こんにちは。塾長です。
今回は、ちょっと文句を言います。
センター試験に代わって来年度から実施される大学入学共通テスト。その準備として、いよいよ高校2年生に共通IDと呼ばれる受験番号が発行されようとしていました。しかし、いきなり英語でコケてしまいました。なんと、英語の民間資格試験を入試に活用する話が、急に無くなったのです。正確には2024年度まで延期されました。文部科学省の決定は11月1日。正にドタキャンでした。
これについて、ぐちぐち言います(動画です)↓
大学入試 英語の民間試験活用がドタキャンされたので、言いたい事を言います
何がキャンセルされたの?
令和2年度(2019年11月の時点で高校2年生)から、大学入試制度が新しくなります。センター試験が廃止されて、新しく「大学入学共通テスト」になります。
といっても、独立行政法人 大学入試センター が実施することには変わりがありません。一部の試験形式と、制限時間、配点が変わります。ここでは全てを書きませんが、詳細は当センターが発表している
★ 独立行政法人 大学入試センター
「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等」
などをご覧くださいませ。
今回は英語に話を絞ります。英語では、下のように変更される予定でした。
新しい英語の試験
- リーディング 80分 200点 → 80分 100点
- リスニング 60分 50点 → 60分 100点
- 話す・書く なし → 民間資格試験を活用
このうちの「民間試験を活用」が今回キャンセルされてしまい、4年間も延期されてしまいました。
これまでは、入試センターの用意したリーディング試験とリスニング試験だけを受験すれば、その合計点が志望する大学へ通知される仕組みでした。入試改革では、それに加えて、英検やGTECといった民間試験のスコアも一緒に、志望する大学へ通知されるようになる、というのが新しく、大きな変更点でした。
そして11月1日に、民間試験をスコアを使うことが、延期されたということです。
ちなみに、英語の民間試験は、「英検」、「GTEC(ベネッセ主催で、主に学校で受験)」、「TOEFL」、「ケンブリッジ英検」などです。他にもありますが、塾長の周りでは受験した人を見たことが無いので、メジャーなのはこれくらいでしょう。検定料だけで見れば5,000円台で受験できるのが英検とGTECだけですから、多くの高校生にとって、事実上はこの2つで選択となります。
受験可能な4技能試験は、次のサイトが便利です。
★英語4技能試験情報サイト 資格・検定試験 比較一覧表
http://4skills.jp/qualification/comparison.html
まだ1年以上あるのに、どうしてドタキャンなの?
今回の変更で最初に影響を受けたのが、大学入試を目指している高校2年生たちです(この記事を投稿した2019年11月の時点)。大学入試は、まだ1年以上先の話しです。
いえいえ、実は、その準備がすでに始まろうとしていたのです。そのための手続きが、正に11月1日から開始されるよう体だったからです。具体的には、下の手続きがドタキャンされました。
とん挫した実施計画
- 11月1~14日 高校→入試センター 共通ID発行の申込
- 2020年1月 入試センター→生徒 共通IDの通知(ハガキ)
- 4月~12月 民間の英語資格試験を受験(2回まで)
- 2021年1月 共通テストの受験
練習して慣れるために今年から受験していた
そして、実質的にはもう始まっていました。民間試験を高校3年生の内に2回受験できるとはいえ、生徒たちからしてみれば、少しでもスコアを伸ばそうと思ったら3回でも4回でも練習したいでしょう。
実際、次の日曜日は英検準2級や2級の面接試験(2次試験)の日です。うちの教室からも高校2年生が受験します。もちろん練習のためです。しかし、今回の件で、その練習は取り越し苦労になってしまいました。もちろん本人のためにはなりますので決して無駄にはなりません。しかし他のやることを切り捨てて受検してきたことには変わりありません。そして受験料もかかっています。
そもそもの問題とは?
検定料の問題
大学入試改革で、センター試験と新しい共通テストの検定料は変わりません。しかし、英語だけは民間資格試験が別料金なので、その分が事実上の追加料金になります。
そして、民間の試験ということは、もともと任意の受験です。学習塾や英会話教室にかよったり、練習で回数を多く受験したりするのも、すべてお金がかかります。ということは、収入の格差で大学受験の有利・不利が決まりやすくなってしまいます。
つまり、経済格差の問題があたらしく発生します。
機会の不公平
大学入試センターが行う試験は、これまで実施してきた実績や体制があり、地方や交通の便の悪い地域でも受験できました。
しかし民間試験は基本的に都市部でしか受験会場が用意されません。そうなると英語の民間試験を受験するために、別途、交通費や宿泊費がかかります。年に2回受験できるのが、安心ではなくて経済負担という不安になってしまうのです。仮にお金があったとしても、それだけ予定の都合がつきにくくなります。
つまり、受験のチャンスが不平等である、という問題も発生します。
ちなみに、民間企業が地方に試験会場を用意できないのは当たり前です。赤字が出せないからです。多くの人数が集まらない地域では、経費がかさむばかりで、1企業ではその損失に耐え切れません。これは企業が悪いのではありません。日本の税制は赤字企業でも法人税を課しますし、信用保証協会や銀行、株主が評価するのは黒字であることで社会奉仕ではないからです。利益の出ない行動をする企業なんて、国や銀行や株主、時には世論によって一瞬でつぶされます。つまり赤字の行動=悪行というのが方程式です。日本に限らず、どこでもそうですが。
教科間のバランスの問題
これは塾長の意見です。何人かの知識人は似たような主張をしていますが、少数意見かもしれません。
英語、数学、理科、社会、国語
この5教科の中で、もっとも資格だ、スコアだ、習い事だ、などと騒がれているのが英語です。他にたくさん教科があるのに、英語だけが騒がれ過ぎている印象です。これは1億人がみな英語を喋れなければいけない、という間違った印象があるからでしょう。
どうせ1億人の全員に学ばせるなら、英語なんかよりも、数学や読解力(論理国語)、それに近代史とそれに関係する地理や文化(現代の文学)でしょう、って思います。数学に抵抗がある人はプログラミング(コーディングではないよ)でも良いです。
逆に、英語がペラペラでも、話の内容に教養がなく、文化への理解もなく、ウィットのない事ばかりをしゃべられたのでは、仕事にしろ文化交流にしろ、何の役にも立ちません。むしろ害です。英語が片言でも、論理的で、文化への理解があり、創造的なことを話せた方が良いに決まっています。
何が言いたいかというと、国が主導して、ほとんどの受験生が受験するような試験であるのに、英語だけを特別に取り上げて騒いでいるのが滑稽だということです。
英語は表現手段の1つに過ぎません。日本語、英語、数式、楽譜、絵画なご、数ある表現技法や言語のうちの1つです。
それでも英語力の優れた人材を求めるのであれば、それは大学がそれぞれ個別に試験を実施すればよいだけです。
例えば数学なら、センター試験や共通テストで数学Ⅲを出題していませんよね。数学Ⅲは大学の理系学部が個別試験で実施しています。
共通テストで英語に実用的な技能試験まで出題するというおは、数学で言えば数Ⅲを出題するようなものです。
ちなみに、日本語でさえ、日本人の読解力は、まだまだ不足しています。そちらの技能アップの方が先、という指摘もあります。
みなさんは、どう思います?
問題は前から指摘されていた
英語の民間資格試験の活用には、このように色々な問題がありました。しかも、これらはずっと以前から指摘されていました。
だとしても、つい先月までは、実施が決まっているものとして、目の前の生徒たちと一緒に対策を進める方に力を入れてきました。文句を言っても教育論を語っても、困るのは生徒です。ならば黙って対策を進めるしかありません。
しかし、ここへ来て、いきなりストップです。急ブレーキをかけたら、完成の法則で止まり切れなかったのが文句でしえた。ちょっと言いたくなったので動画にしました。
メディアや野党の皆さん、問題を指摘して政府や文部科学省をたたくのはけっこうですが、どうせ炎上させるなら、なぜ、もっと早くやらなかったんですかね?
どちらにしろ、国で主導する試験である限り、大学入試センターに窓口を一本化するような試験方式や体制をつくるしか解決のしようが無いように思います。
細かいことは未定
さて、英語以外の科目ついては、予定通り、新しい形式や時間配分、配点で試験が準備されていくそうです。
とはいえ、英語の試験の細かい部分が、まだ曖昧です。ストップすることしか決まっていません(11月3日)。
英語の民間試験活用がストップした今、このまま、リーディング100点、リスニング100点の新しい配点で行くのか、あるいはセンター試験の形式に戻すのか。はたまた、さらに折衷案を出してくるのか。
今後の文部科学省の発表を待つ必要があります。
直接の被害者はもちろん大学受験を目指す高校2年生。そして高校の教職員と大学入試センターの職員。もちろん参画していた英語の資格試験を行っている民間の業者さんたち。心中をお察しします。
お疲れ様です。これからも日本のために、一緒に頑張りましょう。
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