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キャリア教育

本当に「偏差値の高い高校・大学」へ進学する方が正解か?

塾長です。

今回は学習塾の先生っぽくないことを書きます。時には自由な発想も大事です。

さて、

中学生のみなさん、高校へ進学したいですか?
高校生のみなさん、大学に進学したいですか?

それならば聞きましょう。

「何のために」「なぜ」

進学したいですか?

これ、AO入試や推薦入試の面接で、必ず聞かれます。
しかも、しつこいくらいに、めっちゃめちゃ突っ込まれます。

これからの時代、この理由がとても大切なんです。
今まではテンプレ回答でよかったのですが、どうやら今後は本気みたいです。

そうなってきた背景とは!?

いま世の中で起こっていること。
順に見ていきましょう。

まずは手始めに、Googleの話題から・・・

就活で大卒が無意味になる!? Googleのキャリア認定

College(カレッジ)と呼ばれる、教養を深めるタイプの大学は、これから無くなっていくのかもしれません。
アメリカでは、こんな記事が世間を驚かせています。

Google Has a Plan to Disrupt the College Degree (AUG 19, 2020 by INC.)

この記事によれば、
グーグル社は、就職に役立つ基本スキルを教える専門コースを開設するそうです。
カリキュラムを終えればGoogleが「キャリア証明書」を発行してくれます。

1つのコースは月額約5千円(49ドル)、6か月で卒業できるようです。
つまり5千円×6か月=3万円で1つのキャリア認定が得られます。
さらに奨学金制度もあるそうです。

もちろんGoogleは自社の採用でこの認定書を活用します。
なんと「大卒と同じ価値」で扱うそうです。

さらに、ウォルマート、ベストバイ、インテル、バンクオブアメリカ、Huluといった名だたる大企業が、その制度に参画していくようです。

「大学の学位は多くのアメリカ人にとって手の届かないものであり、経済的安全を確保するために大学の卒業証書を必要とすべきではありません」
「私たちは、アメリカが回復し、再建するのを助けるために、強化された職業プログラムからオンライン教育まで、新しくてアクセス可能な職業訓練ソリューションを必要としています。」
「私たち自身の採用では、これらの新しいキャリア証明書を、関連する職種の4年の学位に相当するものとして扱います。」
(上記記事をGoogle翻訳にて日本語化し、一部を引用)

少なくともアメリカでは今まさに

「大卒が就職に有利」

という従来の価値観が消えつつあるようです。
4年制大学に行く意味を、あらためて考え直す必要があります。

就職が有利になる

もしもそれが進学の理由なら、もはや4年制大学に行くのは得策ではありません。
上のようなスキル認定を受けてしまった方が、安いし速いし有利です。

さて、ここから先は日本の話題に移ります。
さらに破壊的というか根本的な投げかけがあります。

義務教育は小学校までで十分!? 日本のキャリア教育を考える

つい最近、おもしろい動画を見つけました。
N高校政治部の特別授業がYouTubeで公開されていたのです(2020/9/9)

三浦瑠璃先生が顧問で、現職の麻生太郎副総理に色々な質問をしてしまう企画です。

とりあえず見てください。
自分の頭で考えて、自分に置き換えて見て欲しいと思います。

【N高政治部】麻生太郎副総理 特別授業(高校生のための主権者教育)

この動画の注意事項

なお、動画の冒頭にあるように、この動画は特定の立場に立つものではないし、特定の思想を伝えるものでもありません。この動画の趣旨としては、

変化を自分の目でとらえて、自分自身で考えることが大切

ということですので、そのつもりでご覧いただけたらと思います。
動画を見た感想や意見は、見た人がそれぞれに感じて自由に考えて頂ければ結構です。

25:12~34:38 「教育における同調圧力」について

  • 明治維新以降は、みんなで同じことを頑張る教育が大切だった
  • 男性社会だったので、国が教育を義務にしないと女性に同じ教育が与えられなかった
  • しかし今は、色々な人が出て来て、色々な表現ができるようになった
  • 日本は義務教育のレベルは高い一方で、大学は留学の方に魅力がある
  • きちんとした教育は小学校までで十分、例えば因数分解が義務として全員に必要とは思えない
  • 高校でさえ進学率が90%を超える今ならば、中学の進学から自由にしてもかまわない
  • その方が自由な発想で、自分に合った才能を伸ばせる

55:58~59:56 「コロナ騒動で就職が厳しい」状況などについて

  • コロナの騒ぎで世の中は色々変わるだろうが、それで全てがダメになるのではない
  • 新しいタイプの仕事が出てくる、今まで考えられなかった職業が出てくる
  • そのような時代を若い人はむしろ面白いと思って生きて欲しい
  • もちろん宮大工など古い職業も残るし、それがハッキリしてるなら義務教育が邪魔なほど
  • 1つの会社で退職までいくのも1つだが、若いんだから色々やった方が良い
  • マンガやオタク文化はサブカルチャーと言われているが、今やメインカルチャー
  • これから何が期待の職業になるか分からない
  • 置かれた時代は選べないが、生き方は自分で選べる

自由な発想をして良い

この動画でもう1つ面白いのは、発想の柔軟さや大胆さは、年齢に関係ないということですね。
80歳の副総理が

「中学まで義務教育である必要がないんじゃないか」

などとコメントするのは、既存の常識にとらわれない柔軟さと大胆さを感じます。
「え、そんなこと言っちゃうんだ?」的な面白さというか、新鮮さがあります。

もちろん、本当に義務教育が小学校までで十分なのか否かは、皆さんそれぞれの考えに委ねたいと思います。

要は、それくらい自由に考えて良いということです。

自分のキャリアも、自分の気持ちに正直に、自由に挑戦して積み重ねていって欲しいと思います。

そしてもう1つ。

むしろ若い議員の方が、若い人の意見をちゃんと聴いてない(46:25~49:18)。

これも確かにそうですね。

年齢に関する思い込みを外すことも、自由な発想のためには大切です。
同じように、性別や人種についてもそう。
とても示唆に富むコメントです。

自分のキャリアについて、ぜひ自由な発想で考えて欲しいと思います。

もっと評価されるべき「高卒で就職」

もう1つ紹介します。
高校生からのキャリアを積極的に支援する活動です。

アスバシの活動

一般社団法人アスバシ (明日の社会にかける橋)

18歳の選択の質を上げ、若者のチカラで変わる企業と社会

ぜひ上のホームページで活動内容をご覧いただきたいのですが、

  • 高校生インターンシップ
  • 高卒採用のマッチングサポート
  • 企業の枠を超えた4年間のOFF-JT教育
  • 東海若手起業塾
  • 社会イノベーターフォーラム

などなど、色々な活動をされています(2020/9/15確認)

高校生と企業、高校生と社会をどんどん繋げていく活動です。

高校生にとっては、社会のこと、仕事のことが早くからよくわかり、視野もキャリアも広がります。
企業にとっては意識の高い高校生と早い段階から接点が持てますし、地域へ会社を知ってもらうことにもつながるでしょう。

日本でも多様なキャリアの在り方が求められ、すでに色々な取り組みが始まっています。

今どきの学習塾に求められる「進路指導」とは

ここまで、破壊的な話題を紹介してきました。

義務教育とは?
高校受験とは?
大学受験とは?

みんなと同じようにやってきた常識に「なぜ?」が突きつけられています。
既存の教育の仕組みや常識が、これから破壊されていくのでしょうか。
だとすれば学習塾も、今の姿のままでは不要になっていくのかもしれません。

他にも多くのネタがありますが、これ以上の例を挙げてしまうと

「塾長はクビになるの?」

と心配されてしまうので、ここらへんで止めておきます。
(いちおう塾長は社長なのでクビにはならないです、ご心配なく)
その代わりに、そろそろ

「これから塾はどうするのか?」

について書こうと思います。

「学習塾も変化に対応していくぜ!」

っていうお話です。

これまで学習塾と言えば、テスト対策や受験対策というイメージです。
多かれ少なかれ、それは今後も変わらないでしょう。

しかし、明らかに変わってきたのが進路相談の「中身」です。

もはや偏差値で高校や大学のブランドを説く人など、いなくなってきました。
これ、なかなか信じない人も多いのではないでしょうか。
でも事実です。

高校受験の現在

高校のブランド力は「キャリアの提案力」になりつつあります。

多くの中学生が「人生初の受験」を経て入学するのが高校です。
進学ということ自体が、まだよく理解できないし、できたとしても限界があります。
そのため、

  • どんな高校生活が送れるか?
  • どんな将来性が開けるか?

これを提案できている高校が強いです。
そうなると公立高校よりも私立高校の方がアピールが上手で、体制の構築も速いです。
それで必然的に、次のような傾向になってきました。

  • 偏差値だけで高校の高低を単純に語る人が、とても少なくなってきた
  • 私立高校の特長や強みが目立つようになってきた
  • 学校の先生から私立推薦を勧められるケースが増えてきた
  • 「どうしても公立高校」という人が減ってきた(定員割れが拡大)

保護者様から塾に対するご要望もマイルドになりました。

  • しっかりとした基礎学力を身に着けて欲しい
  • 本人が行きたいと思う高校に行かせてやりたい
  • 子供の得手不得手をちゃんと分かって欲しい

「偏差値上げて」「点数上げて」の一辺倒ではなくなってきたということです。
これは明らかに、昔ほど受験競争がシビアではなくなったためでしょう。

私立高校のパンフレットを見れば「進学したくなる理由」が書かれています。
生徒たちが漠然と抱えている不安や疑問。

  • 何のために進学するの?
  • 高校へ行って何するの?
  • 何の役に立つの?

こうした中学生の疑問に、ちゃんと答えられている高校が人気です。
こうした状況を踏まえれば、進路指導では次のことが大切です。

  • 何の勉強がどんな仕事にどう役立つかを説明できること
  • 特に普通科への進学は、できるだけ高卒後の進路希望まで確認しておくこと
  • キャリア意識の高い生徒がいれば、その意思をしっかり汲み取ること

要するに、高校進学の指導で大切になって来たのが、

「早い段階でのキャリア意識」

なのです。かつての受験競争では、

  • 模試の結果で偏差値が高かったから○○高校
  • とにかくよい大学へ行くためには良い高校へ

という漠然とした理由で勉強し、進学していく人が多かったです。
しかし、今後はいなくなっていくことでしょう。

「○○高校に〇人合格!」

みたいな学習塾の合格実績は、次第に価値がなくなっていくのかも知れません。
すると高校受験において、学習塾の役割で大切になることが見えてきます。

世の中を良く知っていて、勉強する理由や仕事やキャリアの実態について、ちゃんと語れること

このような講師や塾長が求められるようになってきました。

大学受験の現在

大学のブランド力は「高い専門性と社会貢献」です。
研究成果を通じて社会に貢献する、それができるレベルの人材を社会に排出する、というのが大学です。
そのため大学は、

  • 自分からテーマを見つけて探求していける人
  • 社会貢献を通じて大学の名誉を上げてくれそうな人

という人材を、できるだけ

「一本釣り」

で獲得しようと模索しています。

アドミッションポリシーで欲しい人材像を宣言しています。
小論文を書かせたり面接をしたりして、その素養を見抜こうとします。
それで次のような入試の傾向になってきました。

  • AO入試や公募推薦の活用が目立ってきた(推薦受験の定員枠の拡大)
  • 私立大学は一般入試の合格水準が上がった(一般受験の定員枠の縮小)
  • 資格や実学を求める人が多くなってきた(資格系の学科が増加)
  • 文理を問わず、グラフや図表を読み解く力、論理的な文章を構築できる力、仮説を立てて問題の解決策を論じられる力、などが問われるようになってきた
  • (オマケ)地元志向が強まってきた(愛知県の地元残留率は全国1位)

お父さんやお母さんが経験してきた大学受験と比べてみてください。
すっかり様変わりしていますよね?
世の中が大卒者に求める能力が、もはや完全に変わってしまったからです。

大卒者に求められるのは、専門知識そのものではありません。
専門性を活かした問題解決力です。

身の回りや世の中に転がっている、大小さまざまな問題。
それらを自ら見つけて解決していく力です。

本当は今までもそうだったのですが、コンピューターやAIの台頭で専門知識の価格が下がってしまったため、ようやく明確になって来たとも言えます。

そもそも仕事とは何であれ、何かしらの社会貢献なわけですから、当たり前と言えば当たり前です。
しかし大卒者には、それが研究レベルで求められるわけです。

つまり、大学に行く価値というのは、

他の人や人工知能には真似できない問題解決力が身につく

ということです。
そのようなモチベーションで推薦の願書や志望理由書を書く必要があるわけです。
だとすれば、大学受験において、学習塾の役割で大切になることが見えてきます。

大学の研究内容まで調べて理解し、大学で取り組みたい研究テーマや大学卒業後の展望などについて、ちゃんと指導できること。

このような講師や塾長が求められるようになってきました。

いやー、正に塾長の出番って感じです!
こういうの得意です!

ぶっちゃけた話し、問題解決をやったことが無い人に、志望理由書や小論文の指導をお願いしても、あまり意味がないでしょう。

例えば、卒業論文や修士論文がヘッポコだった人に指導してもらっても、ちょっと厳しいかもしれません。
学習塾の先生なら、起業した人や、社内の業務改善に取り組んだことがある中堅以上の社員でなければ難しいでしょう。
学校の先生であれば、教育改革を推進したり、主体的に業務改善に取り組んだたりしたような経験を持つ、中堅以上の先生に指導してもらうのが良いと思います。

どのような立場であれ、これからの進路指導には、指導する側にもそれなりのキャリアが必要になってくると思います。

「どこへ行くか」ではなく「何をしたか」

昨今のような変化の激しいときこそ「あたり前」のことが大切になってきます。
進学であれば、

  • 「どこの高校に行ったか」 < 「高校で何をしたか」
  • 「どこの大学に行ったか」 < 「大学で何をしたか」

という至極当然のことを、それこそ真剣に考える時代になってきたわけです。

例えば、コロナ禍で大学のキャンパスに行けないとなれば、なおさら大学に行く意味が問われるというものです。
留学ともなれば、なおさらのことです。
こんな動画は、いかにもそれらしい話題です。

脳科学者の茂木健一郎さんです。

塾長は10年ほど前にお会いしたことがありましたが、とにかく熱い方でした。
本の裏表紙にサインをいただきましたが、そこに添えて頂いたメッセージが

「誠司よ、噴火しろ!ドカーン」

ですからね!
ドカーンと噴火して奮起し、それから間もなくヒーローズを始めてしまったわけですけれども・・・。

そういうわけでして、

就職に有利だから

これはもう、大学へ行く理由にはなりません。
そもそも、問題解決力が問われている時代です。

大学に行く理由が、そんな大雑把でフワフワしている時点で、おかしいと思われます。

何も考えずに進学した

つまり下手をすれば、

論理的に考えて行動できない

と見なされてしまいますよね。
これまでの方が異常だったのだと思います。

高校進学にしろ、大学進学にしろ、そして専門学校への進学にしろ、どこに進路を設定しても、必ず

行ってから何をするか?

を考えることが重要です。

Society 5.0にむけた進路指導

塾長だけが言っていても信ぴょう性が低いので、今度は学習塾のブログを1つご紹介。

個別学習のセルモ 日進西小学校前教室 西尾先生のブログです。

Society 5.0にむけた進路指導

ほらね、僕だけではないでしょ。
西尾先生みたいな立派な先生だって、同じように考えていらっしゃいます。

  • 来るSociety5.0の時代、これまでの学歴モデルが崩壊する
  • 普通科にとらわれず商業科や工業化などの専門学科も検討してみよう
  • 進路指導では、大人は、幅広い選択肢を提示し、子どもは、その中から進路を「自ら選ぶ」のが理想

西尾先生は、

愛知総合工科高校(旧東山工業高校)→日立に就職→東大留学→マイクロソフトに転職→セルモ開校

という異色の経歴をお持ちです。
正に時代の先を行くキャリアで、西尾先生のプロフィールはモデルケースの1つと言えます。

説得力あり過ぎです!

あとがき

ところで余談ですが、上のN高校の動画を見ると、

  • 政治家は現状を変えるのが仕事(役割)
  • 官僚は現状を守るのが仕事(役割)

であることが、あらためて分かりますね。
そう考えると、双方が議論を戦わせるのは世の常であり、どちらが良い悪い、というものではないです。

ただ、任期と選挙がある政治家の方に権力が置かれるのが民主主義というワケですね。
逆に、選挙のない官僚が権力を持ってしまえば、これは独裁主義になるわけで、そうなれば市民の声が届く仕組みがなくなってしまいます。

もちろん日本は民主主義国家ですが、それでも官僚の反対で教育改革が大胆にできない国のようです。
国の仕組みがコロコロ変われば混乱しますから、このへんはバランスなのでしょう。

現政権に関しては、色々な意見や反対・賛成もあるでしょう。
塾長は立場上、生徒の前ではどちらとも言えません。
生徒がそれぞれに考えてくれればよいと思います。

ただ少なくとも、第一線で頑張ってきた人のお話というのは、色々な角度で見るたびに、色々な学びがあると思います。

 


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1=2が証明されたってホント!? ウソを見破れるかな?

数式を見つめる少女の写真

塾長です。

たまに虚構新聞の記事を見て爆笑しています。
ある虚構新聞のファンから次のアドバイスをいただきました。

科学面の「『2と1は等しい』数学界で論議」という記事が面白いよ。これ教育に使えるんじゃない?

2008年の記事です。
こんな素晴らしい記事を見過ごしていたとは。

1=2の証明!! ホント?ウソ?

まず問題となっている「1=2」の証明を見てみましょう。

問題となった証明

上の記事からの抜粋と補足です。中3以上の知識で読めるでしょう。

因数分解を使いますが、数学の好きな生徒ならば、中学2年生でも何とか読むことはできるでしょう。

$$ a=b $$
両辺に $a$ をかけて
$$ a^2=ab $$
両辺から $b^2$ を引いて
$$ a^2-b^2=ab-b^2 $$
両辺を因数分解して
$$ (a+b)(a-b)=b(a-b) $$
両辺を $(a-b)$ で割って
$$ a+b=b $$
ここで $a=b$ であったから
$$ 2b=b $$
両辺を $b$ で割って
$$ 2=1 $$

むむむぅ・・・確かに結論が「2=1」となってしまいました。

どうでしょう?

大真面目な質問

この証明は正しいと思いますか?

数学では、たった1つでも反例を言えれば間違いと言えます。
逆に言えば、何も間違えを指摘できなければ「正しい」ことになってしまいます。

もしも上の証明の間違いを言えなければ、みなさん、大変ですよ。

1=2が正しいとなれば、また小学校から勉強のやり直しです。

それは嫌です。

何とかして証明の間違いを見つけたいところです。

いかがでしょう?

証明のどこが間違いなのか、みなさんは分かりますか?

どうしてこうなった?

計算のルール。たくさんあります。

その1つでも無視して計算してしまうと、このような詭弁が生まれてしまいます。

もちろん冗談としては、なかなか面白い証明です。

やってはいけないルール

それはさておき、

上の証明で無視したルールが1つあります。

それは何でしょうか?

このルールを無視してしまうと「何でもあり」の結論を好きなだけ導くことができます。

そのルールとは、

0で割ってはいけない

です。
このルールに違反してしまった計算のことを、

ゼロ除算

と呼びます。まるで犯罪名のような名前までついています。

教科書で明記されているか?

ゼロ除算

これについて、いつ学校で教わるのでしょうか?

割り算は小学3年生で習います。
しかし小学校では「指導しなくてよい」というスタンスです。
ただし一部の教科書では、国語的な意味で「答えは0」と解釈できる場合を紹介しています。

中学の教科書でも「0で割ることは考えない」としています。
これも、あまり明確に「0で割らないように注意しろよ!」と教えることはないようです。

このルールを明確に意識するのは、高校数学からです。
ゼロ除算を特別に取り上げるページは無いものの、式の証明や場合分けの過程で何度となく教わります。

どこでゼロ除算をしてしまったのか?

さて、話しを戻しましょう。

冒頭の証明のどこでゼロ除算を犯してしまったのでしょうか。

これは証明の式に、具体的な数字を当てはめれば分かりやすいでしょう。
特に次の式以降に着目です。

証明の中で、次の行に注目です。
$$ (a+b)(a-b)=b(a-b) $$
ここで $(a-b)=0$ ですから、この式は、
$$ (a+b)\times 0=b\times 0 $$
ということです。
ここで両辺を $(a-b)$ で割る、つまり $0$ で割ってしまいました。

このように、0で割ってしまうルール違反をしていました。

なぜ0で割ってはいけないの?

それでは、そもそも0で割ってはいけない理由、なぜでしょうか?

破壊的だから

数学者の厳密な説明はさておき、まずは良くないことが起こる様子を経験しましょう。
上の式で見たようなことを、具体的な数字に置き換えてみれば分かりやすいです。

$$ (a+b)\times 0=b\times 0 $$
この部分をさらに
$$ 100\times 0=5\times 0 $$
などと書いてみましょう。
これは右辺も左辺も確かに $0$ となって正しいです。
しかし両辺を $0$ で割ったらどうでしょう。
$$ 100=5 $$
とたんに話がおかしくなります。

このように

「0で割る」

を許してしまうと、33=101 のような詭弁をいくらでも作れてしまいます。
0で割ることに

「意味が定まらない」

ので、それを逆手に取って

「どのような意味にも設定できてしまう」

とできてしまうからです。
これは、かなり破壊的です。
一般に、

$$ x\times 0=y\times 0 $$
を満たすような $x, y$ は「何でもよい(不定)」

です。
よって

「0で割る」

を許してしまうと、上で見たように

何でも=何でも

という関係をいくらでも作れてしまい、おかしくなります。
数の世界が破壊されてしまいます。

よって、0で割ることを安易に許してはいけません。

そういうルールです!

意味が分からないから

そもそも「0で割る」とは、どういうことでしょうか?

例えば

$100\div 5$

は、

「100を5等分にした内の1つ」
または
「100の中に5がいくつ入るか」

などという意味になります。
試しに後者の意味だとします。

では、

$100\div 0$

の計算は、どうなるのでしょうか。

「100の中に0はいくつ入るか?」

なぞなぞなら「2つ」というトンチも許されますが、割り算の答えにはなっていません。
かと言って、答えが分かりません。

「そもそも0の何個分?」

という意味が分かりません。
0は何個集めても0だからです。

計算が終わらないから

そこで100歩譲って、

$100\div 5$

から出発して、「割る数」の5を、どんどん小さくして0に近づけようと思います。

$100\div 5 = 20$
$100\div 0.5 = 200$
$100\div 00.5 = 2000$
・・・
$100\div 0.00000000 \dots 005 = 2000000000 \dots 00$

このように、割る数を0に近づければ近づけるほど、答えは無限に大きくなってしまいます。
これを繰り返していけば、いつか「0の何個分」か答えらえれそうです・・・

・・・しかし、割る数はどこまでも小さくできます。
出てくる答えも、どこまでも大きなります。

この作業は、いくらでも続けられます。
終わりません。
永遠に続きます。

結論が出ないから禁止

そして、いくら続けても、

「0で割る」

の結論が出ません。

宇宙が終わる頃には結論が出るのでしょうか?

それも分かりません。

さらに、良くないことがあります。
割られる数が100であろうと1であろうと、2であろうと、とにかく

「答えが無限に大きくなり続ける」

ことに変わりがありません。
だからといって、

100÷0

3÷0

無限の先で同じ答えになっているのか、あるいは違う答えになっているのか、それも分かりません。

このように「0で割る」という計算は、いくら考えても答えを特定できませんでした。
だから「0で割る」という計算の定義ができないことになります。

「0で割る」

とは

「わからない」

または

「永遠に計算が終わらない」

または

「そもそも計算の定義ができない」

ということになるわけです。

だから、

「0で割るな!」

となったわけです。

プログラミングでも禁止

プログラミングの世界、もっと言えば、コンピューターを使う世界でも、

「0で割ってはいけない!」

というルールが徹底されています。
プログラマーならだれでも

ゼロ除算

という悪魔を知っています。
これが出てきてしまうプログラムを書いてはいけません。

さて、実際にやったらどうなるのでしょうか?

試しに、Pythonというプログラミング環境で

$5 \div 0 $

を計算した結果が次の画面です。

ちなみにプログラミングでは「5÷0」のことを「5/0」と書きます。

ゼロで割れない

パイソンで0除算エラー

 

“ZeroDivisionError: division by zero” (0で割ったというエラー)

というエラーが表示されて、怒られてしまいました。

近代的なプログラミング環境では、コンピューターに「÷0」を計算させる前に、その式を検出してエラーを出すようになっています。
コンピューター全体が止まってしまったら大変ですからね。

このようにコンピューターの世界でも「0で割る」は禁止です。
ですからプログラマーの世界では「ゼロ除算」と言ったら、それはバグ(*)の1つを指します。

これが本当に計算されてしまうと、最悪の場合、コンピューターが止まってしまいます。

(*) プログラムの不具合のこと

勉強したことを笑いに活かす

今回は虚構新聞の昔の記事から数学のお話をしました。

虚構新聞はフェイクニュースのサイトです。
このようにウィットの利いた面白いニュースをでっち上げるジョークサイトです。

文字通り「虚構」の新聞ですね。
このような分野では有名で、すでに不動の地位とも言えます。

本当のことを知っている人だけが楽しめます。

勉強したことをジョークに活用する。

そんな勉強の応用もあるんですね。
虚構新聞の記者たちの仕事は楽しそうです。

何に価値があるのか、何が仕事になるのか。

やってみないと分からないものです。

キャリア教育のネタにもどうぞ。

ゼロで割ったら答えが0?

最後に少し補足です。

特定の文脈において「0で割った」ときの答えを定義することは可能です。
例えば、

300gのケーキを100gずつ分けました。何人に配れるでしょう?

という文脈があったとします。この計算は、

$300 \div 100 = 3$

ですから、答えは

3人

となります。
つまり、この文脈では「割り算の答え」は「配れる人数」を意味します。
この文脈を前提として、

300gのケーキを0gずつ分けました。何人に配れるでしょう?

を考える場合はどうでしょう。同じように計算式は、

$300 \div 0 = ?$

となりますね。
もちろん式だけ見れば計算に困りますが、文脈から答えを決めることはできます。

答えが分からない → 配れる人が決まらない → 配れない → 配れる人数は0人

このように社会的な意味から答えを導いて、それに合わせて

$300 \div 0 = 0$

と無理やり決めてしまうことができます。
こうして、この文脈の中では、

「0で割った答えは0人」

と決めることができるでしょう。

実際、小学3年生の一部の教科書では、このような考え方を紹介しているコラムがあります。
ただし、あくまでも考え方の1つにすぎません。
こうした教科書の影響かどうか分かりませんが、中には、

「0で割ったら0だよ。」

と覚えてしまっている人もいます。
もちろん、これは早とちりです。
常には成り立たないからです。

これはあくまでも、上のような文脈だけに通用する決め方です。
数式に対して常に言えるものではありません。
つまり、

「ローカルルール」
にすぎません。

このように、0で割ったときの答えを決めるのは「特定の文脈上の都合」です。

それは数学というよりは、国語や社会、あるいは工学のお話しになります。

 


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「将来やりたいことが見つかりません」は良いことだった!

子供が将来の夢を描いているイラスト

塾長です。今日は始業式。2学期が始まりました。

始業式と言えば、校長先生のお話ですね。みなさんの学校では、貧血で何人が倒れましたか?、どんな内容でしたか?
それでは、塾長からは次の言葉を贈りたいと思います。

夢は持たなくても、ぜんぜん大丈夫!
夢があるとしても、途中で変えて良し!

生徒に「将来の夢」を聞くのは間違いだった

志望校や進路を決めることができません。
将来やりたいことが見つかりません。

そんな生徒たちが最近は多いです。そこで生徒と一緒に志望校を考えることが使命になってきます。しかし注意していないと、ついつい、こんな質問をしてしまいます。本当に気を付けなければいけません。

「将来、何をやりたいですか?」

実はこれが愚問らしいのです。意外ですよね。むしろ僕らは「夢を持って生きよう」と言われて育ちました。だからキャリア教育の最初が「将来成りたい職業」を考えることだったと思います。

それが随分と時代が変わったものです。愚問になってしまう理由として次のことが言えます。

  • 志望校を決めるのに「将来の夢」は話を広げすぎだから。
  • まだ仕事の種類や中身を知らない段階で決められるわけがないから。
  • 変化の激しい時代に、早くから将来を決めさせるのはリスクが大きいから。
  • やる事を変えない方が良い、という間違った考えを植え付けるから。
  • 夢がないからダメなんだ、という無意味な劣等感を植え付けるから。
  • やりたい事がないから頑張れない、という間違った行動を起こさせるから。

大人は夢を美化して語ってはいけません。
それよりも本当のことを等身大で語るべきです。色々な理由で夢や目標を変えながら、その時その時を一生懸命にやって来た。そういう本当の人生経験を語る方が、よっぽど良いです。

ためになる動画

このまま文字列で私がつらつらと説明するよりも、次の動画を見ていただいた方が速いし、説得力があるでしょう。メンタリストDaiGoさんの動画です。本日のブログの文献としてご鑑賞くださいませ。

夢や大きな目的なんてなくていいことが科学的に証明された件

 

以上をもちまして、私からの始業式の言葉と代えさせていただきます。

 


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キャリア教育 社会に出るまでに知っておきたい5つのこと

将来のことを考えている子供たちのイラスト

勉強の「やる気」はどこから来るのでしょうか?

「将来の夢」だという人もいれば、「身近な人を喜ばすこと」だという人もいます。
国の教育方針では「生きる力」とあります。
要するに

「社会人として活躍できるイメージが持てればよい!」

ということなんでしょう。そこで

「社会人って、どういう原理原則で動いてるの?」
「世の中の仕組みって、結局どういうこと?」

みたいなことを私なりにまとめてみました。

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