました。
商業科・総合学科
普通科とは逆に、商業科や総合学科の高校は倍率を上げています。
専門的な環境が必要な学科は、授業料も高くなりがちですが、公立高校なら安心です。愛知総合工科のように自治体のバックアップがあれば、なおさら就職への期待も高まります。
環境面で公立高校は専門学科への期待が高まっていると考えられるでしょう。
授業料に差がなくなってくれば、中身で選ばれるようになる、ということですね。
いかに学力格差を縮めるかが今後の課題
私立高校も公立高校も、授業料が無償化になって良かったです。
ただし注意点があります。
受験日程の関係で、どうしても次のような学力格差が生まれやすいです。
高校に入学するまでの「勉強量」の序列
公立高校 > 私立高校(一般入試) > 私立高校(推薦入試)
とても耳の痛い話です。
あらためて入試日程を見てみましょう(令和2年度の例)。
これが「受験勉強を止める日」です。
- 1月上旬 私立高校の推薦の内々定
- 2月6日 私立高校の一般受験の受験日
- 3月9日 公立高校の受験日
公立高校を受験する生徒に比べて、私立高校の専願なら1カ月、私立高校の推薦なら2か月も早く、受験勉強を止めてしまいます。
具体的には、次の悪影響につながります。
中学3年が1月下旬~2月末までに学ぶこと
国語は教科書の構成上、学年末テストまでに全ての単元が終わります。一方、他の4教科は学年末テストが終わった後でも、まだ重要単元が残っています。
受験が早く終わった生徒たちは、次の単元について勉強不足になりがちです。
- 英語 後置修飾のまとめ、必須英単語と熟語の残り(約60~70個)
- 数学 三平方の定理と利用
- 理科 天体、エネルギーの利用
- 公民 国際社会
特に英語と数学は、高校に入ってからの基礎力になる単元です。
例えば、数1の「三角比」や数2の「三角関数」が苦手な高校生は、中3の冬の単元からやり直した方が良いかもしれませんよ。
私立高校が本命でも卒業まで勉強を続けるべし!
「世の中科」や「情報編集力」で有名な藤原和博先生によれば、
知識7割、思考3割
なんだそうです。ロボットや人工知能が発達する未来でも、人間にとって知識が大切であることには変わりません。
これまでの「詰め込み教育」が
知識9割、思考1割
だったとすれば、それが教育改革で大幅に見直されて、
知識7割、思考3割
に変わっていきます。大幅に改革しても、たった2割しか変わりません。要するに、
人間は知識が無ければ考えることができない!
ってことです。時代がどうなろうと、これは変わらないってことです。
そして、義務教育は考えるのに必要な「最低限の知識」を学ぶ期間です。
時間のある学生のうちに、できるだけ知識を詰め込んでおきましょう。大人になってから学ぶには、お金と時間がかかって大変ですよ。今のうちに学んでおくことです。
ちなみに、うちの教室では、私立推薦で合格を決めた生徒たちも、まだ自習に来てますよ。
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