塾長です。
今回は高校生や保護者の間に蔓延する誤解について、喝を入れます。
というのはウソですけど、ただ、冗談抜きで誤解があります。
後半ではAO入試の対策についても書きます。
AO入試が楽なワケない!?
× AO入試は楽ちん
そんなワケなーい!!
AO入試は不合格者がたくさん出ますよ、選抜試験ですから。
〇 AO入試は難しい
このような正しい認識を持ち、気を引き締めて対策をして欲しいと思います。
対策しないで撃沈するパターン
あまり対策せずに自己流でやってしまうと、多くは失敗します。
例えば、こんな志望理由書を書いてしまいます。
これのどこが悪いのか、分かりますか?
私は小さい頃から○○が好きだったので、大学に入ってからも○○を勉強したいです・・・オープンキャンパスで参加した○○先生の模擬授業はとても面白かったです。キャンパスは自宅からの交通の便が良く通いやすいです。・・・一生懸命勉強し、貴学の○○という理念にあるような人の役に立つ人材に成長したいです。以上から私は貴学の○○学部への入学を志望します。
このレベルだと大学のAO入試では撃沈してしまいます。
面接試験に進む前に、書類選考の段階で落とされるか大幅に減点されています。
大学の立場で読めば、本人の良さが何も伝わってこないからです。
ちなみに、受験指導の研修を受けていない先生に見てもらうと危険です。
「起承転結」や「背景、経緯」などといった「どうでも良いこと」にこだわるよう指導されてしまいます。
上のような文章でも、これで良しとしてしまうからです。
本番直前になって、ちょちょいのチョイと書いた志望理由書は、こういうレベルです。
AO入試が楽ちんだと勘違いしているからこそ、対策が不十分になって、こうなるのです。
ちなみに愛知県の場合、このレベルだと公立高校の推薦入試でも減点されます。
私立高校なら「学校が推薦した」という事実の方が大きいので、ギリギリセーフでしょう。
添削指導で真っ赤にしたら親からクレームが来た話し
そもそも、自己推薦文や志望理由書は、かなり添削指導が必要です。
まず普通の生徒は文章が書けません。
その状態からスタートになるからです。
例えば、こんな質問をお子様や生徒たちにしてみてください。
ここ1週間以内に500字以上の文章を書いたことがありますか?
まず9割以上は
書いたことない
と答えるでしょう。
SNSで100文字以内の文を書くのがせいぜい。
ましてや、段落構成まで考えることなんてありません。
私だって大学生になるまでは文章を書くことがほとんどなかったです。
というわけで、文章を書くという経験が、そもそも無いのですから、1から訓練が必要になります。
1から教えるのですから、最初の添削は
真っ赤っか
になります。
それを普通は
「真っ赤っか」=「熱心な指導」
と受け止めてくれるのですが、中には
「そんなに否定することないじゃない!」
と悲観的に思われる人もいます。
「うちの娘が添削でショックを受けています。なんでこんなに真っ赤にするんですか!」
などとクレームを上げてこられたお母様がいたほどです。
もう、だいぶ昔の話ですが。
受験を楽ちんで済まそうとした甘い誤解と、現実とのギャップで、感情が高ぶったのでしょう。
しかし私が赤をつけずに甘い言葉で褒めたとしても、大学は褒めてくれません。
最終的に誰が見る文章なのか?
それを勘違いしてしまうと、このような過保護になります。
本番前に真っ赤にして改善しなければ、本番が真っ赤になります。
志望理由書は、きわめて論理的に文章を書く必要があります。
感情をコントロールし、自分の文章を他人のもののように客観的に分析し、改善する努力が必要です。
そこは指導する上で、ぜったいに譲れません。
指導の趣旨をお母様に何度も説明しましたが、理屈が通りませんでした。
ひとたび高ぶってしまった感情は、治まるのに時間がかかります。
しかし、それを待っている時間がありませんでした。
途中からお父様に代わっていただき、ご理解を得ることができました。
お父様が出てこなかったら、私は指導を諦めて他の塾へ行くよう薦めたかもしれません。
しかし、そのまま指導を続ける話で落ち着きました。
もちろんその子は合格したので、真っ赤に添削して良かったというものです。
百歩譲って楽チンできたとしても、大学に進学した後はレポート作成が日常です。
卒論もあります。
真っ赤にされるのは、むしろこれからですよ。
- 添削で真っ赤にされるのが当たり前
- 10回くらい書き直すのは当たり前
そういう心構えを持っておきましょう。
ちなみに、書き直す作業の効率を上げるために、私はパソコンでの下書きを推奨しています。
いきなり原稿用紙に手書きをするのは効率が悪いのでやめましょう。
大学入試の方法と用語
大学入試の選抜方法は次の3通りあります。
ただし今年(2020年の受験生)から呼び名が新しくなっているので注意してください。教育改革「高大接続改革」のためです。
- 一般選抜 (旧:一般入試)
- 総合型選抜 (旧:AO入試)
- 学校推薦型選抜 (旧:推薦入試)
学校推薦型選抜は、さらに公募推薦と指定校推薦に分かれます。
学校現場や塾では、まだしばらくは古い呼び名も併用されるでしょう。
このブログでも便宜上、旧用語も区別なく使います。
AO入試(総合型選抜)とは?
大学側が「こういう人材が欲しい!」という人材像を宣言します(アドミッションポリシー)。
そして、それにマッチした高校生がいたら、通常の入試とは別に「一本釣り」で合格させてくれる制度です。
大学側としては、大学の実績に貢献してくれそうな高校生を早くから「青田刈りしたい!」というわけです。
高校生側としても、5教科の他に、自分の得意分野を評価してくれなら「これはチャンス!」というわけです。
こうして双方にとって、入学後の「こんなはずじゃなかった」というリスクを減らそうという入試制度です。
ということで、AO入試の利用は増加傾向です。
そもそもAOとは、海外の入試制度 “Admission Office” から来ているようです。特に Admission (アドミッション)とは「大学が求める人材像」のことです。
ところが、日本の大学がこの制度を導入し始めたとき、一部の大学が「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」を問わない入試をしてしまいました。
そのため、講義について行けない学生たちによる授業崩壊が起こるなど、社会的な問題が起こってしまいました。
当然、この失態は文部科学省の目に留まり、大学へ改善要求が出されました。
もちろん教育改革でも改善対象となり、学力や思考力も問うように修正されたワケです。
ということで、今年(2020年の受験生)からは次のような入試となります。
- 出願時期: 9月以降(これまでは8月以降)
- 合格発表: 11月以降(これまでは規定無し)
- 選抜要件: 調査書等の出願書類、志願者本人の記載する資料(活動報告書、志望理由書、学修計画書等)、「学力の3要素」を多面的・総合的に評価
- 学力評価: 少なくとも次のどちらか1方は実施
- 各大学が実施する評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)
- 「大学入学共通テスト」
AO入試(総合型選抜)は厳格化の流れ
上で見たように、AO入試でも学力または思考力を問われます。
もしも先輩の合格体験記で
×「AO入試は楽だったよ」
なんて感想があったとしても、それは参考になりません。
先輩の時代とは違います!
今は「学力の3要素」もしっかりと見られます。
実際、AO入試なのに大学入学共通テスト(旧センター試験)の受験を課す大学もあります。
注意してください。
大学の黒歴史「大卒なのに、こんなこともできないの?」
実はAO入試に限らず、大学付属の私立高校に内部推薦で進学する場合も同様です。
いわゆるエスカレーター式に大学へ進学する場合でさえも、ちゃんと試験を課す流れです。
かつて大学を卒業した人の中には、こんな人もいました。
- 中学英語すら分からない
- 消費税の計算すらできない
- 日報の1行、2行の作文ができない
- パソコンのキーボードが打てない
ここまで来ると、もはや大卒であることに意味がありません。
こういう事が実際にあったので、産業界から大学や文部科学省へ多くのクレームが上がりました。
大学で何してたの?
こんな状態で卒業させるな!
また外国との比較でも、日本の学力低下が明らかになり、何かと批判されてしまいました。
推薦入試にメスが入ったのは、仕方のないことでしょう。
むしろ一般入試(一般選抜)の方が簡単?
そんなわけで、今では推薦入試といえども、学力や思考力をきちんと測るように改革されています。
ただし、だからと言って、偏差値教育や暗記に偏った入試に戻ることはないでしょう。
AO入試では「学力」と「思考力」の少なくともどちらか1方を試験する必要があります。
学力の方を試すなら、大学入学共通テストを利用することができます。
しかし、大多数は基礎的な学力試験やレポート課題を採用しているようです。
過去問や事前予告があれば、これらは対策しやすいでしょう。
思考力の方を試すなら、自頭力を試すような試験が多いです。
ディベートや小論文、研究計画やキャリアプランの発表などです。
残念ながら、自頭力は学校の授業を受けていても向上しません。
それだけに、こちらは対策に限界があります。
自頭力がどう試される?
「○○について、何か意見を言ってみて?」
このような質問をされたときに固まったりしませんか?
もしも固まってしまうようなら、とてもハードルの高い課題です。
更にAO入試では、
「大学で何を研究したいのか?」
という質問に、主体的に回答できる必要があります。
アドミッションポリシーに応えるのですから、当然です。
多くの人が
「大学で何をするかは、大学に入ってから決めよう」
などと漠然に考えています。
これが普通です。
そんな中で、いきなり
「研究テーマ」
を問われます。
この様に、研究の意欲があって、自己表現が得意で、質問に対してその場でぱっと解答できる。
そういう適性が必要です。
「コンテンツ力」が問われる
- 志望理由書の段落構成を練る
- 志望理由書を清書する
こうしたことは、学校や塾の先生から指導を受けて向上させることができます。
しかし志望理由書に記載するコンテンツ、つまり、
- どんなことに興味があるのか
- 今まで何をしてきたのか
- 卒業後はどうなりたいのか
などの情報は、進学する学生自身の中にあります。
志望理由書を表現する「コンテンツのネタだし」は、せめて自分で用意する必要があります。
もしも、その「コンテンツのネタ出し」すら何も思いつかないなら、AO入試の適性があるとは言えません。
志望理由書を無理やり作れたとしても、面接が通りません。
親や学校の先生に志望校を決めてもらうような生徒には絶望的でしょう。
自己表現が苦手
そういう生徒にとっては、むしろ一般入試の方が簡単に感じるかもしれません。
暗記しまくった知識で入試の正答率を高めれば合格できるのです。
一般選抜では、自己表現なんて不要ですから。
後半へ続く
ちょっと厳しめに書きましたが、AO入試を甘く見なければ大丈夫です!
何より、この入試制度で合格している学生の人数は年々増加傾向です。
多くの高校生に多様なチャンスを与えている、良い入試制度だと思います。
さて、AO入試の対策について書きたいのですが、
ちょっと長くなったので、ここでいったん切ります。
続きは次のブログ
「AO入試の誤解あれこれ。いやいや、簡単じゃないぞ!(2)」
をご覧ください。
次回のテーマは、
とんがれ!
です。
お楽しみに?
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