塾長です。
日本初の共通テストについて、ブログの後半です。
Contents
やってみた教科
現代文、英語、数学1A、数学2B、を解いてみました。
これらのうち、今回は数学1Aおよび2Bについて書きます。
なお、現代文と英語については、先回の「共通テスト2021年を解いて分かった大学受験の勉強法(前半)」をぜひご覧くださいませ。
難易度の表記
大学受験としての標準レベルを黄色チャート(数研出版)に設定して評価しました。
★☆☆☆☆: 教科書の知識1つを使えば解ける
★★☆☆☆: 教科書の知識と前問の結果を考慮する必要がある
★★★☆☆: 黄色チャート相当の解法の知識または発想が必要
★★★★☆: 黄チャート相当のレベルを越えた知識や発想が必要
★★★★★: 高校数学の知識や発想とは関係ない特別な訓練が別途必要
こんな感じで各教科のテスト内容を見ていきます(評価は塾長の主観です)。
数学1A
数学1Aは、共通テストで最も波乱のあった教科の1つです。
- 記述試験が撤回されてしまった
- しかし論理的思考の出題は維持された
- 制限時間も10分拡張されたままだった
まるで教育改革の亡霊とも言える出題形式に今年の受験生は翻弄されました。実際その中身はどうだったのでしょうか?
難易度など全体の所感
塾長の主観ですが全体の難易度は次のような構成でした。
数学的基礎力: ★★★☆☆(思考の土台となる数学だけの実力)
論理的思考力: ★★☆☆☆(日本語の文脈を数学用語に置き換える力)
事務処理能力: ★★★★★(数学の知識が増えるに伴って自然に加速するスピードの程度に比べて)
ひたすら事務的に処理していくような問題でした。
数値計算が多く、電卓やエクセルが欲しかったです。もちろん道具の持ち込みは失格ですから、手で計算するしかありません。
ですから数学というよりは「そろばん」や「暗算」のテストに近いと思いました。
必要な対策
選択問題の大問3~大問5は、どれも後半で数値計算を速く正確に行う必要があります。
目標点が80点以下でよければ、数値計算の面倒な設問は、積極的に捨てに行きましょう。
目標点が80点以上でなければ困る場合、小学4年生~6年生レベルの数値計算を超速にできるような訓練が必要です。
その計算の「えぐさ」をご紹介しましょう。
大問3(4)
A~Dの事象について確率を高い順に並べる問題でした。ちなみに、その比較をするために最低限必要な計算が次の通りです。
計算式 | 式の工夫 | 計算結果 | |
A | 8×27×125 | 8×27×125 | 27000 |
B | 4×64×125 | 8×32×125 | 32000 |
C | 9×27×125 | 9×27×125 | 30735 |
D | 16×27×64 | 8×27×128 | 27648 |
どうでしょう?
あなたは計算式を見ただけで、A~Dを大きい順に並び替えれますか?
式を工夫しても分からなくらい微妙ですよね。
最大や最小を答えるのではありません。
4つを「大きい順に並べる」必要があるのです。
悩むくらいなら、全て計算した方が速いです。
つまり、考えて工夫しようとしたら、それで余計に時間をロスしてしまい、負けなんです。
この問題は「思考力」を試す位置づけに出題されました。
ですが、上のように考えた方が負けになります。
試験時間に追加された10分は「数値計算に使え」ということらしいです。
「数学力」よりも「算数力」のようです。
信じられないことに、電卓やそろばん、計算用紙などを持ち込んだら失格になります。
常識が通用しませんので、十分に気を付けてください。
大問4(4)
整数の不定方程式の問題でした。出だしは面白そうな問題だと期待したのですが・・・次の条件式を満たす x+y が最小となるようなk を求める羽目になりました。
{x+yを最小にする正整数k(10≦k≦14)| 正整数x,yは 5x-3y =k または 5x-3y =k-15 を満たす}
つまり「5の倍数」と「3の倍数」の差を計算して、次のような比較検討をします。
x+y の値 | |||
5x-3y=k の時 | 5x-3y=k-15 の時 | 最小値 | |
k=10 | 10 | 3 | 3 |
k=11 | 7 | 4 | 4 |
k=12 | 4 | 9 | 4 |
k=13 | 9 | 6 | 6 |
k=14 | 10 | 3 | 3 |
この計算方法(アルゴリズム)を思いついた時点で正解にしてくれよ!って感じです。
でも違います。電卓も計算用紙の持ち込みも禁止した上で、ただ単に、ひたすら小学3年生レベルの「掛け算」と「引き算」をやるのです。
トホホ・・・
大問5 円の嵐!?
三角形と円の性質。1つ解いたら、また次の円。それを解いたら、また次の円。もう図を描くスペースが無いんですけど・・・。
試しに実物の大きさで描いてみたのが下の絵です。実物大でもこの煩雑さです(27インチ4Kディスプレイで円の直径が約5cmに見えます)。
図の性質が判明するたびに図を描き直して情報を整理していく・・・
これは普通の手順なのですが「円の3連発」は、さすがに手間がかかります。
しかも問題を解く過程で、円Pや円Qの半径を描いたりしますから、更に図は複雑になっていきます。
なんで半円の中に全ての図形を詰め込んでくるんだよ・・・
そして何よりも、本番の環境では、こんなに大きな絵を描いてしまったら不便です。
他の計算用紙にするスペースが無くなってしまいます。
1分1秒を争うようなテストで、これはえぐいです。
ひたすら作業的な制約で悩むという、事務的な工夫を多く求められるテストです。
思考力とは何だったのか?
大問3は整数の「かけ算」の速さが思考力でした。
大問4も整数の「かけ算」と「引き算」の速さが思考力でした。100歩譲って、5の倍数5~50と-3の倍数-3~-30を縦に並べて、計算を一目で見やすくする工夫をすれば、多少は計算が楽にできたかも。でも、まぁ、そんな工夫は事務作業としての工夫でしかありません。数学1Aとは関係ないですよね。
大問5は、図形を素早く描いて、込み入った情報を整理する技術が必要でした。
設問の趣旨からいえば、図を表示した上で出題する方法がいくらでもあったと思います。わざわざ文字列だけで出題した意図がちょっと不明でした。
こんなものが「高校生らしい思考力」なのかと言われれば、かなり疑問です。
文句の1つでも言いたくなりますが、まぁ、事実です。
出題形式は予測できただろうか?
大手予備校が出版していた対策問題に比べると、次の点で「めんどくさい」問題となりました。
- 電卓で行うような数値計算を手計算でさせる
- 次々に新しい言葉や言い回しを登場させて問題文が冗長になる
また予想問題に比べて、図表を多用する傾向は予想よりも少なかった印象です。
上のように、
図表ではなく、文字列で情報の複雑性を増大させる
という手法で問題の難易度を挙げたかったようです。
各予備校が「数学の応用」という発想で予想問題を作成した一方で、大学入試センターはそれ以外の方向性で対応してしまった印象です。
大学入試センターからしてみれば、いきなり文部科学省から出題の方針を大きく変更されてしまいました。
おそらく相当な混乱があったものと思われます。
同情はしますが、ちょっと失敗作だったかなと思います。
来年は、形式を踏襲しつつも、中身はもう少し「算数」から「数学」に寄せて改善してくると予想います。
数学2B
難易度など全体の所感
塾長の主観ですが全体の難易度は次のような構成でした。
数学的基礎力: ★★★☆☆(思考の土台となる数学だけの実力)
論理的思考力: ★★☆☆☆(日本語の文脈を数学用語に置き換える力)
事務処理能力: ★★★★★(数学の知識が増えるに伴って自然に加速するスピードの程度に比べて)
必要な対策
センター試験の過去問で対策できる範囲です。
あえて言うなら、大問1(3)について、多項式の計算が少し面倒でした。
数1の最初に習う「式の計算」の単元で、計算を大量にやりこんでスピードアップしておく必要があるでしょう。
出題形式は予測できただろうか?
数学2Bに関しては、大きな波乱はなかったと思います。
高い事務処理能力を求める傾向は、昨年までのセンター試験と同様でした。
数1Aに比べれば設問の意図がとても素直でした。
数式や図形の性質を探求していく過程を、上手に導いていくような問題の構成でした。
とても教育的な良問だったと思います。
ある意味「1つのあり方」として数2Bは完成形です。
これ以上は難しくする必要もないでしょう。
これ以上の要求は、大学側が個別試験を用意してテストすればよいだけです。
あとがき
ツッコミどころが満載の数1A。
混乱が少なく落ち着いた数2B。
今回は両者のコントラストがとても激しかった印象です。
本当に同じ大学入試センターで作られた問題なのかと思うほど、状況が違っていました。
改革というのは本当に大変なんだな、と実感しました。
ただ、数学1Aの方向性は
「人工知能に負けない人材」
を育成していくものとは程遠い姿でした。
とても残念です。
改善されていくことを祈っております。
そして共通テストには次のことを提案して本日のブログを終わります。
- 電卓や辞書の持ち込みを許可すべし
- 数値計算よりもアルゴリズムを重視するような回答形式とすべし
- 試験会場では計算用紙を大量に渡すようにすべし
- 出題者は文字列だけに表現を依存することをせず、図表で示せる意図は、できるだけ図表で表示すべし
以上です
ヒーローズ植田一本松校の進学実績
卒塾生(進路が確定するまで在籍していた生徒)が入学した学校の一覧です。
ちなみに合格実績だけであれば更に多岐・多数にわたりますが、当塾の理念に反するので生徒が入学しなかった学校名は公開しておりません。
国公立大学
名古屋大学、千葉大学、滋賀大学、愛知県立大学、鹿児島大学
私立大学
中央大学、南山大学、名城大学、中京大学、中部大学、愛知淑徳大学、椙山女学園大学、愛知大学、愛知学院大学、愛知東邦大学、同朋大学、帝京大学、藤田保健衛生大学、日本福祉大学
公立高校
菊里高校、名東高校、昭和高校、松陰高校、天白高校、名古屋西高校、熱田高校、緑高校、日進西高校、豊明高校、東郷高校、山田高校、鳴海高校、三好高校、惟信高校、日進高校、守山高校、愛知総合工科高校、愛知商業高校、名古屋商業高校、若宮商業高校、名古屋市工芸高校、桜台高校、名南工業高校
私立高校
中京大中京高校、愛工大名電高校、星城高校、東邦高校、桜花学園高校、東海学園高校、名経高蔵高校、栄徳高校、名古屋女子高校、中部第一高校、名古屋大谷高校、至学館高校、聖カピタニオ高校、享栄高校、菊華高校、黎明高校、愛知みずほ高校、豊田大谷高校、杜若高校、大同高校、愛産大工業高校、愛知工業高校、名古屋工業高校、黎明高校、岡崎城西高校、大垣日大高校
(番外編)学年1位または成績優秀者を輩出した高校
天白高校、日進西高校、愛工大名電高校、名古屋大谷高校
※ 成績優秀者・・・成績が学年トップクラスで、なおかつ卒業生代表などに選ばれた生徒
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